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第1209号(平成24年1月20日) |

もう一つの災害医療─警戒区域で

福島第一原子力発電所近郊において,国立病院機構,日本赤十字社,大学などのチームが一時帰宅者の救護活動を展開している.
筆者が出向いた村は警戒区域内外にまたがっており,役場や学校も含めて,村全体が避難している.
帰宅者は福島県内外の避難先から救護所のある中継基地に集合し,防護服や線量計を装着した上で各自の自宅へ向かった.自宅滞在は二時間以内に制限されていた.高線量地域内で,防護服に身を包みながら,大急ぎで貯金通帳や思い出の品を持ち出す.その緊張と疲労とで体調を崩す人は少なくない.
当日の救護は帰宅者六十四名中八名(一二・五%),主な内容は車酔い,軽度脱水,頭痛であった.いずれも軽症であったが,一二・五%は他のイベントでの救護に比して著しく高い.
現地の実測線量は,地上一メートルでは遠隔地平均値の十倍,道路わきの側溝内では百倍に跳ね上がった.
ただし百倍であっても,十時間滞在で胸部X線写真一枚分の線量である.救護所には自衛隊の除染部隊も待機していたが,除染が必要となった帰宅者はいなかった.
この出動に当たり志望者を募ったところ,複数の若手医師が手を挙げた.その志はあっぱれであったが,“役得”として私が出向いた.看護師と事務職員を同行したが,彼らの中には,家族に心配をかけまいと,出張とのみ伝え,行き先を告げずに来た人もいた.このような災害医療が今も続いている.
(骨コツ) |