白クマ
日医白クマ通信 No.1589
2012年9月6日(木)


定例記者会見
「患者窓口負担についてのアンケート調査」結果報告
―石川常任理事

定例記者会見


 石川広己常任理事は、9月5日の定例記者会見で、日医が行った「患者窓口負担についてのアンケート調査」の結果について報告した。その中では、今後、窓口での支払いが増加した場合、これまで経済的な理由で受診を差し控えた経験のある患者の約8割が受診回数を減らすと回答している。

 本調査は、現状の患者一部負担についての負担感の実態を把握し、負担の見直しが受診行動に与える影響を検討するために試行的に実施したものである。日医会員のうち医療機関の開設者及び管理者を地域ブロックごとに診療所、病院それぞれ100分の1ずつ無作為抽出し、調査票を送付。7月10、11、13日のいずれかの1日を選択し、来院した外来患者に記入を依頼する形式で、診療所765件のうち336件、病院74件のうち31件の合計367件(回答率43.7%)から受診した患者8,278名分の回答を得た。

 負担割合別で見ると、窓口での支払を「とても負担」もしくは「やや負担」と回答したのは、1割負担患者で38.2%、2割負担患者で58.3%、3割負担患者で66.5%であり、今後、窓口での支払いが増えた時に受診回数を減らすと回答した患者の割合は、1割負担患者では33.0%だが、2割負担患者では52.7%、3割負担患者では50.8%に上った。

 一方、実際に過去1年間に経済的な理由により受診しなかったことがあると回答したのは、1割負担患者では6.6%だが、2割負担患者では10.2%、3割負担患者では11.5%と、負担割合に比例して多くなっている。その結果、症状が悪化したと回答したのは、1割負担患者で3.4%、2割負担患者で7.1%、3割負担患者で6.5%となり、受診差し控えをした患者の半数強が症状悪化を経験していた。また、症状悪化と回答したのは、2割負担と3割負担の患者では、1割負担患者の約2倍となっている。

 今後、窓口での支払いが増加した場合の受診回数について、「確実に減らしたい」もしくは「多少減らしたい」と回答したのは、受診を差し控えた経験のある患者では79.7%に達し、差し控え経験のない患者の40.5%を大きく上回った。

 今後の窓口負担の引き上げについては、81.3%が反対と回答(「反対」49.4%、「どちらかといえば反対」32.0%)、賛成は6.6%(「どちらかといえば賛成」4.9%、「賛成」1.7%)であった。

 同常任理事は、1割負担の患者と、2割及び3割負担の患者とには負担感や受診行動に明らかな違いが見られることを説明した上で、「受診差し控えを経験した患者は、経験していない患者に比べて、今後窓口での支払いが増えたときに受診回数を減らすという回答が多い。この背景には、所得格差等もあると推察されるが、今後、受診を差し控えない患者、差し控える患者の格差が拡大していくことが懸念される」と強調。凍結されている70歳から74歳までの患者一部負担の引き上げを引き続き据え置くことを求めるとともに、受診時定額負担や、実質的な患者負担増につながる混合診療の全面解禁など、患者一部負担割合の引き上げに関しては慎重に検討されるべきだとした。

 なお、詳細な報告書は9月下旬に日医総研のホームページで公開する予定である。

◆問い合わせ先:日本医師会医療保険課 TEL:03-3946-2121(代)
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