日医ニュース
日医ニュース目次 第1180号(平成22年11月5日)

お願い
薬価基準制度における「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」創設に伴う医薬品の納入交渉について

 平成二十二年度の薬価制度改革において,新薬創出・適応外薬解消等促進加算が試行的に導入されたことに伴い,医薬品の価格交渉に混乱が生じております.
 会員の先生方におかれましては,以下に示すとおり,同加算創設が医薬品納入に影響を及ぼすものではないことに留意され,価格交渉に当たられるようお願いいたします.
 従前の薬価改定ルールは,市場実勢価格に基づき二年ごとにほぼすべての新薬の薬価が下がる仕組みとなっていたため,製薬企業にとっては開発コスト等の回収に時間がかかり,結果的に革新的な新薬の創出や適応外薬の問題などへの対応が遅れ,「ドラッグ・ラグ」問題につながるとの指摘がありました.これを受け,中医協での審議の結果,後発医薬品が上市されるまでの間,市場実勢価格に基づく薬価の引き下げを一時的に緩和することにより,革新的な新薬の創出を加速させ,合わせて喫緊の課題となっている適応外薬等の問題の解消を促進させることを目的に,「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」を試行的に導入すると同時に,本加算が適用される各製薬企業に対しては適応外薬等の開発を課すことになりました.
 これにより,薬価収載後十五年以内,かつ,後発医薬品が収載されていない新薬で,市場実勢価格と薬価との乖離が薬価収載されている全医薬品の平均を超えない等の要件を満たした六百二十四品目(八十九の製薬企業)に対して,薬価に一定の加算がなされ,このうち三百三品目は従前の薬価が維持されました.
 その後,本年四月以降,医療現場の先生方から,医薬品の納入交渉の際に,卸会社から「新薬創出等加算が創設されたことに伴い,加算対象となる医薬品については値引きが出来ない,あるいは価格を引き上げる」と言われているとの指摘が本会にありました.
 中医協において診療側より本件について問題提起したところ,厚生労働省から「新薬創出等加算はあくまで薬価算定方式であって,価格交渉に直接的な影響を与えるものではない」「誤解を生まないよう改善に向けた対応を求める」との回答がありました.
 これを受けて,日本製薬工業協会は,七月一日付で加盟製薬企業に対して,自粛を求める文書を発出しております(全文は日医ホームページ・メンバーズルーム参照).
 ご承知のとおり,日医では平成十五年より厚労科研費補助金による「治験推進研究事業」を実施するとともに,治験促進センターを立ち上げ,医師主導治験に取り組んでまいりました.これは企業しか行えなかった治験が薬事法改正により,医師が自ら企画し,実施出来るようになったからですが,本来,治験は製薬企業の責務として行われるべきものであり,日医といたしましては,引き続き今後の製薬企業や卸会社の動向を注意深く監視していく所存です.しかし,なおも価格を意図的に維持するなど,新薬創出等加算を適用させる動きが散見される場合,試行の見直しなど,行政に対し更なる対応を求めていく所存です.
 会員の先生方におかれましては,前述の趣旨を踏まえ,医薬品の納入価格交渉に臨んでいただければ幸いです.

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