日医ニュース
日医ニュース目次 第1200号(平成23年9月5日)

JMAT(日本医師会災害医療チーム)活動報告(6)
兵庫県医師会JMATチームの活動

 兵庫県からの医療チームには県医師会JMATの他に,災害拠点病院チーム,県立病院チーム,十四大都市医師会相互支援協定による神戸市医師会チームがある.
 兵庫県医師会は三月十二日に大震災支援第一回対策本部会議を開催し,県行政との情報交換を経て兵庫県救援医療チームに参加することを決定.その後,JMATの発足で石巻市を担当することが決定し,三月十八日には県知事も含む兵庫県行政の先遣隊に役員を含む七名の医師が加わって,陸路宮城県に入り,検死に協力するとともに担当する石巻市の状況を視察した.その報告を三月二十日午後に開催された県医師会代議員会で行い,四月までの委員会等は中止して被災地支援を中心に活動することを出席した代議員の賛同を得て決定した.
 そして,翌二十一日には川島龍一会長が県看護協会のメンバーと共に山形空港に飛び,救護診療所を設置予定の石巻中学校に向かった.救護診療所は,陸路医薬品,食料,水を運んだ医師会事務局員と共に校舎の一室を借りて開設し,同日の午後から外来診療を始めた.その後,県下各地からの参加医師の協力を得て,原則二泊三日の期間で六月十九日の救護診療所閉所まで,計四十四陣が派遣された(詳細は県医師会ホームページに掲載).
 平成七年に阪神・淡路大震災を経験している兵庫県医師会は,災害時対応には以前から重点的に取り組んでおり,今回は県看護協会,薬剤師会にボランティアが一つのチームとしてまとまって行動出来た.
 また,慢性期疾患が目立つようになった四月以降は内科以外の眼科,整形外科医などの協力も得られ,多くの方に喜ばれた(表1).四月二日からは住吉中学校と山下小学校にも救護診療所を設営し分担して診療を行うとともに,他の避難所への巡回診療や,在宅診療を受けていた方への往診も行った.

表1 兵庫県医師会医療派遣チーム内訳

歩行訓練を行うSさん
 ここで,兵庫県医師会が深く関わった一人の被災者を紹介する.その方は,石巻中学校で診療を開始した三月二十一日,一人では動けない七名が収容されている保健室で会長が出会ったSさんである.Sさんは若い頃,仕事中の事故で左大腿部より先が切断され,長年,自分の支えであった奥さんを津波で失い,家も義肢も同時に流され,保健室のベットでじっとした状態だった.Sさんから義肢を作ってもらいたいという必死の訴えを聞き,兵庫県立リハビリテーション中央病院に受け入れをお願いした.Sさんは三月二十九日,空路伊丹空港経由でリハビリテーション中央病院に入院し,義肢を装着して歩行訓練を受けた(写真)
 阪神・淡路大震災の時もそうだったが,心身にハンディを持つ弱者への救いの手は遅れがちになる.今回の震災は津波,原発事故が重なり,阪神・淡路の時以上に復興には時間がかかるだろう.今後も被災地には弱者に目の届く息の長い支援が必要で,我々も可能な限り協力したいと思っている.

(兵庫県医師会広報委員長,日医広報委員会委員 橋本 寛)

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