日医ニュース
日医ニュース目次 第1205号(平成23年11月20日)

三師会合同によりTPP交渉への参加反対の見解を表明

合同会見を行う原中会長(中央),
大久保日本歯科医師会長(右),
 児玉日本薬剤師会長(左)
 原中勝征会長は十一月二日,大久保満男日本歯科医師会長,児玉孝日本薬剤師会長らと厚生労働省で記者会見を行い,政府が,今後も国民皆保険を守ることをはっきりと表明し,国民の医療の安全と安心を約束しない限り,TPP交渉への参加を認めることは出来ないとの見解を明らかにした.
 原中会長は,今回の会見に臨んだ理由として,「TPP全体に反対しているわけではなく,あくまでも国民及び国民皆保険を守りたいという一心からである」とした上で,今回三師会で検討した結果,取りまとめた「TPP交渉参加にむけての見解」の内容を説明した.
 原中会長は,まず,政府が「公的医療保険制度はTPPの議論の対象になっていない模様」としていることについては,あくまでも現時点での推測であり,楽観的過ぎると指摘.その上で,(一)二〇一〇年六月に,政府は「新成長戦略」を閣議決定し,医療・介護・健康関連産業を日本の成長牽引産業として明確に位置付けて以降,医療の営利産業化に向けた動きが急展開していること,(二)TPPのイニシアティブをとる米国は,二〇〇四年の日米投資イニシアティブ報告書によって,混合診療の全面解禁や医療への株式会社の参入を求めているが,最近では,二〇一一年二月の日米経済調和対話で,米国製薬メーカーの日本市場拡大のため,薬価算定ルール等に干渉した他,同年三月の外国貿易障壁報告書で,営利目的の病院の参入を求めている経緯を見れば,米国がTPPにおいて従来の要求を貫くことは当然予想されること,(三)TPPは,FTAの枠組みをはるかに超える高いレベルの経済連携を目指しており,TPPの下で,混合診療が全面解禁されれば,公的医療保険の存在が自由価格の医療市場の拡大を阻害しているとして,提訴される恐れがあること,(四)以上の懸念に対して,政府からは,総論的,抽象的回答しかなく,十一月一日の衆議院本会議においても,野田佳彦総理自身が「交渉参加に向けた協議を進める場合,交渉参加国から個別の二国間懸案事項への対応を求められる可能性は完全には否定出来ない」と述べていること─などの情勢があることを説明.
 これらのことから考えても,公的医療保険制度がTPPに取り込まれる恐れがあることは明らかだとして,TPP交渉への参加を認めることは出来ないとする考えを示した.
 また,政府に対しては,「TPPにおいて,将来にわたって日本の公的医療保険制度を除外することを明言すること」「TPP交渉参加いかんにかかわらず,医療の安全・安心を守るための政策,例えば,混合診療の全面解禁を行わないこと,医療に株式会社を参入させないことなどを個別,具体的に国民に約束すること」―の二点の実現を強く要請した.
 なお,今回の会見には,三師会の会長の他に,日医からは横倉義武・中川俊男両副会長が,日歯からは村上恵一専務理事が,日薬からは山本信夫副会長がそれぞれ出席した.

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