日医ニュース
日医ニュース目次 第1241号(平成25年5月20日)

視点

「特定行為に係る看護師の研修制度(案)」について

 平成二十五年三月末に,厚生労働省「チーム医療推進会議」において,「特定行為に係る看護師の研修制度(案)」についての報告書が取りまとめられた.
 同制度(案)は,保助看法に「特定行為」を定め,その行為を,(1)医師の指示の下,プロトコールに基づいて行う場合には厚生労働大臣の「指定研修」を義務付け,研修した旨を看護師籍に登録する(2)それ以外(具体的指示で行う)の場合も研修(院内研修等)の実施を努力義務化する─というものである.
 三年にわたる議論の過程で,当初の「特定看護師(仮称)」から,「看護師特定能力認証制度骨子(案)」と名を変え,最終的には「特定行為に係る看護師の研修制度(案)」となった.厚労省は,看護師の能力を認証する制度ではなく,研修の制度化であると説明している.特定行為の定義は,「行為そのものに『技術的な難易度又は判断の難易度』があることに加えて,予(あらかじ)め対象となる病態の変化に応じた行為の内容が明確にされた,特定行為に係るプロトコールに基づき,看護師が患者の病態の確認を行った上で実施することがある行為」としている.つまり,単に技術的あるいは判断が難しいだけでは特定行為とはならないということである.この部分だけを見ても,当該制度が創設されたとして,現場にスムーズに浸透するとは考えにくい内容である.制度を創設するのであれば,医療現場にとっても国民にとっても,分かりやすいものでなければならない.
 一部マスコミでは,「看護師が診療」との誤った報道も見受けられるが,看護師が行うのはこれまでどおり「診療の補助」である.診療看護師(NP)に結び付けるものではないということは報告書にも明示されている.
 日医は,これまで医療安全及び患者のための医療の質の向上の観点から同制度には反対してきた.今回の報告書にも反対意見を載せている.日本看護系大学協議会の委員も反対意見を述べている.
 日医として,チーム医療の推進や医療の質の向上は,当然図っていくべきと考えている.ただその際に,一部の現場にとって便利であっても,医療安全を脅かしたり,多くの現場に混乱をもたらすものであってはならないと考えているだけである.
 現在,「特定行為(案)」として二十九項目が挙がり,二十七項目が「要検討」とされている.今月から看護業務検討ワーキンググループ(WG)で議論が再開されたが,WGだけではなく,各学会にも意見を聞くなどして,より安全な範囲を見極めるべきである.
 なお,医行為については,平成元年度に厚生科学研究「医療行為及び医療関係職種に関する法医学的研究」が行われているが,その後二十余年を経過していることから,改めて判例等を収集し,法的側面からの研究を行うよう厚労省に提案しているところである.
 今後は,看護職以外の職種の業務範囲の見直しについても議論される予定である.業務範囲の拡大のみに視点を置くことなく,チームとしての各職種の連携・協働の在り方について議論し,本来の「チーム医療の推進」に近付けていきたい.

(常任理事・藤川謙二)

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