日医ニュース
日医ニュース目次 第1281号(平成27年1月20日)

勤務医のページ

勤務医が医師会で行動するには

富山市病院事業管理者/日本医師会勤務医委員会委員長 泉 良平

医師会と勤務医

 医師不足への対応として医学生を増やしてきたことで,毎年八千人を超える医師が誕生している.しかし,日医の会員数には大きな変化はなく,地域医師会を含めても新しい医師の多くが医師会に加入しない.
 医師会が声高に医療の問題を訴えても,多くの医師は冷ややかな目で無視する.また,勤務医が意見を表現したいと思っても,具体にだれがその役目を果たすことになるのか.Silent majorityとして沈黙する多くの勤務医の意見を,どのように効果的に集約できるのか.
 医師会は多くの医師の貢献に支えられている.自らの時間を削り,医師の権利を守るために活動しているにもかかわらず,なぜ,勤務医は医師会に興味を持たないのか.もし,医師会の意思決定に勤務医が主体的に加われるならば,勤務医は医師会活動に興味を覚えるはずである.
 診療報酬改定,医療事故調査制度,地域医療構想の策定などに,行政のカウンターパートナーとして医師会がかかわっている.医師会に勤務医の意見を盛り込むことによってこそ,医療現場の意見を集約できることになる.

激変する医療現場と勤務医支援策

 今回の診療報酬改定では,急性期病院(七対一看護体制)への圧力が増し,より重症度の高い患者の受け入れや更なる平均在院日数の短縮,自宅などへの復帰率の引き上げなどが求められる一方,勤務医の負担軽減策の強化が大きな要点として挙げられる.診療機能の強化は,病院スタッフを疲弊させる.
 平均在院日数短縮により入院患者の回転が速くなることで,勤務医は検査や手術,処置に十分な時間をとることが許されなくなり,また患者への説明などに難渋することにもなる.多くの勤務医が,医師の補充がない中で疲弊し,結果として病院から立ち去れば,新たな「医療崩壊」が迫ることになるのではないだろうか.
 負担軽減策は,勤務医の当直明けの手術を回避し,長時間労働を回避するには,まさに待ち望んだ加算ではある.しかし,医師不足の中で恒常的に長時間労働を余儀なくされている地方の病院では,到底この要件を満たすことが不可能なように思われる.
 一方,増えてきた医師はどこへ行ったのか.自らの使命感や倫理観を持って医師として働くことができない過酷な病院環境,勤務環境では,プロフェッションとしての矜持(きょうじ)を持つことは困難である.そして,診療負担や医療事故などのリスクの少ない診療科を選択することになりはしないか.
 医師は地域や診療科で偏在し,解消する方法として新しい専門医制度などがつくられるが,その効果のほどは現状では推測できない.言うまでもなく,医師偏在が解消されないならば,日本の医療の行き先は危うくなる.

医療事故調査制度と地域医療構想

 医療事故調査制度では『WHOドラフトガイドライン』が取り沙汰されているが,医療スタッフの個人的な糾弾がなされないことが望ましい.勤務医がこれまで経験してきた事例などは,医療事故調査制度にいかに生かされることになるのか.
 また,地域医療構想策定には,行政のカウンターパートナーとして医師会が明記されている.病院の機能分化が求められているが,実際に勤務している医師の声を具体的に医師会は聞く機会を持てるのであろうか.

地域医師会内での勤務医活動への支援

 日本の医療を大きく変更することが求められている環境で,勤務医は医師としての矜持を持って自らの意見を表すべきである.そして,勤務医の意見をどのようにすれば医師会に集約できるのか.
 まずは,地域医師会の中に,診療報酬の課題,医療事故調査制度への不安,地域医療構想の理解と勤務医の視点からの問題提起などの具体的なテーマについて,十分な時間とスタッフの協力の下で,勤務医自らが意見を集約する場を設ける.
 その意見を,医師会の各地域ブロックでの議論を基にして,更に日医に収斂(しゅうれん)し,それらをもって日医の理事会で勤務医代表の理事が意見を述べることが必要である.
 日医が全ての医師の代表となるために,勤務医の具体的な意見集約の場と組織をつくることが,今こそ必要ではないだろうか.それがかなうなら,勤務医は時間が許される限り,その議論に喜んで加わると信ずる.

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