日医ニュース
日医ニュース目次 第1260号(平成26年3月5日)

中央社会保険医療協議会総会(2月12日)
平成26年度診療報酬改定に関する答申まとまる/外来の機能分化の更なる推進を目指し主治医(かかりつけ医)機能の評価を導入

 中医協総会が2月12日,厚生労働省で開催され,平成26年度診療報酬改定に関する答申が森田朗中医協会長(学習院大学法学部教授)から田村憲久厚労大臣(代理:赤石清美厚労政務官)に提出された.
 これを受けて,日医では,同日に,日本歯科医師会,日本薬剤師会,四病院団体協議会と共に,相次いで記者会見を行い,今回の改定に対する日医の考えを説明した.

中央社会保険医療協議会総会(2月12日)/平成26年度診療報酬改定に関する答申まとまる/外来の機能分化の更なる推進を目指し主治医(かかりつけ医)機能の評価を導入(写真) 中医協では,昨年末に政府が改定率を決定して以降,社会保障審議会医療部会及び医療保険部会が取りまとめた「平成二十六年度診療報酬改定の基本方針」に従って,個別改定項目に関する議論を行ってきた.
 二月十二日の総会では,厚労省事務局からこれまでの議論を踏まえた具体的な点数を盛り込んだ答申案が示され,診療・支払両側がこれを了承.答申書には,「初再診料,時間外対応加算等について,歯科を含めて,引き続き検討すること」等,十五項目からなる附帯意見が付けられることになった.
 答申取りまとめを受けて,診療側を代表して意見を述べた鈴木邦彦常任理事は,「地域の中小病院,診療所への評価の充実が行われ,超高齢社会への対応で最重要課題となる地域包括ケアシステムの確立に向け,意義のある改定が出来たと考えている」とした上で,改定項目の中には,医療現場に大きな影響を与えるものも含まれており,その影響を十分に検証し,適切な対応をすることが必要だと指摘した.
 今回の改定の特徴としては,(一)七対一入院基本料の算定要件の見直しを行ったこと,(二)地域包括ケアシステムを支える病棟等の評価の新設,(三)主治医機能の評価として,地域医療包括診療料(千五百三点,月一回),地域包括診療加算(一回につき二十点)の創設,(四)複数の機能を担う有床診療所の評価の見直し,(五)消費税率引き上げへの対応を行ったこと─等が挙げられる.
 議論の中で最後まで問題となったのは,(五)の消費税率引き上げへの対応であった.
 公平で,検証もしやすいことから,厚労省事務局が示した,ほぼ全ての基本診療料に上乗せして対応するとの案に賛意を示した診療側に対して,支払側は強く反発.最終的には公益委員の裁定に委ね,当初の案どおり,基本診療料を中心に上乗せを行い,個別項目については,基本診療料との関係上,上乗せしなければ不合理になると思われる項目等(「外来リハビリテーション診療料」「外来放射線照射診療料」「在宅患者訪問診療料」)に補完的に上乗せすることとなった.
 なお,日医では,答申取りまとめを受けて,改定概要を説明し,その内容を伝達することを目的として,都道府県医師会社会保険担当理事連絡協議会を三月五日に開催することにしている(次号で詳報予定).

