日医ニュース
日医ニュース目次 第1243号(平成25年6月20日)

子育て支援フォーラムin石川
「子育ての応援とゼロ歳児からの虐待防止を目指して」をテーマに

子育て支援フォーラムin石川/「子育ての応援とゼロ歳児からの虐待防止を目指して」をテーマに(写真) 「子育て支援フォーラムin石川」が六月一日,日医,SBI子ども希望財団,石川県医師会の共催により,金沢市内で開催された.
 本フォーラムは,子育て支援と児童虐待防止に向けた啓発活動,情報提供を行うことを目的として開催しているものであり,今年度は,石川県を皮切りに計四カ所で開催することが予定されている.
 フォーラムは,洞庭賢一石川県医理事の司会で開会.冒頭あいさつした横倉義武会長(今村定臣常任理事代読)は,「児童虐待を防止するためには,種々ある相談機関の連携を含め,妊娠等についての悩み,子育てについての悩み等を抱える人々が相談しやすい体制を整備する必要がある」として,国の強力な支援と地方自治体の更なる積極的関与を求めた.
 続いて,あいさつした近藤邦夫石川県医会長は,「国の宝である子どもたちを守るためにも,社会問題化している児童虐待の解決策を,本フォーラムを通じて皆で考えていきたい」と述べた.

児童虐待の防止策について活発に討議

 その後は,今村常任理事を座長として,神谷直樹日本産婦人科医会常務理事による基調講演が行われた.同常務理事は,児童虐待防止法の改正等の経緯を説明した上で,法整備等が進められているにもかかわらず,児童虐待の数が減っていない現状に危機感を表明.問題解決のためには,各相談機関が相互に連携して適切な対応を行えるようにするとともに,社会的養護による支援制度について,各相談機関に周知し,必要とする人への的確な情報提供と活用を図ることが重要になるとした.
 また,『妊娠等について悩まれている方のための相談援助事業連携マニュアル』の作成等,日本産婦人科医会の活動にも触れ,今後も妊娠等で悩んでいる妊産褥婦を一人でも多く救えるよう努力していく意向を示した.
 引き続き行われたシンポジウム(座長:浮田俊彦石川県医副会長)では,加賀美尤祥前全国児童養護施設協議会長が,児童虐待をなくすためには,全ての子どもの福祉・教育・医療・司法機関等を新たな社会的養育システムとして再構築するとともに,虐待の世代間伝達を防止することが不可欠だと強調.そのために必要なこととして,「国家百年の大計に立った次世代育成のための財政投下」や「子ども関連法制度の抜本的な改革」等を挙げた.
 西澤哲山梨県立大学教授は,わが国では虐待死が事故死として処理されるケースが多く,虐待死の数を正確につかむことが出来ていないと指摘.また,虐待増加の一因に,「妊娠先行結婚」(いわゆる“できちゃった結婚”)の増加を挙げ,その場合には,母子家庭になる傾向が強く,その人たちに対する経済的な支援が今後は重要になるとした.
 朝本明弘金沢聖霊総合病院副院長は,石川県内の児童虐待防止システムとして,石川県要保護児童対策協議会を紹介.今後の解決すべき課題として,(1)情報がうまく上がってこない(2)児童虐待を通告することへのためらいが医療機関にある─等を挙げた.また,産科の医療機関が出来ることとして,「ハイリスク妊産褥婦に対し,妊娠・産褥期間を通じて支援機関と迅速な連携の下に支援を行うこと」「母児間の愛着を促進する援助」などがあるとして,積極的な関与を求めた.
 多賀千之芳珠記念病院副院長は,今の親には母親らしさ,父親らしさというものが希薄化しており,そのことが児童虐待増加の要因となっていると分析.母親には,母乳育児の推進等,母性を誘導する方策がとられているが,父親には全く行われていないとして,自身が行っている「お母さんのためのお父さん作り教室」や「お父さんのための子育て出張講演会」等の取り組みを紹介した.
 当日は,加賀百万石まつりが開催されていたにもかかわらず,会場には約百名の参加者が集まり,活発な質疑応答の後,盛会裏にフォーラムは終了となった.

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