日医ニュース
日医ニュース目次 第1225号(平成24年9月20日)

中医協(8月22・30日)
参照価格制度の導入に強い懸念を表明

中医協(8月22・30日)/参照価格制度の導入に強い懸念を表明(写真) 中医協薬価専門部会が八月二十二日,厚生労働省で開催され,長期収載品の薬価のあり方等について,引き続き議論が行われた.
 当日は,前回の部会での委員の質問に答える形で,参考人が諸外国の先発医薬品,後発医薬品のシェア等について説明を行ったが,その中に,ドイツ,フランスにおける参照価格制度の状況が示されたことが問題となった.
 参照価格制度とは,保険からの償還基準額を超えている医薬品について,全額自己負担とする制度である.かつてその導入が検討され,日医等の反対により,見送られた経緯があるが,本年七月に行われた厚労省版政策仕分けにおいて,その導入の検討が再び提言されていた.
 安達秀樹委員は,参照価格制度について,(1)患者負担を懸念して適切な治療が行われなくなる(2)製薬企業の開発費の回収が難しくなり,必要な薬が開発されなくなる─等の問題点があると指摘.中医協として,その導入を明確に否定すべきとして,支払側に同意を求めた.
 これに対して,支払側の白川修二委員は,支払側としての統一見解はまとめられていないとしながらも,安達委員の主張に一定の理解を示した.

看護師の七十二時間問題の解決を─鈴木常任理事

 その他,当日は,診療報酬基本問題小委員会,費用対効果評価専門部会等も開催された.
 基本小委では,厚労省事務局から次期改定に向けた検討事項として,(一)特別入院基本料を算定する際の減額幅や,七対一及び十対一特別入院基本料と同様の緩和措置を十三対一及び十五対一入院基本料に拡大する,(二)算定率の低い入院基本料等加算は廃止するなどの簡素化を図る―ことが提案された.
 鈴木邦彦常任理事は,日医が実施した「二〇一二年度診療報酬改定についての調査」の結果,一般病棟入院基本料の要件のうち,満たすことが困難な要件で一番多かったのが看護職員数であったことを紹介.入院基本料を議論するのであれば,まずは看護師の月平均夜勤時間七十二時間ルールの問題について議論すべきと主張した.
 更に,加算の簡素化についても,今回の改定で管理栄養士の配置が入院基本料の施設基準になったことで現場が混乱したことを挙げ,慎重な対応を求めた.
 費用対効果評価専門部会では,厚労省事務局から,効果指標の具体例とその利点及び欠点,諸外国の状況等に関する説明が行われた.
 鈴木常任理事は,質調整生存年(QALY)導入ありきの厚労省の姿勢を批判した上で,「国民皆保険の中にどのように組み込んでいくのかなど,制度の全体像の議論をしなければ,恣意(しい)的な運用になりかねない」と指摘.この意見には三人の参考人も同意し,費用対効果を導入するか否かの検討に当たっては,臨床的な評価と総意形成を実施することになった.
 一方,安達委員は,費用対効果の導入によって,混合診療が全面的に解禁されるとの懸念が一部にあることに触れ,「そうならないために,費用対効果導入の議論をしている」と主張.今後については,「QALYにはさまざまな問題があり,その修正を行いながら,日本型の指標をつくっていくことがいいのではないか」と述べた.

高額投資の消費税手当ては公費で─今村副会長

 三十日には,医療機関等における消費税負担に関する分科会が厚労省で開催された.
 当日は,厚労省事務局より,「平成元年度,九年度に診療報酬上の補てんがあったとされる改定項目の経緯」「医療機関の施設・設備投資に係る主な施策」「現行の既収載医薬品の薬価改定方式に消費税がどのように組み込まれているか」等について説明を受けた後,議論が行われた.
 今村聡副会長は,日医提出の資料を基に,高額投資に係る消費税に対する手当てに関して,新たな財源(公費)により賄うべきだと主張.これに対しては,支払側からも賛同の意見が述べられた.更に,今村副会長は,診療報酬上の補てん(医科分)に関して,歯科,調剤と異なり,平成元年度と九年度で上乗せされた項目が違うことを指摘.現行の薬価の算定方式についても,「消費税率が上がる度に,価格が引き上げられる仕組みになっている」として,諸外国に倣って,ゼロ税率に見直すことを要望した.
 鈴木常任理事は,医療機関の施設・設備等に係る主な「優遇」施策について,中小の医療機関では使いにくいものになっていると指摘するとともに,「診療報酬で補てんする金額を議論する際には,税制上,経理処理によって,控除対象外消費税が損金算入出来ることは分けて考えるべき」と主張した.
 その他,当日は,厚労省事務局から,三上裕司常任理事始め八名による調査専門チームが発足したこと等,予備的調査の進捗(しんちょく)状況についての説明が行われた.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.