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第1289号(平成27年5月20日) |

何も知らない経済学者

話題のトマ・ピケティの『21世紀の資本』をやっと八章まで読みました.
経済格差について論じる資格はとてもありませんが,ここまで読んで,お薦めなのは本書の「はじめに」です.以下の記述があります.
「経済学という学問分野は,まだ数学だの,純粋理論的でしばしばきわめてイデオロギー偏向を伴った憶測だのに対するガキっぽい情熱を克服できておらず,そのために歴史研究や他の社会科学との共同作業が犠牲になっている.経済学者たちはあまりにもしばしば自分たちの内輪でしか興味を持たれないようなどうでもいい数学の問題にばかり没頭している……実を言えば経済学者なんて,どんなことについてもほとんど何も知らないのが事実なのだ……」
自らの専門分野について,このように謙虚な批判ができる経済学者といえば,先日亡くなられた宇沢弘文先生が頭に浮かびます.
一方,わが国の経済学者(一部?),特にテレビや政府の審議会でエラそうな発言をする方にはピケティの爪のアカでも煎じて飲んでもらい,歴史や他の社会科学との共同作業にも目を向けてもらいたいものです.そして,自分達は医療も含め,何も知らないのだということを自覚してもらいたいものですが…….
(撥)
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