日医ニュース
日医ニュース目次 第1245号(平成25年7月20日)

勤務医のひろば

細分化された高度医療の問題点
日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野教授 弦間昭彦

 医療は,臓器別に専門化するにとどまらず,一層深く高度化が進んでいる.その結果,「細分化した領域のみしか診ない医師」も増加してきている.と言うよりも,「その領域のみしか診られない医師」と表現するべきかも知れない.
 高度化した医療を担う際,その細分化は仕方のないものではあるが,そのレベルでの専門家は,本来,少数で事足りるはずである.細分化された分野だけを担う医師が大きな割合を占めれば,医師は何人いても足りない状況となる.近年進んでいる地域格差とともに,医療崩壊の一因となっていると思われる.
 医師が不足した状況では,common diseaseの医師は何としても必要で,消化器内視鏡や心臓カテーテルなどの検査や手技だけを行う医師でも病院は必要とせざるを得ないことになる.これは,病棟を担い,患者を全人的に診ている若手医師に良い影響を与えず,卒後教育に携わる上で,この流れに対する対応には苦慮する.
 やはり,命をしっかりと支える医師の役割は高く評価されるべきであり,病院,医育機関のみならず,社会がしっかりと戦略的に考えていくべきであると考える.
 このような極端な細分化ではなく,臓器別専門化のレベルにおいても,その長短を,社会,あるいは,患者は十分に意識するべきである.臓器別専門家が患者を全人的に診ることに適しているか否かは疑問がある.
 身体を総合的な視野で診ることが重要な場合と,専門家の深い疾病に対する知識や判断力が望まれる場合とを患者は意識して医師を選択するべきであるし,医師も十分に意識して,診療に当たるべきである.

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