白クマ
日医白クマ通信 No.1277
2010年4月15日(木)


定例記者会見
現政権の最近の医療政策について
―中川副会長

定例記者会見


 中川俊男副会長は、4月14日の定例記者会見で、現政権は、混合診療の見直し、医療ツーリズム、外国人医師の診療等の規制改革を検討する方針を示しており、統合医療や医学部の新設にも前向きであるとして、そうした最近の主な医療政策に対する日医新執行部の見解を公表した。

 まず、昨年12月30日閣議決定された「新成長戦略(基本方針)」について触れ、医療を産業、市場と捉えているとして、小泉政権下の市場原理主義に立ち返らないよう注視したいとした。

 次に、規制改革会議の後継組織として行政刷新会議に設置された、規制・制度改革に関する分科会の、医療について検討するライフ・イノベーションWGの構成員に地域医療の専門家がいないことは問題だと指摘したうえで、ライフ・イノベーションの検討テーマについて見解を述べた。

 検討テーマの筆頭に掲げられている保険外併用療養(いわゆる「混合診療」)の在り方の見直しについては、日医は混合診療の全面解禁に断固反対と改めて主張。その理由として、新しい治療や医薬品を保険に組み入れるインセンティブが働かなくなり、公的保険で受けられる医療の範囲が縮小していくおそれがあることなどを挙げ、「新執行部は、強い闘う日本医師会を目指している。一致団結して、政府与党を含め強力な働き掛けをしていく」と強調した。

 診療看護師あるいはNP(ナースプラクティショナー)の導入に関しては、診察や治療は、人体に侵襲を及ぼす行為であるため、高度な医学的判断及び技術を担保する資格の保有者によって行われるべきであるとしたうえで、新たな資格者の導入は、支払能力によって、受けられる医療に格差がある社会をもたらしかねず、混合診療解禁の突破口になるおそれもあるとの警戒感を示した。そして、まずは、現行の保健師助産師看護師法の下で、実情に即してどのような分担ができるのかを検討すべきであり、拙速な導入は、看護職員不足に拍車をかけることにもなりかねないと改めて反対を唱えた。

 医療ツーリズムについては、日本では、足下の深刻な医師不足、看護職員不足からくる医療崩壊を食い止め、地域医療を確保することが最優先の課題であり、その後で、諸外国の「医療ツーリズム」の現状も踏まえて、慎重に検討すべきであるとして、現時点で検討に着手することは認められないとの考えを示した。

 また、外国人医師の活用についても、国内の医療崩壊、医師不足・偏在の解消が最優先であり、医師不足対策のひとつであるならば、医師不足そのものを解決すべきであると主張した。

 同副会長は、統合医療に関しても、定義について、まず医療界で議論する必要があるとしたうえで、改めて問題点を指摘し、今、あえて科学的根拠が確立していない統合医療が推進される背景には、これをきっかけに混合診療を解禁し、市場原理主義に立ち返ろうという狙いがあるのではないかとの疑念を抱かざるを得ないとした。

 さらに、医学部新設についても、具体的な問題点を指摘したうえで、改めて反対を主張。特に、地域の医師不足、医療崩壊を加速させるであろうことを強く危惧すると述べた。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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