白クマ
日医白クマ通信 No.1677
2013年8月1日(木)


定例記者会見
「過度な規制緩和への懸念について」
―横倉会長

定例記者会見


 横倉会長は、7月31日の定例記者会見で、23日に、我が国がTPP交渉に正式に参加したことを受け、過度な規制緩和への懸念について述べた。

 同会長は、まず、26日に、日本郵政株式会社がアフラックと業務提携し、現在、1,000の郵便局で販売しているアフラックがん保険を、全国2万局で販売することを目指し、取扱局を拡大すること等を発表したことについて触れた。そして、そのこと自体、否定するものではないが、日本郵政は、政府が100%出資しており、TPPが発効した後、日本郵政ががん保険に参入すれば、TPP締結国(米国)から公正な競争が阻害されるとして、例えば、日本国内で事業展開するアメリカの保険会社の業績が向上しない場合、これを郵政のかんぽ生命には政府の支援があるためだとして、日本政府をISD条項で提訴出来ることから、両社は自社の利益を優先して、ISD条項の先取りをしたとも読み取れるとの見方を示した。

 また、「交渉の中で、世界的な製薬会社を抱える米国が、新薬の特許期間を延長するよう要求していることが現地の交渉関係筋の話で分かった」との一部報道に関しては、米国は、これまでも試行的導入段階にある新薬創出・適応外薬解消等促進加算の恒久化や、加算率の上限の廃止、市場拡大再算定の廃止あるいは改正、外国平均価格調整のルールの改定を強く求めてきていると指摘し、これらは、医薬品の高騰を招き、国民の医療費負担を増加させるため、日本医師会は従来より反対してきたと語った。

 更に、政府の資料によれば、「米国は、公的医療保険制度を廃止し、私的な医療保険制度に移行することを要求していることはないと明言している」と説明されているが、今後も外国の企業が、TPPの土俵そのものではなく、TPPを交渉の材料として、日本に市場開放や規制緩和を求め、民間医療保険の市場拡大と相まって公的医療保険の給付範囲の縮小の引き金となることを懸念しているとした。

 一方で、昨年ノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥所長と「iPS細胞の臨床への応用」や「日本における基礎研究者不足の問題」などについて意見交換を行ったことを紹介した上で、医学・医療の発展に伴う医療周辺における規制は、時代に即して見直すべきとの考えを示すとともに、国民医療に直接影響する医療本体への過度な規制緩和については慎重に考えるべきであり、公的医療保険による国民皆保険は、しっかり守っていかなくてはならないと主張した。

 同会長は、7月26日に開催された規制改革会議において、当面の最優先案件として、「保険診療と保険外診療の併用療養費制度」が挙げられていることについても言及し、保険外併用療養は、先進医療をはじめ、有効性、安全性が確認された医療を、すみやかに公的医療保険に収載することを前提としたもので、保険外併用療養が拡大しても、新しい治療や医薬品が公的医療保険に「すみやかに」組み入れられなければ、新しい医学・医療の恩恵を受けられるのは、ごく一部の裕福な国民に限られることになるとして、所得によって受けられる医療に格差が生じることがあってはならないと強調した。

 最後に、同会長は、政府におかれては、日本経済の再生の道筋を示すとともに、しっかりと日本の国益を守り、公的医療保険の給付範囲が縮小されることがないよう、全力を尽くしていただくことを強く望むと結んだ。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)


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