日医ニュース
日医ニュース目次 第1210号(平成24年2月5日)

東日本大震災 被災地は今(3)(福島県)
福島・原発災害との闘い
福島県医師会常任理事 星 北斗

福島第一原発を視察

 震災津波と共に発生した原発災害はその後の対応のまずさもあって長期化複雑化しており,先般,原発自体は冷温停止が安定的になったとされる「事故収束宣言」が出されたものの,相変わらず不安は払拭されず,若年者層の県外流出には歯止めがかからない状態となっている.
 放射性物質の拡散によるさまざまな被害の状況が連日マスコミで取り上げられ,福島の農業のみならず,あらゆる産業が負の影響に曝され続けている.医療界と言えども例外ではなく,とりわけ原発周辺の医療の再生は地域再生の要件とされながら,若年女性労働者の比率の高い産業であることから,従事者の確保は今後ますます困難になるものと考えられている.

今後の環境放射線対策

県医師会館に看板を設置

 福島県民の多くは見えない放射線,放射能による健康への影響について大きな不安を抱えており,子どもを持つ世代にとってはより切実である.
 除染作業については,迅速かつ徹底した対応が求められるが,必ずしもその行程は見通しのきくものとはなっていない.政府から出されるさまざまな基準値は,それぞれが整合性を欠くだけでなく,実現不可能なものを多く含み,不安を増幅するという悪循環が現在なお続いているのである.
 県民に対する正しい知識の普及を徹底するだけでなく,国民全体への普及啓発に努め,風評被害の払拭を目指すことこそが必要であり,医療従事者自身の行動が大きな意味を持つことに気付かなければならない.

低線量放射線機器への買い替え促進

 国民の放射線被ばくに対する関心と不安が高まっており,医療被ばくに対しても出来れば受けたくない,あるいは受けるのであれば新型で低線量の機器を使用して欲しいという要望が多く見られる.
 最新の放射線機器は低被ばく線量で画像が得られるよう,さまざまな技術改革が進んでいるが,既存機器については低医療費政策の影響で入れ替えまでの使用期間が長くなる傾向にあり,十分に最新機器の普及が進んでいない.
 新型・低線量被ばく医療機器への買い替えを促進し,安心して検査等を受けてもらえるよう,一定の被ばくレベル以下である新規機器の導入を促す政策も求められているが,政府も県も大型先端設備に目を奪われている現状を打破しなければならない.

医師,看護師等の県外流出防止策

 県内医療機関への復職者や県内への就職希望者が少しでも増えるよう,日医を中心に国を挙げてさまざまな努力がなされているが,実際の雇用や流出阻止につながった事例に乏しく,更なる努力が求められている.この際,県外医療機関からの支援だけに頼るのではなく,県内医療機関同士の協力連携が不可欠なものであると感じている.
 患者減少に伴う医療機関の経営困難から,規模の縮小や撤退があったのでは地域再生は望めない.東電への賠償請求も必要だが,県として県内の医療機能維持のための各種補助金の創設,増額を強く要望している.とりわけ小児科,産婦人科医療については緊急で大幅な対応が求められている.

県民健康管理調査の実施について

 大規模で長期的な対応が必要とされる県民健康管理調査については,受ける県民の利便性が必要であり,全県下に甲状腺検査に用いる高精度のエコー装置や技術的な体制を早急に整えて,県民の要望に応えられるようにしなければならない.医学的な必要度や意義についての議論がある県民健康管理調査ではあるが,福島に安心をもたらすためにも医療界を挙げての取り組みが求められている.
 更に,がん検診の徹底とがん登録の確立について,具体的で確実な体制整備を進めなければならない.先端医療など,がん治療の充実に目を奪われがちであるが,その前提となる早期発見や評価のシステムこそが必要なのである.

総合的なナショナルセンターの設置を

 現在の国の国際センター構想は,文部科学省,厚生労働省と経済産業省の別々でかつ類似のアイデアで構成されている.第三次補正予算案の原発関連支援策「原子力災害対応・復興基金」では,六百九十億円という巨費を投じて,福島県内に国際的な医療センター・開発拠点を整備するという計画が示されているが,国際的なセンターを設置するのであれば,除染技術や食品,環境影響なども含んだ省庁の壁を超えたナショナルセンターとして整備しないと意味を持たないのである.
 復興のために大幅な増税議論がなされており,電気料金の見直しの検討も話題になっている.全国民に支援をいただく福島県としては意義のある使い道を選択するとともに,感謝と説明責任を明確に示さなければならない.
 復興への道程は険しいが,次の世代が明るくのびのびと,そして胸を張って生活出来るようにすることこそが求められていることを,強く意識しなければならないのである.

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