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第1189号(平成23年3月20日) |
予防接種講習会
予防接種の円滑な実施を目指して

ワクチン接種緊急促進事業や子ども予防接種週間の実施に当たり,予防接種を円滑に行うことを目的に,日医として初となる予防接種講習会が二月二十七日,日医会館大講堂で開催された.
石川広己常任理事の司会で開会.冒頭あいさつした原中勝征会長(保坂シゲリ常任理事代読)は,国の予防接種政策が計画的かつ実効性あるものになるよう引き続き努力していく考えを示すとともに,講習会の内容を踏まえて,各地域で予防接種を円滑に行うよう協力を求めた.
引き続き,五題の講演が行われた.
及川馨日本小児科医会常任理事は,わが国の麻しんの状況について,「大都市圏にワクチンの未接種者が多い」「国内でのウイルス株は輸入例が多くなっている」などと説明.また,WHOが掲げる“二〇一二年までの麻しん排除”の目標を達成するためには,(1)一期から四期の接種率を九五%以上にすること(2)PCR,ウイルス分離などの検査によって,不確実な症例を排除すること(3)一例の発生でも,即時に対応すること―が必要とした.
宮崎千明福岡市立西部療育センター長は,厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会で定期接種化が検討されている水痘ワクチン,ムンプスワクチン,B型肝炎ワクチンについて,接種後の患者発生数の動向などを示しながら,定期接種化することの意義を強調.
ワクチンの定期接種化の課題としては,財源の確保を挙げたほか,予防接種の評価・検討組織(日本版ACIP)の創設には,権限や既存の機関との関係など,解決すべき問題は多いとした.
今村定臣常任理事は,HPVワクチンの接種対象や接種方法について説明したうえで,その普及のためには,(1)接種費用の助成(2)接種機会の創出(3)学校教育やメディアを通じたワクチン,疾患に関する教育・啓発―が必要になると指摘.(1)については,日医などの働き掛けにより,「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金」が補正予算に盛り込まれたことを紹介し,これを評価する考えを示した.
岩田敏慶大医学部感染制御センター教授は,海外での研究結果を基に,Hibワクチン,肺炎球菌ワクチンの有効性について説明.
また,他のワクチンとの同時接種や自治体からの経済的な援助の必要性について述べるとともに,効果判定,ワクチン型以外の菌による感染症の動向調査のために,適切なサーベイランスの実施を求めた.
齋藤昭彦国立成育研究センター感染症科医長は,日本小児科学会が作成した予防接種のスケジュールを紹介.これからの課題としては,「同時接種の際の正しい接種部位の理解」「B型肝炎ワクチンへのさらなる理解と接種時期の検討」「BCGとの同時接種やポリオワクチンとの同日接種をどのように考えていくか」等があるとした.
講演の後,演者と参加者との間で活発な質疑応答が行われ,最後に,座長を務めた保坂常任理事が,「予防接種にはいろいろな問題があるが,それを一つひとつ解決していくことが私たち医師の使命であると考えているので,引き続き協力願いたい」と述べ,講習会は終了となった.
参加者は二百三十八名で,TV会議による参加十県医師会等を含め,合計三百四十八名であった.
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