日医ニュース
日医ニュース目次 第1268号(平成26年7月5日)

「子育て支援フォーラムin青森」を開催
子育て応援とゼロ歳児からの虐待防止を目指して

「子育て支援フォーラムin青森」を開催/子育て応援とゼロ歳児からの虐待防止を目指して(写真) 「子育て支援フォーラムin青森」が六月二十一日,日医,SBI子ども希望財団,青森県医師会の共催により,青森市内で開催された.
 本フォーラムは,子育て支援と児童虐待防止に向けた啓発活動,情報提供を行うことを目的として,平成二十三年度から開催しているものである.
 フォーラムは,村上壽治青森県医副会長の司会で開会.冒頭あいさつした横倉義武会長(今村定臣常任理事代読)は,児童相談所における児童虐待の相談対応件数が直近の平成二十四年度には,六万六千七百一件と,調査を開始した平成二年度に比べて六十倍以上に増加している現状を憂慮.その解決に向けた協力を求めるとともに,本フォーラムが地域で児童虐待の問題を考える一助となることに期待感を示した.
 続いて,あいさつした齊藤勝青森県医会長は,二年連続して最多の水準にある青森県の児童虐待の状況を説明した上で,この問題を解決するためには,社会全体で取り組む必要があると訴えた.

新生児からの養子・里親制度は子ども・妊婦両方にメリット─中村理事長

 その後は,今村常任理事を座長として,中村淳一岡山県ベビー救済協会理事長による基調講演が行われた.同理事長は,平成四年から二十二年間にわたって,望まない妊娠で出生した新生児三百八十五名(平成二十六年三月現在)を「特別養子制度」を利用して実母から養親に世話してきた経験を基に,(1)実母の年齢は十代が多い(2)実母の来所理由は未婚が五五%と半数以上にのぼる(3)日本人は外国人に比べて,養子に真実を告知したがらない養親が多い─ことなどを説明.その上で,新生児期からの養子・里親制度については,子どもの精神発達の面からも好影響であると同時に,妊婦にとっても,出産直後からの育児に対す不安が減少し,新生児虐待の減少も期待出来るなどの利点があることを強調し,「今後も養親,養子が共に感謝の気持ちで満たされるよう,協会の活動を続けていきたい」とした.

虐待から子ども達を守るためのさまざまな方策について4つの講演

 引き続き行われたシンポジウム(座長:苫米地怜青森県医常任理事,工藤協志青森県小児科医会長)では,まず,佐藤秀平青森労災病院産婦人科部長が青森県独自の取り組みとして,「青森県妊婦連絡票」や「青森県妊産婦要指導連絡票」を用いて,医療機関,保健行政機関との情報共有を図っていること等を報告.出産並びに出産後の安全な母子関係を維持するためには,医療機関の介入だけではなく,行政機関による介入(可能な限り一対一による継続的なサポート)は不可欠だとした.
 相澤仁国立武蔵野学院長は,わが国の里親制度について,里親等への委託率は上昇傾向にあるが,諸外国に比べると低い水準にあることを説明.里親制度を推進していくための課題としては,(1)制度の社会的認知度が低い(2)里親委託に対する実親の同意を得ることが困難(3)子どもが抱える問題が複雑化している─こと等があるとするとともに,今後は,里親・ファミリーホームの職業化,里親を校区単位で配置すること等も必要になるのではないかと述べた.
 會田久美子青森県立中央病院小児科副部長は,自身の診療経験を基に,心身症やいじめ等,子どもの問題行動の根底には「自己肯定感」(自分は生きている意味がある,存在価値がある,大切な存在だという感覚)の低さがあると分析.「自己肯定感」を育むために必要なこととして,「甘えさせる」「話を聞き,共感する」「子どもをまるごとほめる」を挙げるとともに,その方法を具体的に説明し,理解とその実践を求めた.
 加賀美尤祥社会福祉法人山梨立正光生園理事長は,少子高齢化が進行する中で,関係性の障害から社会的な自立が困難な子どもが増加しており,この子ども達にどう対応していくかが大きな課題になっていると指摘.その解決策として,全ての子ども福祉・教育・医療・司法機関等を統合した形で新たな社会的養育システムを構築することを提案し,その実現のためにも「子ども・家庭基本法」の制定を提言したいとした.
 シンポジウムの最後には,オブザーバーとして参加した川鍋慎一厚生労働省雇用均等・児童家庭局虐待防止対策室長,稜賢治家庭福祉課課長補佐も発言.川鍋室長は,平成十六年度から開始した,児童虐待で亡くなった子ども達の検証事業によって,母子保健サービスが児童虐待の抑止に大きな力を持っていることが明らかになったとし,今後はそのサービスの充実にしっかりと取り組んでいく考えを示した.
 その後は,四人のシンポジストによる討議並びに出席者との間で活発な質疑応答が行われ,シンポジウムは終了となった.
 なお,日医では,今年度,同様のフォーラムを兵庫県など三カ所で開催することを予定している.本紙で案内を順次掲載していくので,ぜひ参加されたい.

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