日医ニュース
日医ニュース目次 第1238号(平成25年4月5日)

第1回日本医師会在宅医療支援フォーラム開催
在宅医療推進の核となるリーダーの育成を目指して

 第1回日本医師会在宅医療支援フォーラムが3月17日,日医会館大講堂で開催された.
 当日は,千葉県柏市で行われている「柏プロジェクト」や在宅医療連絡協議会のメンバー等による取り組み事例の紹介があった他,パネラーとフロアーとの間で活発な質疑応答が行われた.

第1回日本医師会在宅医療支援フォーラム開催/在宅医療推進の核となるリーダーの育成を目指して(写真) 日医では,これまで在宅医療に携わる医師向けの研修会を開催してきたが,今回のフォーラムは,地域包括ケアシステムを構築するに当たって,都道府県・郡市区医師会に在宅医療・介護等が連携していく上での核となるリーダーを育成することを目的として行われたものである.
 高杉敬久常任理事の司会で開会.冒頭あいさつした横倉義武会長は,「在宅医療を推進し,地域包括ケアシステムを構築していくためには,かかりつけ医の意識改革とともに,後方支援病院や在宅サービスの整備等,地域行政と連携しながら取り組んでいかなければならないが,その主導的な役割は医師会が担うべきである」と強調.その上で,参加者に対しては,「本日の成果を踏まえて,かかりつけ医機能の充実を図るとともに,地域のリーダーとして地域包括ケアシステムの構築に向けて尽力して頂きたい」と述べた.

基調講演

 午前には,まず,辻哲夫東大高齢社会総合研究機構特任教授が基調講演を行った.辻教授は,高齢化が急速に進んでいるわが国においては,「治す医療」から,「治し,支える医療」への革新的な改革が求められており,今,それを実施しなければ,大混乱を引き起こすことになる(特に都市部)と指摘.その上で,今後は,在宅医療が超高齢社会のまちづくりに当たっての大きな鍵になるとし,その取り組みを行政,医師会等が協力して実践している千葉県柏市の「柏プロジェクト」を紹介した.
 辻教授は,また,地域医療の将来像について,地域の地区医師会と市町村の連携を中核として,かかりつけの診療所は午前中に外来,午後は訪問診療を行い,地域型の病院は高度急性期病院と診療所の間で在宅を支える機能(入れては戻す機能)を担っていくことが理想的な形になるとの考えを示した.
 柏プロジェクトに関しては,金江清柏市医師会長が,設立までの経緯を説明.「顔の見える関係会議」(柏市の全在宅サービス関係者が一堂に会し,連携を強化するための会議)など五つの会議を設置していることや,「地域における多職種連携研修会」の開催,iPadを利用した情報共有システムの構築などを行っているとした.
 また,秋山浩保柏市長は,急速に高齢化が進んでいる柏市の現状を報告.市としても早急な対応が必要と考え,東大高齢社会総合研究機構,UR都市機構,柏市医師会の協力の下に,プロジェクトを立ち上げたとし,行政の具体的な取り組みとして,「保健福祉部(介護保険部局)に専属の福祉政策室を設置」「市民を対象とした意見交換会の開催」などを紹介した.
 午後からは,まず,鈴木邦彦常任理事が,日医が実施した「在宅医療についての郡市区医師会アンケート調査」の結果概要を説明.在宅医療を行っていく上で,医師並びに後方支援病床の確保が重要と考えている医師会が多い一方,その実現が困難と考えている医師会も多いことが明らかになったとした.

