日医ニュース
日医ニュース目次 第1207号(平成23年12月20日)

中川副会長
財政制度等審議会財政制度分科会で平成24年度予算編成に向けての日医の見解を説明

 中川俊男副会長は十一月二十八日,財政制度等審議会財政制度分科会のヒアリングに出席し,平成二十四年度予算編成に向けての日医の見解を説明した.
 同副会長は,まず,前回の診療報酬改定で入院(主として病院)に偏った配分が行われたことについて,「急性期医療の充実,病院勤務医の負担軽減が重要であったことは理解出来るが,地域医療は病院・診療所の連携の下に成り立っている」として,その不合理さを指摘.更に,中医協の医療経済実態調査の結果では,病院(精神科病院を除く)・診療所ともに損益率(利益率)は若干改善しているが,損益分岐点比率は一般に「危険水域」とされる九〇%をはるかに超えているとして,「日本の地域医療は前回の改定だけでは再生したとは言えない」と述べた.
 医師の給与に関しては,病院長・病院勤務医の給与は全体的には増加しているが,医療法人では減少していることを説明し,診療報酬改定後も,なお給与を削減せざるを得ない実態があることに理解を求めた.
 また,十一月二十二日に行われた行政刷新会議提言型事業仕分けにおいて,財政当局が示した資料についても,その問題点を次のように指摘した.
 開業医(法人等)の給与は,病院勤務医の一・九倍としていることについては,(1)開業医(法人等)は経営リスクを負い,債務保証をしている(2)開業医(個人)は収支差額の中から,退職金相当額を留保し,事業に係る税金を支払い,借入金の返済も行っている―こと等を説明し,病院勤務医と開業医の年収は比較出来るものではないと指摘.病院と診療所の対立構造に持ち込むべきではないとした.
 診療所医師の従業時間は病院医師よりも短いとしていることに対しては,日医が実施した「診療所医師の診療時間及び時間外活動に関する調査」の結果を基に,「四十歳代以上では診療所医師(管理者)の方が病院勤務医師より勤務時間が長いこと」「診療所医師(管理者)は,一週間に平均して診療四二・六時間の他,地域医療活動に三・八時間従事していること」等を示して反論.
 更に,医療経済実態調査の結果を基に,診療科別の個人開業医の収入を示して,診療報酬の配分の見直しを求めていることに関しても,(1)信頼性のない六月単月調査の個人開業医の収支差額を単純に十二倍している(2)個人開業医の収支差額は医師の給与ではない(3)客体数も非常に少ない─こと等を指摘し,信頼性の低いデータを基に資料を作成することに疑問を投げ掛けた.
 医療費の約四八%が医師等の人件費としていることに関しても,「一病院当たりの医療従事者数の割合を見ると,医師は一一%で,他の多くの職種と協働して,チーム医療を行っているのが実状だ」と述べ,医療費の半分近くが医師の人件費であるかのような間違った表現は見直すべきだと主張した.
 次期診療報酬改定については,(1)診療所,中小病院に係る診療報酬上の不合理を重点的に是正する(2)当面の間,施設基準等を要件とする新たな診療報酬項目は創設しない―との日医の基本方針を改めて説明.不合理な診療報酬項目の例として,再診料の問題を挙げ,診療所,中小病院の再診料の水準を,以前の診療所の水準に戻した上で,最低でも,前回改定における入院医療費改定率相当に引き上げることを強く求めた.
 その後の質疑では,開業医が担っている経営リスクの大きさに理解を示す意見が出される一方,「開業医の報酬は高過ぎる」「財政がひっ迫する中で診療報酬は引き上げるべきではない」といった厳しい意見も出された.
 また,委員から出されたドクターフィーの導入や消費税に関する日医の見解を問う質問には,中川副会長が現行の診療報酬体系にはなじまないとして,ドクターフィーの導入に反対であるとした他,消費税については,税率を引き上げるにしても,控除対象外消費税の問題を解消することが先だと指摘.更に,消費税を目的税化するとしていることに対しては,財源が足りなくなった場合,税率を更に上げたり,給付費が引き下げられる危険があることに懸念を示した.

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