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第1210号(平成24年2月5日) |

市場という名の怪物に操られる政治

今年に入ってから,連日のように円高の報道と同時に,大手新聞に「EU危機」の特集が組まれていた.その副題に「市場に操られる政治」という文言があり,目を引かれた.
どの国の政府でも,第一に国民の声を聞いて,政治を動かすことが民主主義の原則として貫かれているはずである.二〇〇八年のリーマンブラザーズの破綻から始まった世界経済の混乱は,紛れもなく金融の世界の自壊・自滅によるものである.八十年ぶりの世界経済の大混乱は各国の国民の生活に直接的に影響が及び,社会の経済的下層の人々は更に貧困にあえいでいる.歴史的事実として,経済の大きな混乱の中で犠牲になるのは,いつもいつも実生活を営む国民である.そして,これも明らかであるが,常にこれらの経済的な混乱は民意からはほど遠く,国民が望んだものではないのである.
現代の経済的破綻はデリバティブなる投機的な経済活動が破綻して起きた混乱である.これを詳細に説明しても,一般庶民には複雑で理解することは困難であろう.それによって巨大な利益や,巨大な損失が起こっていたこと自体も国民にはうかがい知れないことであり,巨額な規模での破綻が確定して初めて国民に知らされる.利益や損失は巨大で,中小の国の国家予算に匹敵するほどの規模になることもあるため,当然のごとく政権担当者の頭を混乱させるには十分である.まさに実体経済の中で生活する国民からは遠く,市場という名の怪物によって政治が操られているのである.
国民はヘッジファンド(デリバティブ取引などを行い巨額の利益を受けている金融組織)等に対して投票した覚えはないし,支持をしているなどとも聞かない.世界の資本主義が,こぞって歴史は発展していると主張する影で,経済市場はこれらの金融派生商品を発明し,無秩序に動かしてきたのである.これら経済的産物によって世界の政治が引き回される等とは,きわめて不愉快な現実である.
一九二九年の世界恐慌の時は,そのまま世界大戦の引き金となったが,今回の経済恐慌は各国が知恵を絞って対応していると言うことである.EUの今後はまだ霧の中であるが,一国の経済的な問題ではないので,実効的な世界連携が待たれる.そのどさくさに,経済立て直しの一つの切り札などと言われてTPPの問題が出ていることは十分注意していかなければならない.
(常任理事・石川広己) |