日医ニュース
日医ニュース目次 第1231号(平成24年12月20日)

平成24年度中部医師会連合委員総会
TPP,地域医療等医療を取り巻く諸問題を協議

平成24年度中部医師会連合委員総会/TPP,地域医療等医療を取り巻く諸問題を協議(写真) 平成二十四年度中部医師会連合委員総会が十一月十七,十八の両日,富山市内で開催され,日医から横倉義武会長,中川俊男副会長,高杉敬久・小森貴・鈴木邦彦各常任理事が出席した.
 十七日には,岩城勝英中部医師会連合委員長(富山県医師会長)らのあいさつの後,「平成二十三年度中部医師会連合収入支出決算に関する件」など,三件について審議が行われ了承された.続いて,次期委員長として小林博岐阜県医師会長が選出され,その後には三つの特別委員会が開催された.

医療機関に対する指導・監査の問題,次期改定に向けて議論

 社会保険特別委員会では,委員から個別指導に関して中部七県と大都府県の状況が報告された.東海北陸厚生局からの選定基準改定に対しては,「萎縮医療につながる」「個別指導対象の数値目標の根拠が明確でない」などの問題点が指摘された.それを受けて,鈴木常任理事は,十月十九日に櫻井充厚生労働副大臣(当時)に個別指導に関する要望書を提出したことを報告し,厚労省とも引き続き検討をする姿勢を見せた.
 また,同常任理事は次期診療報酬改定に向けては,「再診料の回復」を求めていくことに加えて,各地域の医療・在宅・介護のビジョンを作成する上で,次期改定が果たす役割についても議論する必要があるとの認識を示した.

認知症サポート医のケア体制などについて議論

 介護保険特別委員会では,高杉常任理事が中央情勢報告として各審議会での議論の経過を概説するとともに,各県医師会からの質問に回答した.
 「認知症施策」については,これまで養成してきた「認知症サポート医」を活用し,地域ケア会議への参加など,医師が誇りを持って活動出来るシステムづくりが必要とした.
 「地域のまちづくりの方針」については,子どもたちが気軽に老人に手を差し伸べられるような人づくりが大切だとした上で,助け合いの連鎖が広がるような地域包括ケアシステムの重要性を説いた.
 「ケアマネジャーの資質向上」については,地域ケア会議の機能強化やケアマネジャーの学習制度,医師等がケアプランをチェック出来る仕組みの必要性を示した.

TPPへの危惧,消費税問題について議論

 医療政策特別委員会では,中川副会長が講演.TPP交渉への参加については,「TPP交渉への参加により,日本の医療市場を狙う国からの圧力が強まり,世界に誇る日本の国民皆保険が形骸化する危険がある」として,国民や政府への呼び掛けを行っているとした.
 また,消費税の目的税化については,今後の医療費増加に対して,財務省は「消費税率引き上げ」か「給付制限」の二者択一を迫り,消費税率の更なる引き上げがなければ,患者への給付が制限されるのではないかとの危惧を示した.
 その後の質疑では,各県からも,消費税が目的税化されたことで,社会保障費が制限を受けることを危惧する意見が述べられた.

日本医師会の直面する課題について講演

平成24年度中部医師会連合委員総会/TPP,地域医療等医療を取り巻く諸問題を協議(写真) 翌十八日には,横倉会長が,「日本医師会の直面する課題」と題して,特別講演を行った.
 「わが国の医療」の状況については,カナダの調査機関で行われた「世界の医療の評価」の結果を基に,日本では平均寿命や疾病関連の死亡率がほぼ全てにおいて,最高評価を受けていると説明.その一方で,「健康状態の自己評価」等の評価が低いことに関しては,日本人は他国に比べて「自分は幸せでない」と謙遜する国民性があるのではないかとした.更に,各国の対GDP総医療費と照らし合わせて,低コストで高いパフォーマンスを実現しているとした上で,それを維持していくためには,更なる医療費の増加が不可欠だとした.
 「地域医療の再興」については,都道府県の実態に基づいた医療を適切に提供する仕組みが重要とし,医師会には,「行政に対する医療現場の意見の反映」や「多様な関係者・職種間の協力」などの役割が求められているとした.
 「TPP」に関しては,日本の公的医療保険制度に及ぼすTPPの悪影響として,(一)中医協での薬価決定プロセスに干渉,(二)私的医療保険の拡大,(三)株式会社の医療への参入―を示し,「もし,国民皆保険そのものへの影響がなかったとしても,薬価決定への圧力が強くなるのではないか」との見方を示した.更に,規制制度改革やTPPの流れが進むと,所得によって受けられる医療に格差がある社会が出来ると危惧を示し,日医は全力を挙げて国民皆保険を守ると強調した.

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