白クマ
日医白クマ通信 No.1300
2010年7月8日(木)


定例記者会見
「新たな情報通信技術戦略工程表に対する日医の見解」
―石川常任理事

定例記者会見


 石川広己常任理事は7月7日の定例記者会見で、政府の『新たな情報通信技術戦略工程表』に対する日医の見解を表明した。

 同工程表は、「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」(本部長:内閣総理大臣)が5月11日に決定した『新たな情報通信技術戦略』の実現に向け、30項目の取り組みについて具体的に工程を示したものである。

 このうち、同常任理事は、1.国民ID制度の導入と国民による行政監視の仕組みの整備、2.「どこでもMY病院」構想の実現、3.シームレスな地域連携医療の実現、4.レセプト情報等の活用による医療の効率化、5.医療情報データベースの活用による医薬品等安全対策の推進―を取り上げ、見解を述べた。

 1.の国民IDの導入については、国家戦略室が2010年6月29日に複数の選択肢を示した「社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会 中間取りまとめ」があるが、中間的な報告であるにもかかわらず、工程表では、2014年から2020年の間に「50%以上の自治体において、条例改正を実施し、公平で利便性が高い電子政府を実現する」と明記されており、また、民間IDとの連携については「国民に対する説明もほとんどないまま唐突に出てきている」と指摘。これらを踏まえて、導入に当たっては「国民IDの利用範囲や個人情報保護の問題など国民的議論が先決であり、医療を含む現場に混乱が生じないよう最大限の配慮を求める」とした。

 2.の「どこでもMY病院」については、診療情報や健康情報の取り扱いにおける、民間参入ありきの流れを牽制。情報の帰属や取り扱い、運営主体の在り方、セキュリティレベルや関連法令の検討が優先であり、医師会など地域医療を担う専門家を含めて議論し、制度設計すべきだとした。

 3.のシームレスな地域連携医療については、地域特性や患者の受診動向などに十分配慮した患者中心の地域連携医療の仕組みを構築すべきだとし、介護との連携については分断した議論にならないように要請。工程表に書かれている実現に向けたインセンティブについては、早期に明確化するとともに、財源が必要なものについては、政府が責任を持って確保すべきだとした。

 4.のレセプト情報等については、工程表における取り組み時期が、公開された情報の収集及び二次利用に向けた匿名化等の検討が終了する前に、情報の提供が開始されることになっている点を挙げ、環境整備が後手に回っていると指摘。国民的な議論の喚起と、国民や関係者への丁寧な説明を求めた。

 5.では、工程表に掲げられた「製薬企業等による利活用に関する調査」、「製薬企業等による患者数の把握等(研究開発への利活用)」については、製薬企業の販促活動等の企業の営利を目的とした活用が可能となることに懸念を示し、あくまで国で集める情報であるとの視点から、倫理指針の策定はもとより、公益以外に対する罰則等も併せて検討すべきだとした。

 最後に、同常任理事は「国民や医療関係者の議論を十分積み上げていないにもかかわらず、民間業者などの利活用の議論を先行させることは誤りである」と述べ、個人情報の保護等、セキュリティー関係には最大限の注意を払うべきことを強調した。

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