日医ニュース
日医ニュース目次 第1250号(平成25年10月5日)

日医・米国研究製薬工業協会共催シンポジウムを初開催
日本の医療制度を共に維持・発展させていくことを確認

日医・米国研究製薬工業協会共催シンポジウムを初開催/日本の医療制度を共に維持・発展させていくことを確認(写真) 日医・米国研究製薬工業協会(PhRMA)共催シンポジウムが九月十九日,都内で開催された.
 本シンポジウムは,国民への医療提供体制の充実を目指すための協力関係を再確認し,健康増進・健康長寿の実現に貢献していく契機とすることを目的として行われたものである.
 冒頭,横倉義武会長は,開会の辞の中で,世界に冠たる国民皆保険の堅持を主軸とし,国民の視点に立って,真に国民に求められる医療提供体制の構築に向けて努力していく意向を示した上で,PhRMAに対しては,その実現に向けて共に努力していくことを要請.今回のシンポジウムに関しては,「初の共同事業であり,この成果が国民のため将来の医療の充実と向上に確実につながっていくことを期待したい」と述べた.
 第一部「医師の生涯教育(CME)のあり方を考える」では,小森貴常任理事が,「日本の現状と課題」について,専門的な教育を受けた後に開業し,診療に携わっていることが国民に質の高い医療を公平・平等にしかも比較的安価に提供出来ている要因であり,それが日本の特長でもあると説明.その上で,一九八七年に発足した日医の生涯教育制度の変遷や内容について解説し,新たな専門医制度においては,資質を涵養する全ての医師が備えるべきものとして,この制度の活用を提言しているとした.
 チェスター・デェイビスJr.PhRMA上級副会長は,米国の生涯教育について,医師免許の更新を要件としている州もある等,運営の仕方は異なるが,最新の医療を患者に提供するために行うという考えは日本と共通していると指摘.昨今の問題点としては,利益相反の問題により,製薬企業からの財政的な支援が減少し,高いレベルを保つことが難しくなっていることを挙げ,その改善の必要性を訴えた.
 第二部「最近の動向に関する話題提供」では,スコット・A・ラガンガPhRMA広報・提携開発担当が,偽造医薬品に対するグローバルな取り組みについて説明.偽造医薬品の問題は,先進国,途上国の区別なく,世界的な問題となっており,特にインド・中国では深刻であるとした.また,問題解決に向けた課題として,「偽造医薬品に対する定義が各国で違うこと」「国家間の協力・調整の欠如」を挙げるとともに,医師の積極的な関与を要請した.

日本の医療に悪影響を及ぼすことはしない─PhRMA

 その後には,石井正三常任理事,アイラ・ラルフPhRMA日本代表を座長としたパネルディスカッション「国民皆保険を維持・推進するために」が行われた.
 その中では,「患者との情報共有」「財政的に維持可能な医療制度とするための施策」「TPP・混合診療」等の問題に関して,活発な討議がなされた.
 特に,「TPP・混合診療」については,PhRMA側から国民皆保険など,日本のすばらしい医療制度に悪影響を及ぼすような行動はとらないとの考えが示された他,「TPPで関心があるのは,知的財産所有権の問題で,これは日本のメーカーとも共通の関心事のはずだ.逆に,日本の最先端の医療を各国に示す良い機会と考えるべきでは」との意見も出された.
 最後に羽生田俊副会長が,医療は医師と患者の信頼関係の下に成り立っており,今後もその維持・育成に努めていく考えを示し,シンポジウムは終了となった.
 その後,横倉会長,石井常任理事,アイラ・ラルフPhRMA日本代表,チェスター・デェイビスJr.PhRMA上級副会長,スコット・A・ラガンガPhRMA広報・提携開発担当がそろって出席し,石川広己常任理事の司会の下,記者会見が行われた.
 その中で,横倉会長は,「われわれは,TPPによってわが国の国民皆保険が壊されるのではないかとの懸念を持っているが,その心配は本日のシンポジウムで少し解消出来た気がする」と述べ,シンポジウムの成果を強調した.

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