日医ニュース
日医ニュース目次 第1228号(平成24年11月5日)

プリズム

柔よく剛を制す,モノもヒトも

 昔の家はよく揺れた.私が育った日本海に程近い茅葺(かやぶ)き屋根の家は,台風でなくとも壁と柱が一体となってグッーと動くのが肉眼で確認出来た.今にも倒れるのではと怖かった.だが,この家,意外に強く,鉄筋アパートが倒壊した地震に耐えた! もちろん揺れに揺れたが.その茅葺き,今なら文化財級であろうが,高校時代に普通の瓦屋根の住宅に建て替えられた.解体の時に覗(のぞ)いて見ると,柱や梁(はり)の結合はほぞ組みと丁寧な荒縄縛りであり,ボルトや釘は全くなかった.古老の話では,いつ建ったか分からないが,百年以上前だろうとのこと.自然のままの材木は太さも長さも不揃(ぞろ)いである上,反りもあったが,それらを実にうまく組み合わせて家が作られていた.
 最近の大地震では,中途半端に新しい,つまり昔の家よりは新しいが,現在の耐震基準には達していない住宅が多く潰れている.それどころか,頑丈なはずの大きな建築物も意外なもろさを露呈している.昔の茅葺きは,地震や風のエネルギーを揺れることで逃がしていたので,長年持ち堪(こた)えたのであろう.まさに“柔よく剛を制す”である.
 翻って,組織や人の頭も同様である.TPPや消費税,原発問題など,医療界も大きな揺れに見舞われている.社会の変化にうまく対応出来てこそ生き残れるものと思われる.固定概念や既得権にとらわれない柔軟な対応が求められている.

(骨コツ)

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