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【中高生の部】<優秀賞>
「やりがいのある仕事」


大山 藍(茨城県)

 私には病院は縁のないところだと思っていました。「看護」という言葉も「医療」という現場も見たことも聞いたこともないような雲の上の存在でしかありませんでした。

 そんな私が、今は看護師になるために、必死で勉強をしています。

 2年前、祖父は階段を踏みはずし2階から転げ落ち、意識をなくし緊急入院しました。脳内出血でした。健康診断でも悪いところなどひとつもなく、毎日の晩酌では豪快に笑いながら父とお酒を酌み交わす元気な68歳。それが、突然ベッドの上から動けなくなりました。

 毎日のようにお見舞いに行きましたが、祖父の元気をなくしたうつろな顔を見るのが、私には何よりつらく、そしてとても悲しくもありました。頭を打ったせいで、ろれつがまわらず、たどたどしい言葉に、もどかしく苛立(いらだ)ちをみせる祖父に、私はなんて声をかければいいのか、正直わからなくなっていました。

 お見舞いに行く足が、だんだん遠のき始めたとき、一人の看護師さんが私に声をかけてくれました。

「お見舞い、えらいわね。おじいさん、とても喜んでるわよ」

「えっ。ああ、そうですか」

 そう答えると、「何がえらいの? 何を祖父は喜んでくれているというの? 私は何もしていないし、会話も続かない。ただ、ぼんやり2人で景色を眺めたりしているだけなのに」そんな思いがこみ上げてきました。

 看護師さんは、私の不思議そうにしている様子を感じとったのか、病室での祖父の様子を聞かせてくれました。現実を受け入れられず悩んでいること、ふさぎこんでふてくされていること、そして、唯一楽しみにしているという私の面会のことを教えてくれました。夕方になると、そわそわしだして身の回りの整理を始め、来ないときの落ち込みようといったらなかったそうです。

「ドクターも私も、あなたにはかなわないわ。おじいさんの特効薬は、あなたね」

 看護師さんは、そう笑うとポンッと私の肩をたたきました。それは、ごちゃごちゃして考えがまとまらず、どうしようか悩んでいた肩の荷がすうっーとおりた瞬間でした。

 私は、祖父が枕を濡(ぬ)らした涙の跡を知っています。他人にはいえず、ずっと一人で悩んでいるのです。そんな祖父の特効薬になれるのなら、少しでも元気を出してくれるなら、なるべく病室に顔をだそうと心に決めました。

 やがて祖父の症状も落ち着き、ベッドの上の生活から家へ帰るためのリハビリを始めるようになりました。病院の先生や看護師さんたちに励まされ、祖父は3か月後、無事退院することができました。

 あのときの看護師さんに、祖父も私も支えられた3か月でした。

 医療の現場は、想像以上に忙しく、そして人の命に関わるという何より重い責任を背負っています。そんな中でも、患者やその家族へ寄り添い、親身になって看護をしてくれる看護師さんは何より力強い存在でした。弱気な時は厳しく、うれしい時は一緒に喜んでくれたり、何よりいつも前向きな明るい笑顔に励まされていました。

 私に将来の夢を与えてくれた看護師さん。あなたは、私の目標です。今、笑って祖父と散歩ができるのも、あなたのおかげです。

「きついけど、やりがいのある仕事」と笑うあなたのように、私もなりたいと思っています。