三師会合同記者会見
 少ない財源の中でメリハリの利いた 改定と評価─横倉会長

中央社会保険医療協議会総会(2月12日)/平成26年度診療報酬改定に関する答申まとまる/外来の機能分化の更なる推進を目指し主治医(かかりつけ医)機能の評価を導入(写真) 三師会合同記者会見には,横倉義武会長,大久保満男日歯会長,土屋文人日薬副会長始め,中医協委員である,中川俊男副会長,鈴木常任理事,堀憲郎日歯常務理事,三浦洋嗣日薬副会長が出席した.
 横倉会長は,初めに,「中医協委員の真摯(しんし)なご議論に御礼申し上げる」と述べた上で,平成二十六年度診療報酬改定については,厳しい財政状況の中で,国民との約束である社会保障・税一体改革に基づき,その第一歩を踏み出したものと考えていると説明.具体的には,在宅医療における不適切事例の適正化を図ったこと,七対一看護基準の見直しに伴う急性期後の受け皿づくりの整備のため,かかりつけ医機能,有床診療所,在宅医療への手当等,地域に密着して医療を提供したことに対する適切な評価がなされたことなどを挙げ,「少ない財源の中でもメリハリの利いた診療報酬改定になった」として,これを評価した.
 消費税率八%への引き上げに伴う対応として,医療機関等に負担が生じないように医療費総額の一・三六%の補填(ほてん)が行われたことに関しては,「従前の個別診療項目へ配分する方法が不公平であったこと」及び「一〇%引き上げ時までの一年半の対応であること」を踏まえれば,今回の措置(初診料十二点,再診料三点と基本診療料を中心に配分)は,より公平かつ出来る限りシンプルな対応であり,妥当との考えを明示.その一方で,患者・国民・保険者の消費税負担が目に見えない形で生じている現行制度については見直しが必要であり,患者負担を増やすことなく,税制による抜本的な解決を要望するとした.
 同会長は,また,団塊の世代が七十五歳に達する二〇二五年までの十一年という短い期間に,持続可能な社会保障制度となるよう,必要な改革,特に地域包括ケアを推進していかなければならず,改革に今,必要なのは「ビジョンと実行」であると強調.具体的には,医療機関の自主選択を尊重した「医療の機能分化・機能連携の推進」を図るとともに,住み慣れた地域で最期まで安心して暮らせるよう「超高齢社会における地域包括ケア」の構築,地域医療支援センターの機能強化による医師確保と偏在の解決も重要になると指摘した.
 更に,同会長は,地域で必要な医療・介護は,都道府県が作成したビジョンに基づき実施されることから,都道府県と都道府県医師会との密接な連携が重要になるとし,この連携が円滑に進むよう,実務的な支援・指導を行う「地域包括ケア推進室」を日医内に設置し,体制を整える予定であることを明らかにした別記事参照
 その上で,横倉会長は,「医療を支える専門家集団である,日医,日歯,日薬の三団体は,相互に連携し,政府に分断されることなく,医療再興の大義の下,大同団結していく覚悟であり,地域医療の再興に向け,国民誰もが必要な医療を過不足なく受けられるよう,あるべき医療の姿の実現に向け,邁進(まいしん)していく」と述べ,理解と協力を求めた.
 引き続き,大久保日歯会長は,「三師会が一致団結し,医療再興という大義の下で協力し,国民の健康を守っていきたいという全く同じ思いで改定に臨んできた」と今回の改定を振り返った上で,「超高齢社会の中で最期まで自分の口で食べることを支えていくことが歯科医療の目的であり,国民の人口構成の変化等に応じてどのような歯科医療を提供出来るのか苦慮しながら,限りある財源の中で努力していきたい」と述べた.
 土屋日薬副会長は,今回の改定について,薬局・薬剤師のかかりつけ機能を重視し,評価する方向性が強く打ち出された内容と理解しているとした上で,今後も,安心で安全かつ適正な薬物療法の推進と医療提供体制を支えるチーム医療の一員としての立場から,医療従事者との連携を図りつつ一層努力していく所存であるとした.
 鈴木常任理事は,限られた財源の中で,二〇二五年に向けた地域包括ケアの確立という改革の大きな目標を踏まえた改定であり,メリハリのある改定になったとした上で,「地域包括ケアの確立に必要な,地域に密着した医療の充実のために,その中心となる中小病院,有床診療所,診療所について一定の評価がされたことは良かった」との考えを示した.
 また,七対一病床の見直しに関しては,「急激な変化により現場や国民に混乱のないよう注視し,万一問題が起きるようであれば,検証して次回改定で修正していきたい」と述べた.
 その後の記者との質疑応答では,中川副会長が,最後に社会保障費二千二百億円の削減が行われた二〇〇八年度予算編成でも,薬価引き下げ財源は診療報酬本体の改定財源に使われていたことを挙げ,今回,薬価の引き下げ財源を本体改定財源から切り離したことは,極めて異例であることを改めて強調.
 今回創設された「地域包括診療料」については,日医としては外来の包括化を容認したわけではなく,“かかりつけ医の評価”への道筋をつけたものであるとの考えを示し,「その点も含め,今後は算定要件等,しっかり説明していきたい」と述べた.

