日医ニュース
日医ニュース目次 第1249号(平成25年9月20日)

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勤務医座談会(第1回)7月12日開催
「勤務医の組織率向上に向けた具体的方策」をテーマに

 日医の勤務医委員会では,七月十二日,「勤務医の組織率向上に向けた具体的方策」をテーマに座談会を開催した.今後,三回にわたって掲載する.

前列左から,江崎,小森,泉,梅邑
後列左から,杉山,長沼,土岐の各氏

 泉(司会)日医に対する批判的なご意見等も含めて,自由闊達(かったつ)にお話しして頂ければと思います.
 小森 大学を卒業後,医局で十年余り勤務医をしていました.本日は,皆さんの忌憚(きたん)のないご意見をお聞かせ下さい.

医師会に対する印象

  医師会に対する印象についてお聞かせ下さい.
 土岐 私が率直に思っているのは,医師会はどこを見て,どういう仕事をしているのか,それがよく見えてこない.自分たちの組織を守ることに汲々(きゅうきゅう)としているようで,どうも内向きに見えるのです.
 医師会の方は,多くの勤務医に会員になって欲しいと思っているのかも知れませんが,勤務医の方は,勤務医のための活動を何かしてくれない限り,医師会には期待出来ないと思っている.そこで平行線というか,いつまでたっても堂々巡りをしているような印象を受けます.
 長沼 昨年度の勤務医委員会臨床研修医部会に委員として呼んで頂きましたが,非常に活発に意見が交わされて,建設的な意見や,個人的な意見も発言することが出来ました.それでも,自分が医師会に入会したいというようなメリットは,見出せていないというのが正直なところです.やはり何かメリットがなければ,会費を払ってまで入りたいといったモチベーションが起きてこないのではないかと思います.また,医師会に入るメリットを見出せているような若手の研修医は,そう多くはないのではないかと思います.
 杉山 卒業してからまだ間もないので,医師会を身近に感じることはあまりなく,正直,何をしている組織なのかよく分からないという印象を持っています.
 私は研修医の時に出産して,子育てをしながら働いていますので,やはり女性医師支援に興味があります.そういったことに対して医師会が何かサポートをしているのか,あるいは,医師会が勤務医に何かをしてくれる組織なのかということについて,詳しいことがよく分からないという印象を持っていますので,これから医師会のことを知りたいと思っています.
 江崎 以前は医師会のことをほとんど知りませんでしたが,数年前から粕屋医師会(福岡県)の理事をしており,現在は医師会活動の意義を実感しています.
 勤務医にとって,医師会に入ることのメリットというのは,確かに分かりづらいとは思うのですが,特に医療事故などについて全面的にバックアップ出来るようになれば,大きなメリットになるのではないかという気がします.
 また,勤務医にとっても,地域住民にとっても,一番の目標は地域医療の充実ではないかと考えていますので,その大きな担い手である医師会と一緒に活動をすることは,かなり重要なことだろうと思います.
 梅邑 私も日医に入るメリットは,今まで感じたことがありませんでした.医療事故に対する補償は病院で入っているので,それに関してもメリットを感じることはありません.
 今回この場に呼んで頂くに当たって,同僚に医師会について聞いてみたところ,「開業医のための集団」という印象をもっているようですし,私もそう思っていました.
 私は岩手県医師会の女性部会の幹事を務めていますが,日医がもっと踏み込んだ女性医師支援をして頂けるところであればいいと願っています.

勤務医は医師会に何を求めるのか

  「勤務医は医師会に何を求めるのか」ということについてご発言下さい.
 梅邑 個人の力ではどうにもならないことを集団の声として上げて,それが実現するということがあれば,勤務医が医師会に入会するきっかけになると思います.そのためにも,各勤務医の意見・要望が取り上げられやすくなるような仕組みが必要です.
 また,女性医師支援センターの資料を見させて頂いたところ,病児保育や院内保育所は広められてきたのですが,それ以上のこと,例えば学童保育はどうなっているのかということは,不透明だと思いました.学童の支援というと,一つの政策になりますので,それが実現すれば,声を出した意味や活動をしている意味があると思います.
 江崎 私は現在,医師会活動や病院業務の中で,特に医療安全や地域医療に取り組んでいます.最近は地域医療においても,今後の超高齢社会に向けて,在宅医療に必要な病院の情報を地域に発信していけるよう,いろいろな工夫を行っています.そういったことを郡市区等医師会,あるいは県の医師会と一緒に進めていきたいと思っています.
 杉山 女性医師支援活動に対するサポートを医師会もされているとは思うのですが,それが私ぐらいの若い医師には伝わってこないので,どういったサポートを行っているのかを知りたいということがあります.
 同級生と話をしていても,いつ出産するのかとか,出産した後,どういう形で仕事を続けていくかということがよく話題に上ります.私の学年だと,医学生の約半数が女性です.女性医師が増えていく中で,病院の保育所のことや,病児保育,長時間保育,学童保育のことなど,女性医師の勤務環境には非常に問題が多いと思っています.
 私の場合,個人対病院で話し合いをして,その都度,働き方を決めてきましたが,一対一の交渉をしなくても済むような,女性医師の支援対策が必要だと思います.今の状況は,何か核のようなものが足りないと感じています.
 そういったことも含めて,若い世代の女性医師が更に活躍出来るような医療現場にするための,具体的なサポートが必要だと思います.
 長沼 勤務医の立場からすると,いかに効率よく,負担が少なく,いい仕事が出来るかということを求めています.私たちが職業として独占している権利の中で,医師ではなくても出来る仕事を,看護師,薬剤師といった他職種に譲り渡していくような活動を,勤務医は医師会に求めているのではないかと思います.
 土岐 診療報酬の改定により外科系の高難度手術に対しての点数が大幅に上がり,病院収益が上がったにもかかわらず,外科医の労働環境改善の効果としてはあまり表れていないという調査報告書がありました.こうしたことからも,医師会に要望したいことが三点あります.
 まず,賃金のアップや過重労働を減らすなど,勤務医の就労環境改善のための具体的なアクションを起こして欲しいと思うのが一つ.
 また,私自身も医師会に入る前は,医師会の勤務医に対する活動を全然知りませんでした.従って,医師会の活動を一般の人に知ってもらうために,優秀なスポークスマンを持つべきだと思うのが二つ目です.
 もう一つは,行政に代わって医師会が五年後,十年後を見据えて医療政策を企画・立案して,それを国政の場に届ける姿勢です.医師会には,職業人としてのプロフェッショナリズムを強く発揮して頂きたいと思います.

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