日医ニュース
日医ニュース目次 第1223号(平成24年8月20日)

医療に関する懇談会
医学部新設問題等,医療を取り巻く諸問題について協議

医療に関する懇談会/医学部新設問題等,医療を取り巻く諸問題について協議(写真) 横倉執行部発足後初となる「医療に関する懇談会─日本医師会・全国医学部長病院長会議─」が八月一日,日医会館で開催された.
 冒頭,横倉義武会長は,「大学と医師会には共通した課題も多く,その解決に向けて,今後も協力願いたい」とあいさつするとともに,東日本大震災の被災地支援に対する協力に感謝の意を表明.「今後も,心のケアの問題等における支援をお願いしたい」と述べた.
 引き続き,双方の役員の自己紹介の後,(一)最近の医学部新設問題,(二)厚生労働省「専門医制度の在り方に関する検討会」,(三)女性医師に関する要望書の提出,(四)初期臨床研修を修了した医師に対するアンケート調査結果,(五)費用対効果評価,(六)消費税問題─等について,協議が行われた.
 (一)では,中川俊男副会長が,二〇〇八年度以降,一定の医師養成数の増加が図られており,医学部を新設する必要はないことを改めて説明.また,医学部新設を求める理由が,医師不足対策から特色のある医師を養成することに変化してきているとして,注意が必要だとした.
 大学側からは,日医の考えに賛成の意が示された他,医師の地域偏在の解消には,各地域の知的環境を整備していく必要があるとして,その整備のため,大学と医師会が協力していくことが重要との意見も出された.
 この問題に関連して,羽生田俊副会長は,大学のカリキュラムに医師会の活動を説明する場を設けることを要請.今村聡副会長は,情報誌「DOCTOR-ASE(ドクタラーゼ)」を創刊したことを紹介し,学生一人ひとりに配布出来るよう協力を求めた.
 (二)では,小森貴常任理事が,「医師自らのプロフェッショナルオートノミーに基づいて自らを高め,専門医としての質を担保することは医師の使命であるが,あくまでもその行為は医師の自律的な意思によって行われるもので,国家によって管理されてはならない」という,専門医の在り方に関する日医の基本的な考え方を説明.この問題に関しては,大学側からも厚労省の考えに批判的な意見が出され,今後も両者が協力して検討会の議論に臨んでいくことで一致した.
 (三)では,津田喬子名古屋市立東部医療センター名誉院長が,八十大学の病院長を対象として行ったアンケート結果を基に,(1)キャリア維持と向上(2)就労継続(3)ワークライフバランス実現─の三つに関して提言をまとめ,文部科学省,厚労省に提出したことを報告.
 (四)では,山下英俊山形大学医学部長が,「初期臨床研修を大学で行っている人が減っていること」「学位の取得を目指す医師が減っていること」などの調査結果を説明.今回の結果を基に,卒前プログラムや専門医研修を充実させていく考えを示した.
 (五)では,鈴木邦彦常任理事が,国立成育医療研究センター成育政策科学研究部長の森臨太郎氏の考え等を紹介した上で,費用対効果導入のためには人材の育成や適正な組織づくり等が必要だとして,拙速な導入に慎重な意向を示し,理解を求めた.
 (六)では,今村副会長が,(1)控除対象外消費税問題の解決のためには,診療報酬上の対応では難しいとの考えで,診療,支払両側の考えが一致していること(2)課税のあり方について,政府税調でも検討するよう求めていること─等,中医協診療報酬調査専門組織「医療機関等における消費税負担に関する分科会」での議論の内容を紹介.課税の方向に見直すためには,医療界全体がまとまって対応していかなくてはならないとして,大学側に協力を要請した.
 その他,当日は,今後の懇談会で議論すべき事項として,日医から,「特定機能病院の平均在院日数」「医療における個人情報保護のあり方」等を提案し,了承された.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.