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第1177号(平成22年9月20日) |
第54回社会保険指導者講習会
「在宅医療─午後から地域へ」をテーマに講演

第五十四回社会保険指導者講習会が八月二十五,二十六の両日,日医と厚生労働省との共催により,日医会館大講堂で開催された.
三上裕司常任理事の司会で開会.冒頭,あいさつに立った原中勝征会長は,日本の少子高齢化の現状に触れ,「現場の私たちからは,厚労省は縦割りに見える.介護と医療は一緒にあるべきだ」と強調.今後の医療においては,在宅医療,在宅介護,在宅リハビリが中心になるとしたうえで,その担い手が問題だと指摘し,「私たちは医師会として,日本の人口構造などを考えながら,厚労省とよく相談して,国民が安心して生活出来る社会を構築するよう努力したい」と述べた.
続いて,外口崇厚労省保険局長があいさつし,午前は,(一)在宅医療の理念・必要性,(二)病態・疾患別の在宅医療:脳卒中・骨関節疾患の回復期から維持期へ―について,午後には,(三)同:認知症,(四)同:終末期,(五)在宅医療のアプローチ,(六)注意すべき病態急変と対応―について講演と質疑応答が行われた.
二日目の午前には,(一)在宅医療と診療報酬,(二)さあ訪問診療へ―と題した講演と質疑応答が,午後には,総合討論「在宅医療に取り組んでいる事例」が行われた.
総合討論では,野中博野中医院長の司会の下,まず,「自治体・医師会」について片山壽尾道市医師会長が,「病院」について天本宏医療法人財団天翁会理事長が,「診療所」について和田忠志あおぞら診療所高知潮江院長が,それぞれ事例発表を行い,討論を展開した.
片山氏は,市町村合併によって高齢化率が一層高まった広島県尾道市において,主治医機能を核とした多職種協働の「尾道方式」を展開していることを紹介.医師会の事業として,訪問看護ステーション,老健施設,在宅介護支援センター,二十四時間対応のヘルパーステーション等をつくり,チームで高齢者医療とケアを一体的に提供しているとし,十数名の関係職種によるケアカンファレンスの様子などを披露した.
天本氏は,医療法人財団天翁会の取り組みとして,病院に患者を集める「センター方式(院内完結型)」から,病院から出動する「ベースキャンプ方式(地域内完結型)」へ転換したことを紹介.地域を病棟としてとらえ,チームで在宅医療を進めているほか,二十四時間・三百六十五日の体制でどのような相談も受け付け,広い間口から問題を絞り込むシステム(ゲートオープナー)を実践しているとした.
和田氏は,千葉県松戸市内のあおぞら診療所が,薬局や訪問看護ステーションとの連携を得て,多職種協働の在宅医療を推進していることを紹介.市内には二十四時間対応の在宅医療機関が複数存在しているが,需要が誘発されるため経営的な困難はないと報告.同診療所の統計から,昼間に予測に応じた医学管理をすることで,夜間の臨時往診はさほど多くないことを強調し,「連携しながら楽しく実践している医師が多い」と述べた.
討論では,病院との連携の重要性や,医師間の連携方策,治療方針の一貫性の担保,在宅にかかわる若い医師の養成などのテーマが取り上げられたほか,フロアとの質疑応答が行われた.
厚労省関係の講演では,唐澤剛医政局審議官が「医療提供体制について」と題して講演.医療・介護の提供体制においては,病床機能を再編する必要があるとして,各医療機関の地域での役割を考え,経営戦略として選択するよう求めた.
また,ターミナルにおける療養の場として,六割以上が自宅を希望する一方,亡くなられる場所の八割近くが病院である現状から,診療所の活躍に期待を寄せた.
さらに,平成二十四年度の診療報酬・介護報酬の同時改定に触れ,「リハビリや訪問看護など,医療と介護の連携上の問題点が指摘されているが,次回改定では,それらを整理して前進させたい」との考えを示した.
次に,鈴木康裕保険局医療課長が,「社会保障としての医療」と題して講演した.そのなかで,「社会保障給付費の対国民所得比の推移」のグラフを用い,小泉改革によって「年金」「医療」「福祉その他」の伸びが横ばいになっていることを説明.各国の「一般政府の総収入・支出と社会保障費」のグラフから,「日本は中福祉・中負担の国と思っているかも知れないが,いまや米国と同じような,低福祉・低負担の国である」と述べ,日本はOECD諸国のなかで高齢化が最も進んでいながら,社会保障負担率は低いことを示した.
一方,産業としての社会保障を取り上げ,「公共事業にお金を使うより,社会保障にお金を使った方が景気が良くなる.年間五パーセントも伸びる産業はほかになく,産業として将来性がある」と強調.医療サービス市場が抱える矛盾としては,(1)現状の医療供給体制のままで自由競争(フリーアクセス・自由開業)が進行すれば,需要と供給のミスマッチ・非効率が拡大する(2)努力した医療機関にベネフィットが還元されない―ことを指摘し,構造的な改革が必要だとした.
さらに,単独・夫婦のみの高齢者世帯の増加や,都市部の急速な高齢化の傾向に触れ,「今後,高齢者は自宅でも施設でもない,第三形態のところに多く存在する可能性があるが,そこに医療がどう手を差し伸べるか.同時改定では,訪問看護,訪問リハビリ,訪問診療などについて,大きなロードマップの第一歩として,どこまで進めるかが課題である」と結んだ.
最後に,中川俊男副会長が総括し,「二十四年度は六年に一度の同時改定である.在宅医療の推進が重要なキーワードとなることは間違いないが,経済的,精神的にも患者や家族に過度な負担をかけてはならない.少子高齢社会において,在宅医療を望む方が,より安心な医療を受けられる体制を地域で確保出来るよう,必要な施策を総合的に検討していく」と強調した.
また,国の気になる動きとして,医業の産業化と混合診療の拡大を懸念.「医療課長からも話が出たが,医療を産業分野の一つとして景気浮揚策に利用しようという動きがある」と述べ,医療ツーリズムなどの問題点を指摘するとともに,市場原理主義の下での私的医療費の拡大ではなく,公的医療費の拡大を求めた.
そのうえで同副会長は,今後について,「いたずらに厚労省と対峙するのではなく,医療を守る同じ立場でタッグを組んで,あるべき財源を確保し,地域医療の底上げを目指していきたい」との姿勢を示した.
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