日医ニュース
日医ニュース目次 第1180号(平成22年11月5日)

第123回日本医師会臨時代議員会
会長あいさつ(要約)
日本医師会会長 原中勝征

第123回日本医師会臨時代議員会/会長あいさつ(要約)/日本医師会会長 原中勝征(写真) 本日は,第百二十三回日本医師会臨時代議員会開催に当たり,代議員の先生方には早朝よりご出席いただき,ありがとうございます.また,日頃,日医の会務の執行につきまして,ご指導,ご鞭撻をいただき,ありがとうございます.ここに重ねて御礼を申し上げます.
 私たち執行部が四月一日に誕生いたしまして,その後の経過を簡単に申し上げますが,私が会長選で獲得したのは,三分の一をわずかに超える票数でした.執行部の先生方のなかには,私が推薦しなかった方も入ったため,いろいろなところからねじれ執行部であるとの批判を受け,一体この日医がどのような道をたどるのかと,大変危うく報じられたことを覚えております.しかし,本当に幸いなことに,この執行部は日本すべての医師会の推薦を受けた先生方で構成することが出来,大変歴史的な執行部になったのではないかと感じているところでございます.
 今,執行部の先生方は,非常に活発に,政界あるいは関係省庁に対して,自分の担当分野の説明に回っておりますし,今までのような単に押し付けられる政策から,医師会が自分たちの意見を提言するという立場を強く意識されて行動していることは,大変力強く感じているところでございます.
 残念ながら,政界の方が非常に混乱しておりまして,六月,鳩山内閣が総辞職いたしました.その後,新しく生まれた第一次菅内閣の組閣は鳩山内閣と同じような顔ぶれで構成され,参議院選挙の後,菅改造内閣が発足しました.
 私はよく「小沢派だから,お前は除外された」というようなことを言われておりますが,決してそうではありません.私たちは,日医が政治に左右されるようであれば,国民が不幸になるという信念の下に行動しているつもりでございます.
 先日,厚生労働大臣としては,実に六年ぶりに細川律夫厚労大臣,並びに藤村修副大臣が日医にあいさつに訪れました.
 そこでは,今後の医療政策について,きちんと良心を持って,お互いが国民のために行動し合おう,お互いが理解し合って,われわれに対して,性悪説から始まるような態度をとらないよう申し入れ,細川大臣も藤村副大臣からも,今後,私たちと密接な交流をしていきたいとの言葉をいただきました.

会員と国民のための医師会であるために

 これまでのわれわれの活動を振り返ると,会員と国民のために,医師会はどうあるべきかということを論じてきて,その結果が少しずつ出ているのではないかと思っております.しかし,時代は急速に動いておりますので,決して心を緩めることなく,今後とも続けていこうと思っております.
 今,私たちが求められているのは,当面の問題に対してどういう行動をするかということだと思いますが,小泉内閣の時代,それ以前からずっと続いていた医療費削減が原因となり,地域の医療が崩壊しております.この地域医療の崩壊を一日も早く直すこと,正すことが私たちの使命でもあり,全身全霊このことに力を注いで対策に取り組もうと思っております.
 日本の国は自由主義,自由経済の国であります.しかし,社会保障,医療制度に対し,官僚による医療を束縛しようという態度が見られた時には,医療崩壊が起こります.私たちが国民を守っているという姿が,国民の目に映るような,国民を味方に出来るような方法も必要だと考えているところでございます.
 今後は医療費が決められる前に,一方に偏った単数の政治家の考え方で,医療費が右に行ったり,左に行ったりすることがないよう,医師会の方からきちんと医師会としての意見を述べていかなければならないと思っております.

当面の課題

 さて,当面の最も大切なことを考えてみますと,会内の問題については,一人ひとりの会員が日医の会員である,あるいは都道府県医師会の会員である,地域医師会の会員であるという自覚を持っていただかなければ,医師会は強くなりません.現在,「会長選挙制度に関する検討委員会」を立ち上げ,いろいろな話し合いをお願いしているところでございます.また,先生方のいろいろな意見が,メールで直接私の元に届く制度をつくり,大変参考になっております.
 委員会については,現実に合わせて名称と内容の変更をさせていただき,会長諮問についても,単なる提案ということではなくて,すぐ実行出来るような現実に即した答申の取りまとめを要請させていただきました.
 会外の問題としては,まず消費税の問題,医療・介護報酬の同時改定の問題,それから医学部の新設やメディカルスクールの創設の問題,医療特区,混合診療,メディカルツーリズム,特定看護師に見られるような看護師業務の拡大の問題などがあり,保険医療監査・指導等いろいろと今まで引きずってきた問題も残されております.これらの問題に対して,私たちは一つひとつ,政府と折衝しながら,医師の良心というものを信じてもらうことを第一として行動を起こしていかなければいけないと考えているところでございます.
 そのほか,医療の問題に関して,厚労省からではなく,経済産業省や財務省,文部科学省という,われわれと比較的疎遠な省庁からの提案が多くございます.これに対しては,私たちの基本的な姿勢,それは国民皆保険制度を壊してはならない,特に少子化時代になり,二〇五五年には日本の人口が四千万人も減っていく,そのなかで,この社会保障制度をいかにして堅持するかという将来的な視野を持って,きちんとした社会保障制度,国民皆保険制度を死守するため,間違っていることに関しては徹底して反対していこうということで,執行部全員心を一つにしているところでございます.

診療報酬・介護報酬同時改定に向けて

 さて,次期の診療報酬改定は六年に一度の介護報酬との同時改定になります.今年度,社会保険診療報酬検討委員会の下に二つのプロジェクト委員会(「基本診療料のあり方に関するプロジェクト委員会」と「医療と介護の同時改定に向けたプロジェクト委員会」)をつくりました.一つは,適正な医療費はどういうものであるかを検討していただくこと,それからもう一つは,医療と介護の連携の問題,これは連携と同時に,診療報酬・介護報酬も含めた議論をしていただいて,出来るだけ早くその成果を政府に届ける,あるいは厚労省の担当官に届けるべく,活発な議論が行われています.

全員加入の医師会に向けて

 私は,地域医療を守るためにということだけではなく,医師免許,特に保険医の免状を取る時に,地域の医師会に全員入っていただけるような法律改正もお願いしなければいけないと思っております.勤務医と診療所の医師が,同じ医師でありながら,全く違う人種,全く違う仕事をしているかのような印象をマスコミがつくってしまいました.
 しかし,私たち医師というものは,生命倫理に基づいて行動しているわけでございます.「ヒポクラテスの誓い」のなかにも,医師というものは人々を病気の苦しみから救う職業である,神から与えられた聖職であるということが,はっきり記されておりますし,第二回世界医師会総会で,この主旨は「ジュネーブ宣言」として採択されています.もしその考えに立たなければ,医師会は単なる職業別組合と同じになってしまうだろうと思います.
 勤務医であろうと,診療所の医師であろうと,心を一つにして,いろいろな難関と闘っていかなくてはなりません.地域医療は,医師会と都道府県等の行政が一緒になって,構築することが大切と考えております.これはあくまでも私の私案として申し述べました.
 地域医療を守るのは県の医師会が中心にならなければいけないということを常に私は感じております.今後,日医はあくまでも会員のため,国民のため,命を守る職業であるということを忘れずに行動してまいります.どうぞ引き続きご指導,ご鞭撻をお願い申し上げまして,私のあいさつといたします.どうもありがとうございました.

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