日医ニュース
日医ニュース目次 第1210号(平成24年2月5日)

平成23年度 第2回都道府県医師会長協議会
医療を巡る種々の課題に対し議論
都道府県医師会に対し更なる支援・協力要請

 平成23年度第2回目となる都道府県医師会長協議会が1月17日,日医会館大講堂で開催された.
 当日は,各都県医師会から,「消費税対策」「病床再編」等に対する日医の見解を問う質問や要望が出され,各担当役員から回答を行った他,日医から,「平成22・23年度定款・諸規程改定検討委員会答申」「『総合医とかかりつけ医』・『総合診療医』の語句の定義」について,説明を行った.

平成23年度 第2回都道府県医師会長協議会/医療を巡る種々の課題に対し議論/都道府県医師会に対し更なる支援・協力要請(写真) 今村聡常任理事の司会で開会.冒頭,あいさつに立った原中勝征会長は,同日,皇居に招かれ,天皇皇后両陛下に東日本大震災におけるJMATの活動を説明する機会をいただいたと報告した.
 平成二十四年度診療報酬改定については,全体でプラス〇・〇〇四%の改定率となったことを報告するとともに,「改定率決定の際に外来と入院の配分があらかじめ決められなかったことは,われわれの主張が受け入れられたものであり,高く評価したい」とした.
 更に,原中会長はこれまでの日医の活動の成果として,(1)都道府県医師会の多大な協力により,七百七十万人超の反対署名を集めたことで,受診時定額負担導入が見送られた(2)事業税非課税の存続が政府与党の理解と支援の下に決まった(3)行政事業仕分けにおいて,仕分けの対象とされていた福祉医療機構の存続が決まった(4)日医が,かねてから政府に要望していた中央防災会議への参画が実現した―こと等を挙げ,協力いただいた方々に改めて感謝の意を示した.
 また,今後については,TPP,消費税,医師法第二十一条の問題などの課題があるとし,都道府県医師会に対して,その解決に向けた更なる支援と協力を求めた.

