白クマ
日医白クマ通信 No.1702
2013年10月3日(木)


定例記者会見
「安倍総理の記者会見(10月1日)に対する日医の見解」
―横倉会長

定例記者会見


 横倉義武会長は、10月2日の定例記者会見で、1日夕方に安倍首相自らが、来年4月に消費税率を8%に引き上げ、その全額を社会保障の充実に充てることを、経済対策と合わせて発表したことについて、「周到な合意の手順を重ねて、わが国の将来を見据え、安倍首相があえて国民に負担を強いる厳しい決断をされたことに心から敬意を表する」と述べた。

 その上で、日医を始め医療関係の各団体は、これまで社会保障の充実に充てられることと、医療機関の消費税負担の問題が解決されることを前提として、消費税率の引き上げに賛成の意見を述べてきたと説明。今後は、その前提条件の一つである“控除対象外消費税問題”の抜本的解決が焦眉(しょうび)の急を告げる課題となってくるとした。

 同会長は、社会保険診療は患者に出来るだけ負担させないよう、消費税創設時から非課税とされており、それによって歯科、薬局を含む医療機関は、設備投資やさまざまな費用にかかる消費税が大きな負担になっている現状であると説明。この仕入れにかかる消費税負担の問題は、地域医療を支えている医療機関の経営に大きな影響を及ぼし、日医を始め医療関係団体の長年にわたる重要課題であるとして、抜本的な解決を強く求めた。

 その後、同会長は、日医の要望として、(1)消費税増収分の使途、(2)診療報酬上での扱い、(3)抜本的な対応―の3点を挙げ、具体的に説明した。

(1)消費税増収分の使途
 消費税増収分は社会保障の充実に充てることが法に定められ、「社会保障の充実」はその多くが、基礎年金の財源の不足分に充てられるとなっているが、現在、医療提供側は、重点化と効率化の努力を懸命に続けており、少子高齢化に向けた医療提供体制の改革に日医も引き続き協力していくと言明。地域の医療・介護・福祉資源の有効活用には、「かかりつけ医」が中心となり、切れ目のない医療・介護を提供して、国民の健康と安心を支えていくことが必要であり、「社会から支えられる側」であった高齢者が、「社会を支える側」になることが大切であると指摘。

 更に、地域のニーズに合った医療提供体制の構築が極めて重要であり、地域のニーズを丁寧に収集し、分析する必要があるとした。病床の区分については、「高度急性期病床」「急性期病床」「回復期病床」「慢性期病床」の4つに整理することを提言した、日医と四病院団体協議会の「医療提供体制に関する合同提言」に触れ、さまざまな病期に適時・適切に対応するためには、急性期、回復期、慢性期を担う医療機関が適切に役割分担と連携をすることが必要だとして、地域医療提供体制の充実に出来るだけ多くの財源を充てるよう望むとした。

(2)診療報酬上での扱い
 現在、中医協消費税分科会で検討中である、8%に引き上げる際の診療報酬の消費税対応については、医療機関に負担が生じないよう、通常の改定財源とは明確に区分し、適切な上乗せを行うよう求めた。

 その理由としては、保険診療の価格には、診療行為の価格である「診療報酬本体」と、モノである薬や医療材料の価格があるため、診療報酬改定においては、「本来の医療の評価」と「消費税引き上げへの対応」の2つの要素に配慮しなくてはならないとして、消費税率が上がる時には、何らかの制度上の手当てをしなければ、さまざまなモノを仕入れて診療を行っている医療機関は経営が成り立たなくなってしまうと説明した。

(3)抜本的な対応
 控除対象外消費税の問題を解決するには、診療報酬に上乗せするという考え方では無理があり、費用構造は医療機関ごとに異なる上に、設備投資など医療機関では年によってもバラツキがあるので、全国一律の公定価格である診療報酬では解決にならないと指摘。日医を始めとする医療関係団体は、一般の事業者と同様に、医療機関も、売り上げの時に預かった消費税から、仕入れの時に支払った消費税を差し引き出来る仕組みを要望しているとした。

 また、10%に引き上げ時の抜本的な税制上の解決については、自民党税制調査会で検討中だが、社会保険診療について、患者負担・保険者負担・国民負担のない、仕入れ税額控除が可能な制度の実現を望むとした。

 最後に同会長は、「消費税増税に当たっては、適切な対応を重ねて政府にお願いする」と述べた。

◆問い合わせ先:日本医師会年金・税制課 TEL:03-3946-2121(代)


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