日医ニュース
日医ニュース目次 第1173号(平成22年7月20日)

原中会長
これからの日医の医療政策について講演

原中会長/これからの日医の医療政策について講演(写真) 原中勝征会長は六月二十三日,都内で開催された医療経済フォーラム・ジャパン第四十八回定例研修会に出席し,「これからの日本医師会の医療政策」と題して講演を行った.
 原中会長は,まず,自民党政権下の社会保障政策について,(一)社会保障費を年二千二百億円削減してきたこと,(二)一九八二年から二〇〇七年まで医師養成数の抑制を続けてきたこと,(三)療養病床の削減方針を打ち出したこと─など,多くの問題点があったと指摘.特に後期高齢者医療制度については,年齢によって人を区分するものであり,医師として許すことは出来なかったと振り返った.
 民主党中心の政権が誕生したことについては,政治主導を掲げ,政治家自らが政治をするようになったことは大きな変化であるとして,政権に対する期待感を示す一方で,混合診療の全面解禁や医療ツーリズム(国際医療交流)などの考え方が出てきていることを問題視.混合診療については,全面解禁すれば,個人の経済状況で受けられる医療に差が出てしまうとして,その導入に強く反対していく考えを示すとともに,医療ツーリズムについても,「一部の人たちが自分たちの利益のためだけに推し進めようとする動きがあり,警戒していかなければならない」と述べた.
 平成二十二年度の診療報酬改定については,鳩山由紀夫前総理の尽力によって,十年ぶりに全体(ネット)でプラス改定が実現したものの,地域医療を立て直すには十分な数字とは言えないと指摘.改定内容に関しても,「病院と診療所の再診料の同一化」「一般病棟の十五対一入院基本料の引き下げ」「大規模病院に偏重した改定」などの問題点があるとし,次期改定において,その改善を求めていくとした.
 日医の医療政策については,国民の味方になることを第一に考え,政策を立案していくと強調.政府から出てくる政策についても,まず国民のためになるのかという視点で考え,是々非々で判断していきたいとした.また,政府との関係については,「医師会が医療現場の声を伝えるアドバイザー的な役割を果たしていきたいと考えている」と述べた.
 社会保障の財源に関しては,将来に負担を残す国債の発行ではなく,(1)消費税の税率の見直し(2)年収一億円以上の高額所得者に対する保険料率の上限撤廃とともに所得税率の引き上げ─等によって賄うべきと主張.(2)については,「『高額納税者は国を守ってくれている』という意識を国民に持ってもらうために,国がそれらの人たちに対する褒賞制度を設けることを提案したい」と述べた.
 その後の質疑応答では,出席者から,(一)医師不足・偏在の問題,(二)高齢者医療制度,(三)医師会と医学会の関係,(四)投薬日数制限の撤廃―などに対する日医の見解について質問が出された.
 (一)に関しては,その解決策として,大学に地域枠を設けること,女性医師の就業を支援することなどを検討していると回答.(二)に対しては,長妻昭厚生労働大臣と話をして,専門家による議論を開始してもらったことを明らかにした.(三)については,国民に医療サービスを提供していくうえでも,医師会にとって医学会の存在は重要なものだと強調.(四)については,医療費削減のために導入されたものであり,見直す必要があるとの考えを示した.

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