協 議

 (一)国際戦略総合特区申請にみる治験・臨床研究並びに先制医療推進の問題点
 兵庫県医師会からの関西イノベーション国際戦略総合特区申請にみる治験・臨床研究並びに先制医療推進の問題点についての質問には,今村定臣常任理事が回答した.
 同常任理事は,まず,「関西イノベーション国際戦略総合特区では,さまざまな事業の認可権限が大臣から知事に移譲されることが想定される」とした上で,医薬品・医療機器の治験の実施は,国が承認者として国民医療における安全性を担保すべきもので,軽々に地方に委ねる性格のものではないと指摘.
 また,医療情報の管理等限られた特区内での活用など,個人情報保護の観点からも重大な問題があるばかりでなく,医療の営利産業化の動きとも密接に関連しており,特に,特区において株式会社の病院経営への参入,医療ツーリズムによる営利目的の外国人患者の受け入れを認めるとしていることは,日本の公的医療保険の給付範囲の縮小,あるいは実質的崩壊につながるものだとして警戒感を示した.
 その上で同常任理事は,国民皆保険の堅持が大原則であり,医療特区を創設し,生命を預かる医療現場において,患者や地域住民の不利益になり得る懸念を抱きながら実施することは,日医として到底容認出来ないと強調.更に,今回の特区のように,さまざまな特例措置や優遇措置を受けて,一つの事例がつくられると,医療制度にダブルスタンダードが出来,それが瞬く間に全国に広がれば,医療への株式会社参入などの蟻の一穴になりかねないとし,「今後も,特区制度や規制制度改革によって,安心・安全な医療が損なわれることがないよう国に対して積極的に働き掛けていく」と述べた.
 (二)特定機能病院・地域医療支援病院の要件見直しについて
 徳島県医師会からの特定機能病院・地域医療支援病院の要件見直しに対する日医の見解を問う質問には,鈴木邦彦常任理事が回答した.
 同常任理事は,まず,徳島大学病院と県立中央病院を一体的に運営する計画では「総合メディカルゾーンの外来機能一体化」がうたわれていたことから,「地域医療再生計画に係る有識者会議」において,二つの病院の外来機能の強化であるならば,県・地元医師会の関与,地域医師会・医療機関との連携等の問題点を解決すべきと指摘した結果,厚生労働省から徳島県庁に送られた意見のまとめでは,「事業内容について説明不足との意見.県立中央病院と徳島大学病院の外来機能の強化ということならば,三次救急医療,高度専門的な医療を基本にすべきである」と記載されたことを説明した.
 また,特定機能病院,地域医療支援病院に関しては,社会保障審議会医療部会において日医がその要件の見直しを強く求めた結果,部会で取りまとめた「医療提供体制の改革に関する意見」では,「貴重な医療資源の効率的な配分及び勤務医の労働環境への配慮の観点から,特定機能病院の外来診療のあり方を見直す必要がある」と結論付けられた他,地域医療支援病院は,当初の理念を踏まえ,外来診療のあり方や承認要件等についても見直しが必要とされたことを紹介.本年度中には,その見直しに向けて,厚労省に検討会が設置される予定であるが,その中でも,厳格な承認要件が設定されるよう,国に対して求めていくとした.
 (三)日本医師会会員証の改定について
 東京都医師会は,「日本医師会会員証の改定」について,今後の災害発生時等に医師の身分証として活用出来るように,様式の検討を提案した.
 これに対し,今村(聡)常任理事は,「災害時において,医師の証明手段として身分証が有用との指摘は,大変大事な提案である」との認識を示した.その上で,日医の会員証を発行するに当たっては,日医参与・弁護士も交えて,記載する内容について検討したが,「会員証はあくまでも日医の会員であることを証明するものであり,医師の認証まで兼ねることは難しい」との見解であったと説明.
 また,「都道府県医師会や郡市区医師会ごとに発行する会員証の掲載項目が異なり,統一して載せることの困難性や,発行の費用の問題等があり,今の『会員証』のままで医師の認証をすることは難しい」と述べ,理解を求めた.
 一方,「現在,日医認証局は,厚労省の運営する認証基盤と相互に連携している.国がIT化を進めていく中で非常に重要な要素だと位置付けられており,今後,この認証局をうまく活用し,新たなカード等が発行出来れば,対応も可能になる」として,日医IT委員会や日医総研等でも議論しながら検討を進めていく考えを示した.
 (四)後発医薬品に関する問題点について
 後発医薬品に関する日医の見解を問う秋田県医師会の質問には,鈴木常任理事が回答した.
 国が,後発医薬品は先発医薬品と同等として使用促進を図ろうとしていることに対しては,中医協等での議論の際は必ず,品質,有効性,安全性に差異がないとする国の結論に対する違和感を述べるとともに,安定供給体制,情報提供,価格設定の問題等を指摘しているとした.
 特許が切れた先発医薬品を安くするといった薬事法改正を含む政策論議を求める意見には,薬価を後発医薬品並に下げて引き続き使えることが望ましいとの考えを示した.
 薬局の後発医薬品調剤加算に関しては,中医協の最近の議論で,後発医薬品への切り替えによる薬剤費減少分と各種加算による医療費の比較検証が求められている状況を説明した上で,今回改定で廃止の予定だとした.
 また,一般名処方に関する問題については,中医協で検討している薬局の在庫管理の負担軽減のための方策で,強制ではなく,あくまでも「考慮する」という整理になっているとした.
 地域性への配慮がなされていないとの指摘に対しては,その原因として後発医薬品メーカーの情報提供に対する努力不足に加えて,地域の薬剤師会の対応不足も考えられるとした.
 (五)特定健診受診率向上に向けた滋賀県の試み
 滋賀県医師会からの特定健診受診率向上に向けた提案に対しては,保坂シゲリ常任理事がまず平成二十一年度の確報値を詳説し,特定健診・特定保健指導の受診率の低迷は明らかで,甚だ心もとない結果だとした.
 その上で,同常任理事は,厚労省保険局所管の「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」及び健康局所管の「健診・保健指導の在り方に関する検討会」における,受診率向上を含めた制度実施上の課題と対策等についての検討状況を報告.更に,国民のための健診制度の在り方については,日医の公衆衛生・がん対策委員会でも,がん検診を含め議論されており,近く答申がまとめられる予定だとした.
 また,この通常国会に提出されると言われる「後期高齢者医療制度」の廃止に関する法案に関しては,「高齢者の医療の確保に関する法律(高確法)」全体の廃止ではないと聞いているが,政府・厚労省共に確定した見解は示していないとした.
