世界に冠たる国民皆保険を守るために

日頃からの健康管理と
ちょっとした心構えにより、
自身の健康を守ることができます。
今日からできることを始めてみましょう。

健康管理のために
「かかりつけ医」を
もちましょう

日本医師会では、かかりつけ医を「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介できる身近で頼りになる医師」と定義しています。
国は医療・介護が一体となって人々を支えるとの考えの下、地域包括ケアシステムの整備を進めていますが、その中心的な役割を担うのがかかりつけ医であると考えており(図6-1)、国民の皆さんにかかりつけ医をもつことを呼び掛けています。かかりつけ医の有無を調査したアンケート(※)では、「かかりつけ医がいる」と答えた人の割合は53.7%。「いないが、いるとよいと思う」と答えた人を合わせると71.5%になり、かかりつけ医への期待が大きいことがわかります。
頼りになるかかりつけ医がいれば、具合が悪くなった時に、どこの医療機関に行こうか迷わずにすみますし、住み慣れた地域で安心して暮らしていくことができます。
まずは、身近なところでかかりつけ医を見つけてみましょう。

※2014年日本医師会総合政策研究機構

かかりつけ医と地域連携のイメージ

図6-1 かかりつけ医と地域連携のイメージ

健康寿命を延ばしましょう

世界に先駆けて超高齢社会を迎えた日本。2017年の日本人の平均寿命は男女とも過去最高を更新、女性が87.14歳で世界2位、男性が81.09歳で3位でした。しかし、健康な日常生活を送ることができる「健康寿命」は2016年のデータで、女性が74.21歳、男性が71.19歳で、平均寿命との差は約9~12年もあり、その差をいかに縮めるかが課題になっています(図6-2)。
国民の皆さんには、ぜひ、健保組合や自治体から健康診断のお知らせが届いたら、きちんと受診して欲しいと思います(40歳以上にはメタボリックシンドロームを予防するための「特定健診・特定保健指導」もあります)。可能な限り予防に努めることで、生活の質を上げることができれば、持続可能な社会保障を実現できます。できることから取り組んでいきましょう。

生涯現役社会の実現、健康な高齢者の増加、若年世代からの予防・健康づくり

図6-2 健康寿命を延ばすメリット

生涯を通じた健診データ管理の
システムづくり

日本では、図に示しましたように生まれたときから毎年健診が行われていますが(図6-3)、今はまだこの健診のデータがばらばらに管理されています。
そのため、日本医師会では、これらを一元的に管理することによって、生涯を通じた健康管理を行い、健康寿命を伸ばしていくべきであると考えています。
そういった意味で、平成30年12月に成育基本法並びに循環器病対策基本法が成立した意義は大きく、これにより、妊婦から高年期までの一貫した政策が行われることが期待されます。
また、情報の管理に当たってはデータが営利企業に利用されないための法整備や安全性の確保も必要であり、国にその対応を求めています。

健康寿命を延ばすための取り組み

図6-3 健康寿命を延ばすための取り組み

民間主導の連携「日本健康会議」

2015年7月には、日本健康会議が発足しました。
経済界、日本医師会をはじめ医療関係団体、保険者などの民間組織や自治体等のリーダーが手を携え、健康寿命の延伸とともに適正な医療について実効的な活動を行うために組織された民間主導の活動体です。
自治体や企業・保険者における先進的な取り組みを横展開するため、2020年までの数値目標(KPI)を入れた「健康なまち・職場づくり宣言2020」を採択しました(図6-4)。2019年3月現在、多くの目標がクリアされた他、地域版日本健康会議の立ち上げも進められています。関係者によるさまざまな健康施策が行われていますが、日本医師会では健(検)診データの一元化による生涯を通じた健康管理とともにこの日本健康会議の取り組みを通じて健康寿命の延伸を目指しています(図6-5)。

健康なまち・職場づくり宣言2020

図6-4 健康なまち・職場づくり宣言2020

現在進められている主な健康施策等

図6-5 現在進められている主な健康施策等

糖尿病は早期発見、
重症化を予防しましょう

生活習慣病の中でも、糖尿病が疑われる人は国内で推計1,000万人を超えています。自覚症状が乏しいことから、放置していたり、治療を中断してしまうケースも少なくありません。
糖尿病は重症化すると、網膜症、腎症などの合併症を併発し、日常生活に制限がある「不健康な期間」が延びてしまいます。そのため、早期に発見、適切な治療を続けることが何よりも大切なのです。

※平成28年「国民健康・栄養調査」

「フレイル」の予防を
心がけましょう

年齢を重ねると、足腰が弱くなったり、物忘れをするようになるなど、体と心の動きが弱くなってきます。このような状態を「フレイル」(虚弱) と呼び、健康な状態から要介護に至るまでの中間的な段階と考えられています。しかし、体と心のちょっとした衰えに早めに気付き、「バランスの良い食事、筋力の低下を防ぐ運動、自分に合った社会参加」などを生活サイクルに上手に組み入れることで、フレイルの予防・改善が可能です。
フレイルには、①身体的フレイル(筋肉量の減少、骨・関節・筋肉の障害など)、②精神・心理的フレイル(精神うつ、物忘れ、軽度認知障害など)、③社会的フレイル(外出する頻度の減少、閉じこもりなど)の3つの要素があります。正しい知識を得て、主体的に健康づくりに取り組みましょう。