日医ニュース
日医ニュース目次 第1205号(平成23年11月20日)

第42回全国学校保健・学校医大会
「『学校医』我々にできること〜子ども達の健やかな身体とゆたかなこころを育むために〜」をメインテーマに開催

表彰式で表彰状を手渡す原中会長(中央左)

 第四十二回全国学校保健・学校医大会(日医主催,静岡県医師会担当)が十月二十九日,「『学校医』我々にできること〜子ども達の健やかな身体とゆたかなこころを育むために〜」をメインテーマとして,静岡市内で開催された.日医からは,原中勝征会長始め,羽生田俊副会長,今村定臣常任理事が出席した.
 午前には,五つの分科会(「『からだ・こころ(一)』心臓検診・腎臓検診」「『からだ・こころ(二)』脊柱検診・運動器検診・生活習慣病健診」「『からだ・こころ(三)』こころ・精神保健・アレルギー疾患・性教育・感染症」「耳鼻咽喉科」「眼科」)に分かれて,研究発表並びに討議がそれぞれの会場で行われた.
 続いて行われた都道府県医師会連絡会議では,次期担当県を熊本県医師会とすることを決定.
 午後からは,まず,開会式と表彰式が行われた.
 開会式であいさつした原中会長は,東日本大震災をきっかけとして,学校医には,学校安全管理への参画も強く求められるようになっており,その役割の重要性が増していることを強調した上で,参加者に対しては,「本日の大会での建設的な議論の成果を,地域の学校保健活動に反映させて欲しい」と要望した.
 表彰式では,長年にわたり中部ブロックで学校保健活動に貢献した学校医,養護教諭,学校関係栄養士各七名の代表者に対して,原中会長からは表彰状と副賞が,鈴木勝彦静岡県医師会長からは記念品がそれぞれ手渡された.
 引き続き,「学校における検診システムの現状と課題」をテーマとしたシンポジウムが行われた.
 「子どもの生活習慣病予防に向けて〜検診の重要性と学校医の役割〜」をテーマに基調講演した大関武彦浜松医科大学名誉教授は,ライフスタイルの変化によって,小児の肥満が一九七〇年代から徐々に増えてきていることを紹介.小児の肥満は,成人の肥満・メタボリックシンドロームの原因にもなるため,小児の段階から早期に治療を始めることが重要だと指摘するとともに,医療機関だけではなく,学校・家庭での取り組みも必要だとして,学校医が果たす役割に期待感を示した.
 その後に行われた三人のシンポジストによる報告では,まず,上田憲静岡県小児科医会長が検診レベルの標準化を図るため,学校心臓検診における再調査を実施している静岡県の取り組みを紹介.結果の総括と再調査には,専門的な知識が必要なため,医師会が積極的に関与することが重要になるとした.
 和田尚弘静岡県立こども病院腎臓内科医長は,現在の学校腎臓検診の問題点として,(1)陽性率(有所見者数)の地域差(2)有所見者のフォロー体制の不均一―があると指摘.その改善策として,三次検診用紙の統一化を図るとともに,判定委員会を設けて,たんぱく尿を中心に判定を行うことを提案した.
 滝川一晴静岡県立こども病院整形外科医長は,脊柱側弯検診について,推定患者の約半分しか発見出来ていない現状を説明した上で,今後の課題としては,「検査の必須条件である上半身を裸にして行うことへの親の理解を深めること」「養護教諭を活用すること」等を挙げた.
 引き続き行われた特別講演では,志村史夫静岡理工科大学教授が「二十一世紀の幸福論―ITは人を幸せにするか―」と題して,本当の豊かさというものは心のゆとり,おおらかさであるのに,ITがそれを阻害していると指摘.現代においてITは不可欠なものであるが,ITはしょせん「道具」に過ぎず,人間がその道具に振り回されてはいけないと警告した.

放射線に関する 研修会

放射線に関する研修会であいさつする
羽生田副会長

 大会に先立って二十八日には,文部科学省主催,日医他の共催による放射線に関する研修会が静岡市内で行われた.
 本研修会は,日医が文部科学省に対して,学校医等による放射線に関する健康教育の充実のためには,学校医等への研修の充実が必要と強く訴えたことにより,開催されたものである.
 冒頭共催者を代表してあいさつした原中会長(羽生田副会長代読)は,放射線と子どもの健康問題は今後の学校保健にとって避けて通ることは出来ない重要な課題とした上で,「ぜひ,本研修会で放射線に関する基礎知識を身に付けて帰って欲しい」と述べた.
 引き続き行われた二題の講演では,まず,明石真言放射線医学総合研究所理事が放射線被ばくの特殊性や人体への影響を解説.最近は誤った情報が独り歩きし,国民を不安にさせているとして,正しい情報を基に行動することの重要性を強調した.一方,米原英典同研究所放射線防護研究センター規制科学研究プログラムリーダーは,子ども達に放射線のリスクや影響を教えるためには,(1)放射線に興味を持たせる(2)線量の大きさを感覚で捉えられるようにする─ことが必要だと指摘するとともに,自身も携わって,文科省で作成した『放射線等に関する副読本』を紹介し,その活用を求めた.

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