日医ニュース
日医ニュース目次 第1224号(平成24年9月5日)

日医定例記者会見

8月8日
厚生労働省「今後の認知症施策の方向性について」に対する日医の見解

日医定例記者会見/8月8日/厚生労働省「今後の認知症施策の方向性について」に対する日医の見解(写真) 三上裕司常任理事は,厚生労働省が六月に公表した報告書「今後の認知症施策の方向性について」に対して,検討過程や内容に大きな疑問があるとして,その問題点を指摘した.
 同報告書は,藤田一枝厚労大臣政務官を中心に認知症施策検討プロジェクトチームを設置し,省内で部局を超えた横断的な検討により公表されたものである.
 同常任理事は,「日医としても認知症の方々の人権を尊重し,地域で生活し続けることを支援することが重要と考えており,厚労省内が縦割りを排除し,認知症対策に取り組むこと自体には賛同する」とした一方,「最も納得し難いのは,本報告書の作成過程が不明確であることだ」と述べた.
 報告書の内容については,医療現場の真摯(しんし)な対応の軽視,理想論のみの反映など,一方的な官僚主導により作成されたものだとし,「現場の意見を反映しない強引な施策は,約七年前に突然打ち出された,介護療養病床の廃止方針と同様,現場に混乱を来すのみで実効を伴わない」と指摘.
 更に,日本精神科病院協会とは立場が完全に一致しているわけではなく,日医としてはあくまで報告書の作成手法に対して意見を述べているとした.
 また,認知症施策については,平成二十三年十一月に公表された「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム 第2R:認知症と精神科医療」において,「認知症疾患医療センター」が有機的に機能するよう,地域における「精神科医療機関」「認知症サポート医」「地域包括支援センター」などとの連携強化が,まず必要であると指摘されているのに対して,今回の報告書では,「身近型認知症疾患医療センター」との新たな用語が事前の説明もなく唐突に記載されていると批判.
 「身近型認知症疾患医療センター」についても,具体的にどのような医療機関,あるいは役割を想定しているのかが不明であり,本来ならば,これまで日医が協力して養成してきた「認知症サポート医」の役割を明確にし,地域における認知症ケアの実効性を高めるべきであると重ねて指摘した.
 最後に同常任理事は,「認知症対策は,『町づくり』が大切であり,それが『人づくり』につながる.在宅で暮らし続けることは大切だが,状態が重度化すれば在宅療養は,本人・家族にとって限界がくることから,バックアップするための施設や病院等と一体になった計画を作成することが必要である」との考えを示した上で,社会保障審議会介護給付費分科会等で,さまざまな角度から議論を行い,地域で機能し得る普遍性のある取り組みが可能になることが望まれるとした.

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