日医ニュース
日医ニュース目次 第1252号(平成25年11月5日)

日本医師会市民公開フォーラム
アレルギー疾患の治療には正しい情報を得ることが重要

日本医師会市民公開フォーラム/アレルギー疾患の治療には正しい情報を得ることが重要(写真) 日本医師会市民公開フォーラムが十月五日,「『注目されるアレルギー最新情報』〜食べ物によるもの ぜんそく アトピー」をテーマに,日医会館大講堂で開催された(参加者:四百八十九名).
 道永麻里常任理事の総合司会で開会.冒頭,あいさつを行った横倉義武会長は,アレルギー疾患は「自己管理可能な疾患」であるが,そのためには,患者や家族が必要かつ正しい医療情報を得て,かかりつけ医など身近な医療関係者の支援の下,適切な治療を受けることが重要になると指摘.
 その上で,昨年十二月に食物アレルギーを持った児童が給食後に死亡した事故に触れ,「教育現場では,職員を対象とした研修や緊急時の対応マニュアルが作成される等の取り組みが行われているが,日本のアレルギー疾患対策はいまだに多くの課題が残されている」とし,今後は,アレルギー疾患に関する予防法及び根治的治療法を確立するため,国,地方公共団体及び関係団体等と連携し,その推進に努めていく考えを示した.
 続いて,江藤隆史東京逓信病院院長補佐・皮膚科部長,海老澤元宏国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部長,西牟田敏之国立病院機構下志津病院名誉院長の三人によるパネルディスカッションが行われた.

症状に合ったステロイド外用薬でしっかりしたケアを

 江藤氏は,まず,アトピー性皮膚炎の治療方針として,三本の柱((1)薬物療法(2)スキンケア(3)悪化因子への対策)を挙げ,中でも,薬物療法のステロイド外用薬を長期間使用することについては,「皮膚が黒くなり,厚ぼったくなる」といった誤った認識が,患者だけでなく,医師や看護師,薬剤師にもあると指摘.「ステロイド外用薬にそのような作用は全くない」との見解を示す一方,激しい炎症に対してステロイド外用薬が不十分な場合には,弱い炎症が長期間蔓延し,皮膚が変色することもあるとして注意を呼び掛けた.
 また,ステロイド外用薬の適正な塗り方として,手のひら二つ分の炎症箇所面積に対して,手指の第一関節分の軟膏剤,クリーム剤(約〇・五グラム)及びローションであれば手のひらに一円玉大(〇・五グラム)を目安とする,「Finger-tip Unit(フィンガーティップ ユニット)」を紹介.まずは炎症を抑え,皮膚の状態を良くするきっかけをつくるためにも,症状に合ったステロイド外用薬の適正な使用が必要だとした.

喘息症状をコントロールするには

 西牟田氏は,喘息治療の現状について,ガイドライン等で重症度に応じて吸入ステロイド薬やロイコトリエン受容体拮抗体薬等の長期管理薬を用いることが提唱されて以降,喘息による死亡や発作入院は著しく減少し,患者や家族のQOLは改善されていると説明.喘息の治療法で大切なことは,発作を起こさないよう喘息症状をコントロールし,日常生活に支障がない状態を維持することであると強調した.
 その上で,喘息症状のコントロールには,(一)薬物療法,(二)環境整備,(三)体力づくり─の三点が重要であり,長期管理薬の使用や原因物質の回避を基本に,運動誘発喘息の少ない水泳などの運動や部活動等への積極的な参加を推奨するとともに,「症状が落ち着いているからといった,自己判断による長期管理薬の減量,中止は,難治化の原因にもなり得る」として,患者や家族が医療機関と情報を共有し,医師の管理下で喘息治療を行うことを求めた.

アレルギー対策はガイドラインに基づく全国統一での対応の推進が必要

 海老澤氏は,アナフィラキシーの原因として最も多いのが食物アレルギーであるとし,アレルギー症状を起こしやすい食品として,鶏卵,牛乳,小麦,えび・かに,そば,ピーナッツ等を挙げ,何が原因食品かをきちんと把握し,必要最小限の除去にとどめることが必要だとした.
 その対処法については,経口免疫療法やエピペン(アドレナリン自己注射)を紹介.
 経口免疫療法は,「専門的な施設で行われており,現在は研究段階であること」エピペンについては,「使い方とタイミングを理解すれば誰でも簡単に使え,医療機関へ行く前の自己防衛として,非常に有効な手段であること」を説明した上で,食物アレルギーを持った児童が給食後に死亡した事故について言及.今後,アレルギーを持つ児が安心して安全な生活を送れるよう,保育所,幼稚園,学校でのアレルギー対応に関しては,ガイドラインに基づく全国統一での対応の推進が求められるとするとともに,患者や保護者に対し,「誤った情報に惑わされないよう,情報は,厚生労働省や文部科学省,日医,各アレルギー学会等きちんとした組織から得て欲しい」と述べた.
 最後に,事前に寄せられた質問に対し,三人のパネリストから回答が行われ,フォーラムは終了した.

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