日医・四病協合同記者会見
 薬価引き下げ財源の切り離しは あくまでも特例

中央社会保険医療協議会総会(2月12日)/平成26年度診療報酬改定に関する答申まとまる/外来の機能分化の更なる推進を目指し主治医(かかりつけ医)機能の評価を導入(写真) 日医・四病協合同記者会見には,日医から横倉会長,中川副会長,鈴木常任理事が,日本病院会から堺常雄会長が,全日本病院協会から猪口雄二副会長が,日本精神科病院協会からは山崎學会長,長瀬輝諠副会長が,日本医療法人協会から加納繁照会長代行が,それぞれ出席した.
 横倉会長は,「主治医(かかりつけ医)機能」や「有床診療所」への評価,「在宅医療への手当」等が行われたことは,少ない財源の中で将来の病床展望に向けての方向性が示されたものと考えているとするとともに,消費税率八%への引き上げへの対応に関しては,初・再診料を中心に基本診療料と入院基本料に補填(ほてん)されることになったことを評価する考えを示した.
 地域包括ケアの推進に関しては,「改革に向けた原資は十分ではないが,医療を担う専門家集団としては進めていかなくてはならない」と強調.新設された「医療提供体制改革のための新たな財政支援制度」については,「各都道府県で計画を策定し実施することになっており,都道府県と日医を始めとする医療関係団体との連携が円滑に進むよう,日医と四病協が今後も協力して,大同団結しながら,国民のための医療を提供する,あるべき医療の姿の実現のため邁進(まいしん)していきたい」とした.
 続いて,四病協の各団体から今回の改定に対する考えが示された.
 堺日病会長は,現実的には厳しいとの印象を示した上で,「七対一病床が削減される受け皿として,地域包括ケアを支援する病棟が創設されることになるが,各病院がこれをどう判断するか.一方,病床機能分化に向けて,どのような体制をとるのか,点数を詳細に試算して検討し,方向性を見出していく必要がある.今回の改定を受けて,現場の医師の思いにかない,地域住民の思いに応える医療をどのように提供していくことが出来るかが今後の課題」とした.
 猪口全日病副会長は,点数は決まったが,厚労省から告示や通知が出るまでは,今回の改定を評価することは危険だと指摘.特に,病床の機能分化に基づき,診療報酬改定が行われることに対しては,「地域包括ケア病棟が機能出来るかが大きな課題.七対一を維持出来る病院は数が限られると考えており,それ以外の病棟に関しての具体的な評価は,通知等の後に考えたい」とした.
 山崎日精協会長は,「今回の診療報酬改定では,精神科に関連する評価が多く加えられたが,算定要件,施設基準,患者要件等の縛りがあるため,実際には請求出来ないものが多く,これでは地域移行や精神病床の機能分化もなかなか進まないと感じている.現実的に地域移行,病床機能分化を誘導出来るような診療報酬の設定を今後考えるべき」と述べた.
 中医協委員である長瀬日精協副会長も,「精神疾患は五疾病五事業に入り,ますます地域で精神科医療を発展させなければならないが,算定要件が厳しく,地域に根差した精神科医療を行うことはなかなか難しい」とした上で,厚労省には基金等で対応することを求めたいとした.
 加納医法協会長代行は,世間では賃金のベースアップの考えが広がっているが,医療関係者のベースアップは厳しい状況にあると指摘.七対一病床の見直しについては,「七対一から外れる病院は,病院の存亡をかけた対応が必要になる」として,危機感を示した.
 また,会見では,薬価引き下げ財源が本体改定財源から切り離されたことに対して,各団体から,「今回の措置は特例であり,今後の診療報酬改定では同様の対応は認められない」との強い姿勢が示された.

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