日医ニュース
日医ニュース目次 第1206号(平成23年12月5日)

東日本大震災 被災地は今(2)(岩手県)
震災後の岩手県医師会の支援活動
岩手県医師会副会長 岩動 孝

高田診療所開所式での
看板上掲(8月7日)

 本年六月五日発行の日医ニュース第一一九四号に,五月末までの活動について報告した.石川育成岩手県医師会長は,同じ号のコラムで「これからが正念場」と題して,岩手県医師会員の団結を訴えている.
 現在までに全国から四百四十一チームのJMATに活動して頂いたが,七月末にはほとんどが撤退し,岩手県内では「JMAT岩手」の活動が始まった.まず,会長・副会長が亡くなり,県立高田病院も失った気仙医師会の大津定子会長代行から「学校医や保育園医が少なく,気仙地域の乳幼児健診や予防接種が実施困難なので支援をして欲しい」との要望があり,また,宮古医師会の木澤健一会長からは「山田町では学校医が不足しており,学校健診が実施不能」との連絡が入った.岩手県医師会は岩手県小児科医会に依頼し,早速盛岡市を中心とした内陸の小児科医を現地に派遣した.その結果,山田町,陸前高田市,大船渡市の一部の保育園・幼稚園・小学校の健康診断が可能となった.内陸部の小児科医には,自分の日常診療を休んで現地での健診事業に協力して頂いたが,この事は被災地の人達から大変感謝されたことのひとつである.
 また,今回の震災では,多くの孤児(両親を亡くした子ども達)や遺児(片親を亡くした子ども達)がおり,その子ども達の心のケアが必要と思われた.岩手県医師会では,盛岡少年刑務所の田中秀樹所長と八木淳子医務課長(児童精神科専門医)のご協力により,六月二日から宮古市に「宮古・子どもの心のケアセンター」を開設,心に大きな痛手を受けた子ども達の治療に当たっている.また,九州大学病院子どものこころの診療部の吉田敬子教授らの協力で,陸前高田市で子ども達の心のケアを開始する準備も進めている.
 今回の震災では岩手県沿岸にある七つの県立病院のうち,山田病院,大槌病院,高田病院は海岸近くの平地にあったため,壊滅的な被害を受けた.災害の後,岩手県では地域の復興には医療が不可欠との考えから,被災地の医療の確保を最優先との方針の下に医療支援を行っている.また,医療機関は高台に建設すべきであるとの考えに基づき八年間にわたる長期復興計画を立てているが,恒久的な病院を建設するまでの間の仮設診療所を取り急ぎ建設した.山田町と陸前高田市には岩手県医療局が仮設診療所を建て,大槌町には日本ロジスティック協会から仮設診療所が寄贈された.
 陸前高田市では,震災前には六カ所に開業医がいたが,医師二人が亡くなり,二人が陸前高田市を離れているため,開業医は二人となった.また,県立高田病院の仮設診療所は市の東側の米崎地区に建設されたため,西側は医療過疎地域になった.そこで,岩手県医師会では,岩手県及び陸前高田市の要請により「岩手県医師会高田診療所」を設立した.この診療所は陸前高田市立第一中学校の校庭にあり,以前日本赤十字社が救護所として活用していたプレハブを改造し,更に日医から寄贈されたトレーラーハウス二台と組み合わせて活動している.
 岩手県では,東北新幹線,東北自動車道沿線を脊柱に見立て,内陸から沿岸部に向けて走る道路を「肋骨道路」と言っている.そこで,岩手県医師会は内陸部から被災地への支援を「肋骨対応」と呼び,盛岡市・岩手郡・二戸各医師会は山田病院の仮設診療所を,花巻市・紫波郡各医師会は大槌病院の仮設診療所を,そして北上・奥州市・一関市各医師会は岩手県医師会高田診療所を支援している.
 中でも,高田診療所は岩手県医師会立(開設者:石川育成会長,管理者:大津定子気仙医師会副会長)であり,内科,外科,小児科,眼科,耳鼻科,皮膚科,泌尿器科,心療内科などが七つの診療ブースを活用して交替で活動している.十一月からは日本心療内科学会の支援も受けている.
 更に高田診療所と岩手医科大学を結んで,「皮膚科領域の遠隔医療の実証実験」を開始した.現場と岩手医大の診断が一致するかどうか検証中であり,有用性が実証されれば,実証実験を他科領域に広め,対診と遠隔での診断に食い違いがないかを検証して行きたい.
 以上,前回報告後の岩手県におけるJMAT岩手の活動などを簡単に報告したが,支援活動は長期にわたると思われる.少しでも今後の参考になればと思う次第である.

肋骨道路を利用した内陸から沿岸への対応

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