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第1244号(平成25年7月5日) |
「遥かなる甲子園」
この作品は,風しん流行の時,話題となるマンガだ.
戸部良也氏のノンフィクション『青春の記録 遥かなる甲子園 聴こえぬ球音に賭けた十六人』を原作として,山本おさむ氏が描いたものだ.
一九六五年の沖縄風しん大流行で生まれた,四百八名の先天性風しん症候群(CRS)の生徒のため,一九七八〜八三年の六年間限定で設置された北城(きたしろ)ろう学校の野球部員達が甲子園出場を目指す物語で,作品はドラマ化,映画化,劇化されている.
一九六四年,アメリカ本土で風しん流行があり,二万人のCRS児が誕生した.
当時,アメリカ占領下だった沖縄では,米本国の流行を引き継ぎ,翌年に風しん大流行が起きた.
妊娠中の風しん罹患(りかん)とCRS児出生の関係は知られていたが,実態把握は不十分だった.
調査は,九州大学小児科・植田浩司先生を中心とした,九大CRSチームによって行われた.
植田先生は,日本政府がこの流行と関係なく派遣した沖縄学童健診団の一員として,六十六年に来沖された.那覇で,小児科・故吉田春子先生から,前年の風しん大流行と多数のCRS児の情報を聞かれ,調査が始まった.
この結果の医療分野への貢献は多大だった.また,患児の教育・福祉にも影響を与え,聴覚障害児の多発に対応した学校設立にも寄与した.
今回の風しん流行は,現在も続いており,予断を許さない状態である.
更に,ワクチン接種の重要性を啓発し,一日も早い流行収束のために努力していきたい.
(和)
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