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第1211号(平成24年2月20日) |
原中会長
日本外国特派員協会でTPP交渉参加問題について講演

原中勝征会長は,1月25日,日本外国特派員協会に招かれ,TPP(環太平洋連携協定)交渉参加について,日医の立場から講演を行った.
日本外国特派員協会は,一九四五年に設立され,現在百五十社の海外報道機関と日本の報道機関六十社から,合わせて約三百六十名の記者が正会員として登録されている社団法人であり,これまで国内外の著名人が講演を行っている.
原中会長は当日,講演で以下のように述べた.
TPP交渉参加表明に対する日本医師会の見解
世界に誇る日本の国民皆保険を後世に残すことは,日医の最大の目的であり,国民皆保険の堅持が約束されない限りTPP交渉参加に賛成は出来ないと一貫して表明している.
昨年十一月には,三師会(日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会)として,TPP交渉参加に向けての見解を公表し,政府に対して,(一)TPPにおいて,将来にわたって日本の公的医療保険制度を除外することを明言すること,(二)TPP交渉参加いかんにかかわらず,医療の安全・安心を守るための政策,例えば,混合診療の全面解禁を行わないこと,医療に株式会社を参入させないことなどを個別,具体的に国民に約束すること―の二点の実現を強く要請した.
TPPは根本的に何が問題か
日本では,いつでも,どこでも,誰でもが,平等に安い医療費で医療が受けられる.この国民皆保険が,いかに優れた制度であるか,世界の都市別の盲腸手術の治療費を比較して見れば,明らかである.
ところが,TPPに参加した場合,ISD条項(投資に関する紛争解決手続き)により,さまざまな国から,日本の公的医療保険制度が参入障壁であるとして訴えられる可能性を否定出来ない.更に,一度TPPに参加すると,ラチェット(一方向にだけ向かう爪車)規定により,そこから抜けることは出来ない.
また,今回のTPPの項目の中に,医療関係のことは記載されていないが,二〇〇一年の小泉内閣の時代から,米国が,これまで日本に医療の市場化を要求し続けている経緯があることを忘れてはならない.
一方,数日前,米通商代表部がTPPへの参加交渉や事前協議で,「混合診療」の全面解禁を対象外とする方針を日本政府に非公式に伝えていたとの報道があった.また,野田佳彦首相は,昨年十一月に,国民皆保険への影響について,「日本が築いてきた公的医療保険制度を失うようなことはしない」と述べ,制度を守る考えを示した.
しかし,日本の公的医療保険制度について,政府が長期ビジョンを示し,国民が納得出来る説明がない限り,日医は,TPPへの参加に賛成することは出来ない.
質疑応答
つづく質疑応答では,記者等からの質問に,原中会長が回答した.
「国民皆保険を維持し,存続させる闘いは終わったのか」との質問には,今後の交渉次第で,国民皆保険崩壊の危険性を感じているとした.
「混合診療を全面的に解禁した場合に,国民皆保険が崩壊するそのメカニズムを説明して欲しい」との質問には,日本では,例外的に二つの混合診療を認めているとして,「評価療養」と「選定療養」について説明した上で,混合診療が全面解禁されれば,新しい治療や医薬品を公的医療保険に組み入れるインセンティブが働かなくなり,公的医療保険から給付される医療の範囲がどんどん狭められ,自費診療の部分が広げられてしまうとした.
「株式会社化は,何が問題なのか」との質問には,配当のための利益を生み出そうとして,(一)経営状態によっては不採算部門・地域,病院経営自体からの撤退,(二)お金がある患者を最優先にする,(三)コスト削減を優先し,患者へのサービス,特に安全への配慮がおろそかになる,(四)自由診療の医療を拡大―などの可能性があるとした.
また,原中会長は,韓国と米国とのFTA(自由貿易協定)を例に挙げ,日本でも,場合によっては,安い費用で賄っている現在の医療提供体制が一気に破壊されてしまうとの危惧を示した. |