日医ニュース
日医ニュース目次 第1264号(平成26年5月5日)

都道府県医師会地域医療ビジョン担当理事連絡協議会
医師会主導による地域医療ビジョンの策定を

都道府県医師会地域医療ビジョン担当理事連絡協議会/医師会主導による地域医療ビジョンの策定を(写真) 都道府県医師会地域医療ビジョン担当理事連絡協議会が四月十一日,日医会館小講堂で開催された.
 本協議会は,本年から始まる病床機能報告制度並びに,平成二十七年度から策定を開始する地域医療構想(以下,地域医療ビジョン)に向けて,その対応を協議するために開催されたものである.
 鈴木邦彦常任理事の司会で開会.冒頭あいさつした横倉義武会長は,「日医では,地域医療の再興を政策テーマに掲げ,かかりつけ医を中心とした切れ目のない医療・介護体制を全国で提供出来るようにすることを第一の目標としている.このたび,政府から,『地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律』が提案された.二〇二五年を目指した将来の医療提供体制の在り方を達成する手段であると考える.今回の制度改革が適切に機能するかどうかは,都道府県行政と都道府県医師会の役割が重要となる」と述べた.

「協議の場」へ医師会の積極的な参加を

 「病床機能報告制度,地域医療ビジョン」については,中川俊男副会長が,これまでの経緯と日医の考えとして,(一)病床機能報告制度,(二)病床機能区分,(三)地域医療ビジョンにおける医師会の役割─を説明した.
 (一)では,二〇一一年七月に社会保障・税一体改革成案で,病床機能の在り方が示されたことを契機に社会保障審議会医療部会で「急性期病床群(仮称)の認定制度」導入について議論が行われた(その後,「登録制」)が日医は,認定等の有る無しで診療報酬上の大きな格差がつき,地域での急性期医療の確保が難しくなるため,「認定」等の制度化に強く反発.議論の末,二〇一二年六月に,各医療機関が自主的に医療機能を選択し,都道府県に報告する仕組みとして決着したと説明.
 同副会長は,「あくまでも自主的な報告制度であり,今後も決して認定制度,登録制度に変容していかないように注視していく」とした.
 (二)では,政府が提案する医療機能区分のうち「亜急性期」について,高齢者の急性期医療を低コストに抑制することにつながりかねないとの懸念があったことから,二〇一三年八月に日医と四病院団体協議会が「医療提供体制のあり方」を発表し,病床機能区分等について合同提言を行ったと説明.
 提言の中では,医療提供体制は地域の実情に合わせて,地域性に応じた機能の見直しと整備が必要であるとした上で,病床区分を,「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」とすることなどを提案.今回の病床機能報告制度でもこの区分が採用されたとした.
 (三)では,二〇一五年度から策定する地域医療ビジョンについて,都道府県のビジョンの策定に関して,行政は「協議の場」を設置するとしており,日医の強力な主張により,医療法改正案に「診療に関する学識経験者の団体」すなわち医師会が「協議の場」に加わることを明記させたと解説.
 同副会長は,各都道府県医師会に早々に行政との協議を開始し,医師会主導で地域医療ビジョンを策定して欲しいとした.また,仮に,「協議の場」で協議が整わない場合であっても,都道府県知事が措置を講じる場合は,「医療審議会」の意見を聞くとしていることから,同審議会への積極的な関与も要請した.

都道府県知事が講ずることが出来る措置

 土生栄二厚生労働省医政局総務課長は,「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」について,医療提供体制の改革に関する議論の経緯や医療部会等の議論の経過を報告した.
 平成二十七年度から行われる地域医療ビジョンの策定に向けて,国は,都道府県の地域医療ビジョン策定のためのガイドラインを作成することなどを説明.また,都道府県知事が講ずることが出来る措置としては,(1)病院の新規開設・増床への対応(2)既存医療機関による医療機能の転換への対応(3)稼働していない病床の削減の要請─があるとした他,要請または命令・指示に従わない場合には,「医療機関名の公表」「各種補助金の交付対象や福祉医療機構の融資対象からの除外」「地域医療支援病院・特定機能病院の不承認・承認の取消し」なども講ずることが出来るとした.

ガイドラインはあくまで参考

 質疑応答では,国が策定する「地域医療ビジョン策定のためのガイドライン」の拘束力や都道府県知事の裁量の範囲について,多数の質問が寄せられた.
 厚労省が,ガイドラインの拘束力について,「通知と同様に拘束力はないが,都道府県に強い拘束力が生じると認識している」と発言したことに対して,中川副会長は,「『ガイドラインはあくまで参考である』と冒頭に書いてもらう.それがなければ,『協議の場』を設ける意味がない」として,地域の特色を生かした地域医療ビジョンが策定出来るように働き掛けるとした.
 更に,「医療機関が都道府県知事の要請または命令・指示に従わない場合の措置」を講じる場合について,同副会長は,「都道府県医師会も参画して適切に運営された『協議の場』での協議や結論を無視するような悪質なケースに限られるということを確認している.法律には,地域密着で頑張っている地元の医師が,知事に命令されて強制的に排除されるようなことは想定しないようになっている」と回答.
 その後も活発な議論が行われ,協議会は閉会した.

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