日医ニュース
日医ニュース目次 第1190号(平成23年4月5日)

CMAAO特別委員会を日医で開催
─タスクシフティングに関するCMAAO声明を採択─

CMAAO特別委員会を日医で開催/─タスクシフティングに関するCMAAO声明を採択─(写真) 「タスクシフティングと医療の継続的発展のための戦略に関するアジア大洋州医師会連合(CMAAO)特別委員会」が三月二〜四日の三日間,日医会館で開催された.
 特別委員会では,世界保健機関(WHO)や世界医師会(WMA)より発表されているタスクシフティングに関するガイドライン等が審議されるとともに,アジア大洋州地域各国の実情および医師の考え方に関する報告と活発な議論が行われ,「CMAAO Statement on Task Shifting(タスクシフティングに関するCMAAO声明)」,通称「Tokyo Statement(東京声明)」が取りまとめられた.
 今回の特別委員会には,CMAAO加盟医師会から十医師会の代表と,WMAのウォンチャット会長およびクロイバー事務局長,日医からは原中勝征会長,横倉義武副会長,石井正三常任理事,藤川謙二常任理事,オブザーバー参加の国際保健検討委員会委員ら総勢約四十名が出席した.
 タスクシフティングという考え方に関しては,WHOが二〇〇六年に「Working Together for Health」,二〇〇八年に「Task Shifting-Global Recommendations and Guidelines」を発表し,主にHIV/エイズ患者が多いアフリカ・サハラ以南における医師不足への対応策として提案.現在,各国では経済的な視点からHIV/エイズ治療以外にも拡大,一般化して適用しようとする動きが見られている.
 これに対して,WMAは二〇〇九年十月,インドのニューデリーで開催されたWMA総会で,「WMA Resolution on Task Shifting from the Medical Profession(医師からのタスクシフティングに関するWMA決議)」(日医は作業部会に参加)を採択し,各国の保健当局が医師や医師を代表する組織と協議することなく,タスクシフティングを推進しようとすることに対し,強い懸念を表明.CMAAOでも,二〇一〇年九月クアラルンプールにおけるCMAAO中間理事会で,タスクシフティングをシンポジウムのテーマとして取り上げ,その際に今回の特別委員会を立ち上げることが決定された.
 今回の特別委員会のなかで,日本の状況を報告した石井常任理事は,救急救命士の特定医行為に触れ,この場合には,医療の質の低下を招かないための実施体制が整った状態で行われていると説明.また,日医が行った「看護師が行う医行為の範囲に関する調査」についても説明し,現場では昔から医師の監督の下で,医療行為の委譲が行われていることを指摘,看護師の業務範囲の拡大には賛成だが,それはチーム医療の中で実施されるべきであると主張した.
 議論においては,「安易なタスクシフティングは患者に安全な医療を提供するうえではむしろ逆効果になる恐れがあること」「深刻な医療人材不足や緊急事態などの特別な環境下に限定して実施されるべきであること」また,「実施される場合は短期間で終了することを決めて行う暫定策とみなすべきであること」などで各国の見解が一致した.さらに,「委譲するのは特定の技術関連に限り,診断や処方などの知識集約的な業務にまで拡大すべきではないこと」「あくまでも患者の安全とプロフェッショナル・オートノミーの確保を前提とし,医師の監督下での業務委譲であるべき」との考えが強調された.
 これらの議論を踏まえて,特別委員会は,「タスクシフティングを医療人員不足の最終的な解決策としないこと」「業務委譲は技術領域に限定し,診断および処方等の知識集約的業務に拡大しないこと」「政府はタスクシフティングを費用削減の方法と見なさないこと」など,八つの勧告を含む東京声明を取りまとめた.
 なお,本声明は,十一月に台北市(台湾)で開催されるCMAAO総会で正式に採択される予定となっている.

タスクシフティングの考え方に懸念を表明

CMAAO特別委員会を日医で開催/─タスクシフティングに関するCMAAO声明を採択─(写真) 特別委員会終了後には,横倉副会長,石井・藤川両常任理事,シン CMAAO特別委員会委員長,イドリスCMAAO会長,ウォンチャットWMA会長,クロイバー WMA事務局長が出席のもと,日医会館で記者会見が行われた.
 委員会での議論の概要を説明した石井常任理事は,「タスクシフティングの概念は,元々アフリカでエイズの治療をする際に,極端に医療従事者が不足していたという状況のなかで生まれた概念であり,それを各国に持ち込むことには大きな懸念があるということで,各国の合意が出来た」と報告.さらに,同常任理事は,現在日本で,新たな資格を作り,医師が行うことの出来る行為の一部を委譲するとの議論がなされていることに触れ,「アジア各国でも同じようなことが起きていることが今回の会議で明らかとなったが,今回の声明にもあるように,それは最終的な解決策になるものではなく,患者のために最善の医療を常に提供している我々の立場からは,決して認めることは出来ない」と述べた.
 シンCMAAO特別委員会委員長は,今回の会議で取りまとめられた「東京声明」の内容を説明するとともに,CMAAO加盟医師会を対象としてタスクシフティングに関するアンケート調査を実施したことを報告.「各国の状況の違いによっても,その受け止め方は異なる」としたうえで,十一月のCMAAO総会でも声明案を基に,この問題を議論していきたいとした.
 イドリスCMAAO会長は,「各国において,タスクシフティングを進める動きがあるが,それによって,国民の健康が損なわれる危険もあることを各国政府には認識してもらい,最善の政策を検討して欲しい」と要望した.
 ウォンチャットWMA会長は,タスクシフティングという考え方は,現在世界的な問題となっている医療従事者の不足から生まれた考え方であるが,それによって医療の質の低下を招いてはならないと主張.クロイバーWMA事務局長は,タスクシフティングはあくまでも緊急避難的なものであり,今後は,発展途上国における医療従事者の就業環境の改善を図ること,先進国が自国で医療従事者の育成を行うことが重要になるとした.

※ここで言うタスクシフティングとは,医行為の一部を医師から看護師等に委譲することを意味する.

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