日医ニュース
日医ニュース目次 第1220号(平成24年7月5日)

小森常任理事に聞く
財源を確保し,7ワクチンの定期接種化を

 今号では,小森貴常任理事(感染症危機管理対策室長)に,今国会で成立した「新型インフルエンザ等対策特別措置法」及び本年五月に厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会が取りまとめた「第二次提言」に対する日医の考え方について,説明してもらった.

小森常任理事に聞く/財源を確保し,7ワクチンの定期接種化を(写真)政府の要請・指示は現場の医師の行動を制約するものであってはならない

 新型インフルエンザ等対策特別措置法は,平成二十一年に新型インフルエンザ(A/H1N1)が発生した際の混乱等を踏まえ,病原性の高いインフルエンザや危険性のある新感染症の発生に対し,国民の生命の保護,国民生活・経済への影響の最小化を図るため,政府があらかじめその措置等を定めておくという考えの下に取りまとめられたものです.三月九日の閣議決定を経て,本国会で成立し,五月十一日付で公布されました.
 本法成立までの日医の対応ですが,政府が法案を提出した趣旨は理解出来ることから,法案の提出自体には反対せず,政府に対して,(1)ワクチンを優先的に接種する者の中に,医師や看護師等の他,医療機関の事務職員も含める(2)防護具,抗インフルエンザウイルス薬等を十分に配布出来るような体制整備(3)ワクチン接種体制の再構築(パンデミックの場合には原則集団的接種にするなど)(4)日医を指定公共機関とする(5)万が一,医療関係者が健康被害を受けた場合の補償制度の確立―等の要望を行ってきました.
 また,本法に基づいて,厚生労働大臣,都道府県知事は,医療関係者に医療を行うことを要請・指示出来るとされていたため,会員の先生からはその要請・指示に従わない場合,罰則を科されるのではないかとの懸念の声が多く寄せられておりました.そのため,その点につきましても,「安易な指示は行うべきではなく,罰則も設けるべきでない」と強く主張し,修正を求めてきた次第です.
 三月三十日に衆議院で法案が可決された際には,附帯決議が付けられ,これらの要望に対する一定の担保がなされたと理解しておりましたが,更に確実なものにするため,横倉義武会長,羽生田俊副会長らのご協力も得ながら,四月以降に,改めて政府,与野党に対して申し入れを行いました.
 その際,平成二十一年の新型インフルエンザ発生時には,医療関係者自らが状況に応じて柔軟に対応して診療に当たった結果,被害を最小限に食い止めることが出来,また,東日本大震災の被災者支援は,医師のプロフェッショナルオートノミーに基づいて自律的に行われたこと等を説明し,(1)あくまでも政府の関与は限定的・謙抑的なものとし,現場の医師の行動を制約すべきではない(2)実費弁償であることを明確にすべき(3)要請・指示に従わない場合の罰則は設けない―ことを改めて強く要請しました.
 その結果,参議院で議決された際には,「医療関係者に医療を行うことを要請・指示するに際しては,感染症の専門家及び現場の医療関係者等の意見を十分に踏まえること」等,十九にも及ぶ附帯決議を付けてもらうことが出来ました.
 これにより,医療関係者の心配はかなりの部分で払拭(ふっしょく)出来たと思います.われわれの主張に理解を示し,ご尽力いただいた方々には,この場をお借りして,改めて感謝申し上げたいと思います.
 今後はこの法律に基づいて,政省令,あるいは行動計画,ガイドラインが策定されることになりますが,地域の患者さんを守っていく活動を現場の医療機関が十分に行うことが出来るよう,引き続き努力してまいります.

わが国のワクチンギャップ解消は日医の使命

 次に,厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会の「第二次提言」についてですが,この提言は二年五カ月の長きにわたって,計二十二回の議論を重ねた結果,取りまとめられたものです.
 私は,取りまとめの最終段階で参加させて頂きましたが,本部会がほとんど医療,感染症の専門家で構成されているにもかかわらず,提言の中に財政的な観点からの表現が多いことに疑問を感じました.
 そのため,取りまとめの際に文言の修正を強く求め,財源があるか否かにかかわらず,あくまでも医学的・科学的観点から七つのワクチン(子宮頸がん予防,ヒブ,小児用肺炎球菌,水痘,おたふくかぜ,成人用肺炎球菌,B型肝炎)については,広く接種を促進していくとの趣旨が明確に示されることになりました.
 予防接種で防ぐことが出来る病気(VPD:Vaccine Preventable Diseases)から,子どもたちを守ることは当たり前のことです.しかし,先進国で定期接種化されているワクチンが日本では任意接種となっているなど,わが国の予防接種行政はかなり遅れたものとなっています.
 厚労省では,この提言を基に予防接種法改正案を作成し,国会に上程する意向を示していますが,ワクチンギャップを無くすことが日医の使命と考えており,改正案にも,既述の七ワクチン全ての定期接種化を盛り込めるよう強く要望していきたいと思います.
 また,予防接種の実施主体は,財政状況が厳しい市町村ですので,国に対しては,その財政的な支援も強く求めていく所存です.
 提言の中には,その他,「予防接種に関する評価・検討組織の新設」「接種方法」「感染症サーベイランス」等についても触れられています.
 「評価・検討組織」についてですが,現在,厚労省の中には,予防接種に関する検討会や部会がかなり多く,しかも担当部局も異なる形で並列的に存在しています.
 日医としましては,予防接種事業を広く,安定的に運用していくには,組織を一本化し,その機能を強化・拡大すべきと常々主張してきましたので,今回の提言は,その主張がおおむね取り入れられたものと理解しています.今後は,この提言が具現化され,より強固な組織となることを期待しています.
 予防接種の「接種方法」についてですが,予防接種には,どうしても一定の割合で副反応が発生するため,十分な予診,健康状態の把握が不可欠であり,個別接種が基本であることは間違いありません.
 しかし,いざパンデミックが起きたような場合には,早急に広く国民に接種を受けてもらう必要があるため,集団的接種も必要と考えています.
 ただし,その在り方に関しては,十分に検討されているとは言えず,今後は,地域の医療現場の意見も踏まえ,ガイドラインづくりに当たっていきたいと思います.
 次に「感染症サーベイランス」についてですが,適切な医療を提供していくためには欠かせないものと考えており,個人情報保護との関係を整理した上で,予防接種台帳の活用を進めていきたいと考えています.
 また,日医でもORCAプロジェクトの一環として,日医のホームページ上に感染症サーベイランスの情報を掲載しています.現在は,インフルエンザだけが対象ですが,その他の疾患にも広げられるよう検討しておりますので,より良いサーベイランスを行うためにも,会員の先生方にはぜひ,本事業へのご参加をお願いしたいと思います.

定期接種化を要望している7つのワクチン

  • 子宮頸がん予防
  • ヒブ
  • 小児用肺炎球菌
  • 水痘
  • おたふくかぜ
  • 成人用肺炎球菌
  • B型肝炎

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