 更に今後については,「受診率に応じた後期高齢者支援金の加減算制度の見直し,特に受診率の低い被用者保険の被扶養者の市町村国保への委託,健診項目の必要な拡大等,特定健診・特定保健指導の制度的課題を一つ一つ解決して,国民が生涯にわたり,それぞれのライフステージに応じた適切な健診等を公平に享受出来る体制が確保出来るように幅広く働き掛けを続けていく」と述べ,理解と協力を求めた.
 (六)国民皆保険体制維持へのアピールについて
 愛知県医師会からの,国民皆保険体制を維持するため,日医から国民に対するアピールを求める要望に対しては,鈴木常任理事が回答した.
 同常任理事は,二〇一〇年六月に政府が「新成長戦略」を閣議決定後,行政刷新会議における医療の営利産業化に向けた改革の動きに対して,日医では記者会見を通じて公的医療保険の給付範囲が縮小することに懸念を表明し,国民皆保険体制の堅持を主張してきたことを説明.
 更に,昨年十一月には三師会合同で記者会見を開き,政府に対して,TPP交渉参加に向けて,将来にわたり日本の公的医療保険制度を除外すること等を要請するとともに,国民向けに医療分野における規制改革の問題点をまとめた冊子「医療における規制制度改革に対する日本医師会の見解―TPP交渉参加表明に関連して―」及びその簡略版のパワーポイント資料を都道府県・郡市区医師会に送付するとともに,日医ホームページにも掲載し,国民にも広く利用してもらえるようにしているとした.
 その上で,同常任理事は,「昨年末に財務省の意図を受けた政策仕分けにおいて,恣意的な資料が提出されたが,日医は全てに反論する資料を作成して対抗し,成果を上げた.TPPへの参加を巡っても,国民皆保険体制を維持することが医師会の利益ではなく,国民の利益になることを広く国民に理解していただくべく一層の働き掛けを行う」と述べた.
 (七)消費税対策について
 宮崎県医師会からの「消費税対策」についての質問には,今村(聡)常任理事が回答.
 同常任理事は,控除対象外消費税を取り巻く問題の解決については,長年,政府や国会議員に訴え続けてきたが,本年一月に閣議報告された「社会保障・税一体改革」素案に初めて,「消費税問題を検討する」と書き込まれたことは,大変意義があることだと指摘.
 また,厚労省において,医療機関の消費税負担について定期的に検証する場を設けるとされたことについては,「実態を国民や保険者に周知した上で議論を行い,消費税率が一〇%になる時には抜本的に解決出来る課税の仕組みを考えたい」とした.そして将来的には課税の在り方に関しても検討する考えを示し,その際には,国民に税の負担が発生することのないよう,配慮を求めていく必要があるとした.
 その上で,同常任理事は,「素案を大綱や法律にするためには,与野党の国会議員の了承が必要であり,これからが勝負の時である.消費税率が一〇%に上がる際は抜本的に解決出来るようにしたいと考えており,都道府県医師会には更なる支援をいただきたい」と述べた.
 (八)病床再編について
 埼玉県医師会からの「急性期病床の再編」に関する質問には,横倉義武副会長が回答した.
 同副会長は,まず,「急性期病床群(仮称)」の認定制度について,厚労省が社会保障審議会医療部会に提案したものであり,「急性期医療に関する作業グループ」で現在議論が進められているとした上で,「急性期病床群制度」を直ちに法制化することに関しては反対の姿勢を表明.
 その理由として,「機能分化はあくまでも地域の関係者で作る医療計画で推進するべきであること」「今後の高齢化の進展による患者の病態を考えると,むしろ慢性期から病床のあり方を考えていくことが重要であること」「どの病床に,どのような患者を入院させるべきかは,医師がプロフェッショナル・オートノミーに基づいて判断するものであり,医師の判断や医師と患者との関係に,法令や行政が立ち入るべきではないこと」―等を挙げた.
 また,今回の厚労省の提案については,社会保障・税一体改革という機会を捉えて,長年の悲願である急性期医療への集中投資の実現を狙ったものだと指摘.不要・不急な制度の創設や急激な病床再編は地域医療の混乱を招くばかりであることから,今後も地域で入院医療を支えている一般病床全体の充実を図ることが出来るよう,病院団体とも協力しながら,しっかり議論していきたいとした.
 引き続き,日医から以下の二つの事項について,説明を行った.
 (九)平成二十二・二十三年度定款・諸規程改定検討委員会答申について
 今村(聡)常任理事は,原中会長からの諮問「新公益法人制度に向けた諸規程類の改定について」に対する答申を定款・諸規程改定検討委員会が取りまとめ,一月十七日に蒔本恭委員長(長崎県医師会長)から原中会長に提出したことを報告.
 その内容は,前期委員会より答申された新制度移行後の日本医師会定款変更案の一部に修正を加えるとともに,「定款施行細則」「日本医学会規則」「裁定委員会規則」「代議員会議事規則」「議事運営委員会規則」並びに「役員等の報酬及び退職慰労金に関する規程」の新制度移行後の変更案を取りまとめたものになっているとした.
 また,今後については,本答申を基に執行部として新制度移行後の定款・諸規程変更案を取りまとめ,平成二十五年四月一日の移行登記を目指して,十月開催の臨時代議員会に議題を上程する意向を示した.
 (十)「総合医とかかりつけ医」・「総合診療医」の語句の定義について
 三上裕司常任理事は,昨年末,「総合医」「総合診療医」の語句の定義について,都道府県医師会に意見を求め,その結果を基に,厚労省「専門医の在り方に関する検討会」のヒアリングにおいて,日医の考える「総合医とかかりつけ医」「総合診療医」の定義について説明したことを報告.
 「総合医とかかりつけ医」とは,就業形態や診療科を問わず,「医療的機能」以外に,「社会的機能」すなわち「かかりつけ医機能」を有する医師と考えており,主に地域医療を担う地域の診療所や中小病院の医師であることが多いが,病院勤務医等もこうした役割を担っており,どの医師であっても該当すると指摘.また,国民皆保険下のフリーアクセスにおいて,既に患者から選ばれ,地域医療を担っている医師も,「かかりつけ医」であり,「総合医」であるとした.
 一方,「総合診療医」については,内科,外科,精神科,皮膚科,眼科,耳鼻咽喉科,整形外科,小児科,産婦人科など,広い領域にわたって行う診療について,「医療的機能」の面のみから評価された医師であるとした.
 その上で,同常任理事は,「この問題については,執行部内でも議論を続けていくが,三月一日開催の都道府県医師会生涯教育担当理事連絡協議会においても議論願いたい」と述べた.

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