日医ニュース
日医ニュース目次 第1238号(平成25年4月5日)

日医定例記者会見

3月7日
医学部新設と東日本大震災被災地の医療復興について

日医定例記者会見/3月7日/医学部新設と 東日本大震災被災地の医療復興について(写真) 中川俊男副会長は,「医学部新設問題に関しては,昨年,文部科学省と厚生労働省が既存の医学部の定員増で対処することで決着したと認識していたが,二月二十七日に,自民党の『東北地方に医学部の新設を推進する議員連盟』(会長・大島理森前副総裁)が,被災地の復興のシンボルとして,東北に医学部新設を求める決議をし,党内で着々と手続きを進めていることから,この件に関して日医の見解を公表したい」と述べた.
 同副会長は,まず,二〇〇八年に政府が医師数増加の方針を打ち出し,医師養成数の増加が図られてきた結果,医師の絶対数確保には一定の目途が付きつつあり,今後は,医師の地域偏在,診療科偏在の解消が急務との考えを示した.その上で,医学部新設には,教育確保のため,医療現場から一大学につき約三百人の教員(医師)を引き揚げざるを得ず,「地域医療の崩壊を加速する」と指摘した.
 また,東北六県の医師会からも,「医学部新設により,教員確保のための勤務医師の移動(引き抜き)が発生し,地域の医療機関の医師不足を加速させ,地域医療の崩壊が決定的なものとなることは明らか」との声が挙がっていることや,被災三県の医学部からも,「医学部新設は被災県における地域医療復興・再生のブレーキとなり,被災地の地域医療崩壊をもたらす」として,要望書が出されていることを報告した.
 更に,同副会長は,東日本大震災被災地の医療復興に向けては,あらゆる手段を尽くして取り組むべきとするとともに,被災三県の医学部が医師の教育・派遣を通じて取り組もうとしている地域医療支援等の活動を,国として財政面も含めて強力に支援すべきとした.
 また,(一)政治主導で,被災地の医学部に医療復興講座を設置する等により,大学医学部における役職・身分を保障し,キャリアアップにつなげる,(二)国が通常の外数で運営費交付金(私学助成金)を全額措置する,(三)国がその講座の医師の採用を全面的に支援する―などによって被災地の地域医療に従事する医師を確保すること等も検討するよう提案した.
 なお,民間医療機関についても,医師・看護師等の確保が困難であり,二重ローン問題等も抱えているとして,「地域医療再生基金の柔軟な運用(十割補助,条件軽減等)と,更なる積み増しを要請したい」と述べ,被災地の医療復興を最優先課題として,政治的にも躊躇(ちゅうちょ)することなく進めるよう求めた.

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