日医ニュース
日医ニュース目次 第1215号(平成24年4月20日)

第126回定例代議員会(平成24年4月2日)
横倉会長所信表明

横倉義武 会長

 この度,皆様のご支援により日本医師会長の重責を仰せつかった横倉でございます.私は,これまでの活動で,一貫して継続と改革を訴え,オールジャパン体制の重要性を訴えてまいりました.
 原中前会長の実績を尊重,そして継続しそれを発展させスピード感を持って改革に取り組む所存でございます.また,副会長職にあった私の立候補をお認めいただいた前会長,代議員の先生方に御礼を申し上げます.
 現在の日本医師会に課せられている使命は,国民の健康と生命を守る強い専門家集団になることであります.そのような思いから十項目にわたる提言をさせていただいておりました.
 その第一に,「日本医師会の基本理念の明確化と発信」を挙げました.基本理念として私は「日本医師会の綱領」を検討し,組織としての目的,目標,理想を会員のみならず国民の皆様に示したいと思います.
 私が立候補表明以降,一貫して訴え続けてきたのは,特に,地域医療の重要性であり,それゆえの地域医療の充実であります.
 それは,ほかの候補も訴え,大きな違いはないとも指摘されました.しかし,私が強調してきたのは,地域医療を守り,充実させるにはどうすれば良いのか,何をなすべきなのかであります.それぞれに異なる,各地域の実態をきめ細かくくみ上げ,それを分析して国政に反映させるために日本医師会が,そして日本医師会長が先頭に立って実行していくということであります.
 思えばこの三十年間近く,国は毎年のように医療改革の必要性を掲げ,実行してきました.しかし,改革が繰り返されるたびに,日本の医療は改善されるどころか,むしろ医療環境は悪化していると言っても過言ではありません.これは財政の辻つま合わせに力点が置かれてきたことも,その理由でありますが,最大の原因はそれぞれの,地域によって異なる医療提供体制をきめ細かく把握し,それを反映させた医療改革を行ってこなかったことにあります.
 私はかつて,ある国会議員に「各地域の実情をきめ細かく把握して,医療改革を行うべきだ」と申したことがあります.すると,その国会議員は「それは一番望ましいことだけど,きわめて難しいですよ」と答えました.そうかも知れません.国会議員や中央官庁の官僚に,その力を求めるのは無理かも知れません.
 しかし,それであきらめていたのでは,日本の医療環境は改善されません.これまでのように,悪化していくだけです.日本の医療を良くしていけるのは,日本医師会だけであります.
 各地域の医師会から,その実情を丁寧にくみ上げ,何が不足しているのか,どこをどう改善すればいいのかを分析し,国に対して具体的に実現を迫ることが出来るはずであります.
 もちろん,改善のために必要な財源の確保も求めていかなければなりません.そして,それはスピード感をもって進めていかなければなりません.私はその先頭に立って実行してまいります.今までの日本医師会に足りなかったことがあるとすれば,その部分ではないでしょうか.
 例えば二〇一三年度からは,二期目とも言える都道府県地域医療計画が始まります.具体案は,遅くとも年内には策定されるでしょう.
 この新たな五カ年計画を,国や都道府県という行政だけに任せるのではなく,各地区の医師会が主導権を持って策定しなければなりません.また,国が推進する医療の機能分化は,それぞれの地域の実情に応じて,適切に対応していくべきであります.
 改めて広辞苑で「医療」を引いてみると,「医術で病気を治すこと」となっています.しかしこれでは,緩和ケアの医療や,看取りの医療は,医療ではないことになってしまいます.医療の実態は広辞苑の定義をも通り越しているのです.
 変化している医療,地域によって異なる医療.それをひとくくりにした,一律の政策が国民本位の医療に結び付かないのは明らかです.スピード感を持って,実態に合った医療政策の策定を急がなければなりません.私はその先頭に立つことを改めてお約束します.
 併せて,今なお続く東日本大震災からの復旧,そして復興に向けて,日本医師会として更に支援していく所存であります.全ての国民が最適な医療を受けられるための環境整備に全力を尽くしてまいりたいと存じます.
 医学は急速に進歩しています.私が医師になった頃,体内の横断面をリアルタイムに画像が表示することは夢でありました.診断技術の進歩,内視鏡等の診断・手術法の進歩,臓器移植だけでなく細胞培養等の進歩,全ての分野で急速に進歩,普及をしています.新規技術の開発,普及はそれぞれ関係する学会の努力の賜物であります.日本医学会が各種学会を統括され,医師会員の多くは関係する学会に所属しています.今後も医学の進歩を臨床の場に早く普及させ国民に還元するためにも,日本医師会と日本医学会が車の両輪として,国民の医療を守っていかなければなりません.
 行く手にはさまざまな困難が待ち構えていますが,代議員の先生方のご指導をいただきながら,役職員一丸となってより良い医療を目指し,日本医師会の強化を図っていきます.よろしくご支援をお願いいたします.

第126回定例代議員会(平成24年4月2日)/横倉会長所信表明(写真)

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