パネル ディスカッション

 引き続き,「都道府県医師会や地域医師会で核になるリーダーの育成を考える」をテーマとしたパネルディスカッションが行われた.
 新田國夫全国在宅療養支援診療所連絡会長は,病院よりもリハビリが進んだ例など三つの症例を紹介した上で,在宅療養を進めるために必要なこととして,(1)地域におけるコーディネート機能の充実(2)協力病院との連携体制の構築(3)在宅療養における患者・家族の意思を尊重した急変時の対応(4)在宅療養スタッフや急性期医療機関スタッフ,都民への意識啓発(5)在宅療養を担う人材の育成─の五つがあると指摘した.
 太田秀樹全国在宅療養支援診療所連絡会事務局長は,在宅医療普及推進のために求められるリーダー像について,市民,行政,多職種の人々をまとめていくことの出来る人を挙げ,その役目は医師が担うべきだと主張.また,在宅医療の推進に不可欠なこととして,行政,医師会の関わりに加えて,市民の意識改革を挙げ,そのためにメディアを積極的に活用することを提案した.
 白髭豊長崎県医師会理事は,坂道が多く,在宅医療を行うには困難な環境にあるが,開業医が多い長崎県の特徴を踏まえて,平成十五年に設立した「長崎在宅Dr.ネット」の活動を紹介.更に,離島等,医療資源の乏しい地域での問題点を踏まえた在宅医療推進のための方策として,(1)医師,看護師並びに住民に対する啓発(2)訪問看護の充実(3)施設への啓発(体制の整備,職員啓発)(4)ケアマネへの在宅医療研修─等を挙げた.
 篠原彰静岡県医師会副会長は,地域医療再生基金を活用して設立した「静岡県在宅医療推進センター」の主な事業を概説.県内の在宅医療機能・体制の現状及び課題を把握するため,「退院時ケアマネジメントに関する実態調査」や「在宅医療機能に関する実態調査」などを実施したこと,情報通信技術(ICT)を活用した在宅患者医療情報共有化システムを開発し,平成二十五年度末までに,おおむね十郡市医師会で実証実験を行う予定であることなどを紹介した.
 土橋正彦千葉県医師会副会長は,「かかりつけ医による在宅医療の推進」と「地域特性を尊重した在宅医療の推進」を基本コンセプトとした千葉県医師会の活動を報告.今後は,新医師会館(平成二十五年度内に完成予定)に,地域医療総合支援センターを開設し,在宅医療・介護モデルルームでの研修や医療機器・材料の展示と研修等を行っていく意向を示した.
 梶原優四病院団体協議会在宅療養支援病院に関する委員会委員長は,四病協で実施した「在宅療養支援病院に関するアンケート調査」について,(1)民間病院が多く,連携強化型の病院が増えている(2)二〇・七%の病院でITによる情報共有化が行われている(3)認知症への対応に苦慮している病院が多い─などの結果を説明.少ない医療資源の下で在宅医療を推進していくには,地域連携を進めていくと同時に,住民に正確な情報を伝えていくことが大事になるとした.
 池端幸彦日本慢性期医療協会副会長は,これからの慢性期病床が目指すべき役割は,医療・介護を一体的に提供出来る「地域支援型医療の拠点」になることだと指摘.慢性期医療・介護に求められることとしては,(1)尊厳を大切にする(2)生活・人生を視点に置く(3)地域や医療・介護との連携(4)デマンドとニーズの違いを理解する(5)食と栄養,リハビリ・認知症,ターミナルケアへの理解―などが挙げられるとした.
 平子哲夫厚生労働省医政局指導課在宅医療推進室長は,二〇一二年を「在宅医療・介護あんしん二〇一二」と位置付け実施してきた「在宅医療連携拠点事業」「多職種協働による在宅チーム医療を担う人材育成事業」等を紹介.各地域には,地域の実情に応じた在宅医療・介護の連携体制を構築して欲しいとした上で,その際には,市町村が中心となり,地域の医師会等と緊密に連携しながら体制を構築していくことが重要になるとした.
 その後は,パネリストと参加者との間で,「訪問看護の充実」「有床診の果たす役割」「在宅医同士の連携」等について活発な質疑応答が行われ,最後に中川俊男副会長が,「今回のフォーラムを契機として,各地域において,在宅医療に対する議論を深めて頂きたい」と総括し,フォーラムは終了となった.

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