白クマ
日医白クマ通信 No.366
2006年4月4日(火)


第114回日本医師会定例代議員会 ―個人質問要旨―


■個人質問1
「医師会活動強化のための5つの提言」
(加藤義博代議員・石川県)

 宝住与一副会長が回答。

宝住与一副会長

(1)医療政策活動を最重要視し、医師会活動の中心の柱とすること
 データベースに基づいた、医師会しか得られない資料・情報を活用して提言を行っていくことが重要であると考える。

(2)国政ならびに地方行政との連携をより緊密にすること
 行政とのより緊密な関係強化はもちろんのこと、武見・西島両議員と連携して、政府に有効な働きかけを行う。また、地方行政との連携も重要であり、各都道府県医師会間で連絡を密に情報を共有し、良いものをお互いに取り入れることも必要であると考える。

(3)会員に医療政策ビジョンを提示し、常に理論武装を怠らないこと
 日医総研を利用し、現在の医療状況を少しでも良い方向に提言するよう努める。

(4)情報の収集・分析にスピーディーに当たること
 会員・各医会・国民等、直接、日医執行部に提言できるシステムの創設を考えている。

(5)地方や弱小県にもより一層の配慮をすること
 日本の医療制度のなかで一番の利点である、いつでも、どこでも、安心してかかれる医療供給体制を確保するためには、地方、特にへき地へのより一層の配慮が必要であると考える。

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■個人質問2
「基本健康診査時の特定高齢者の候補者の選定について」
(新納憲司代議員・神奈川)

天本宏常任理事

 天本 宏常任理事が回答。

 特定高齢者の候補者の選定に関しては、厚生労働省が、平成17年度に研究班を設置し、その手法の開発を行った。そのなかで日医は、生活機能評価に関する項目に関して、実施体制等を勘案して、特に「基本チェックリスト」の項目については最小限に絞り、自己記入を基本に問診票として活用すること等を求め、厚労省もこれを踏まえて項目を設定したものである。

 基本健康診査の経費については、国は国庫負担に当たっての基準額を市町村に示している。

 基本健診の委託料に関して、統一的な料金設定が示されていなかったために各医師会は混乱したとの指摘については、国が示しているのはあくまでも基準単価であり、委託料は従前から市町村が決定している。なお、独占禁止法に抵触する恐れがあり、予防接種と同様に、統一料金を示すことはできないと認識している。

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■個人質問3
「療養病床の再編に伴う受け皿について」
(増田一雄代議員・北海道)

 天本 宏常任理事が回答。

 再編案は、計画性・一貫性のない、かつ論理性に欠けるものと捕らえており、われわれ医療人の基本理念と大きな隔たりがある案である。

 医療区分1に対する、大幅な診療報酬切り下げ案への問題提起を具体的・速やかに、新執行部としても継続して行っていかなければならないと考えている。

 介護療養型医療施設に関しては、健康保険法等の一部を改正する法律案が提出されるに際して、附則をつけるように関係方面に働きかけ、(1)施設入所者に対する医療提供のあり方を検討する、(2)介護保険施設の設備運営に関する基準に検討を加え、その結果により必要な措置を講ずる―の2つの項が盛り込まれた。

 今後は、入院患者さんをみた場合、介護サービスに係る費用は、その要介護度に応じて介護保険から、医療保険で医療の給付が行われるというような、サービス構図に応じた二階建ての報酬体系の必要性を検討する必要があると考える。各地区の介護保険担当理事等の意見を踏まえながら、具体的で実現可能なものを速やかに提案したいと思う。医療保険適用の療養病床の機能に関しても、その新たな任務を実践者から述べていくことが重要であると考えている。

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■個人質問4
「日本医師会の選挙について」
(大野尚文代議員・愛媛県)

岩砂和雄副会長

 岩砂和雄副会長が回答。

 キャビネット制には、種々の問題が含まれていることは事実ではあるが、会長・副会長、全国医師会、関係団体が、優秀な人材を集めてチームを構成し、効率的な活動を可能とする。会長・副会長選出後に常任理事を選出するということになれば、チームの全貌が選挙前に不透明なままで選挙が行われることになり、混乱を引き起こす可能性もある。

 任期に関しては、社会状況等を勘案すると、2年間が決して短いとは考えていない。

 いずれにしても、上記の両件については、今後、検討する必要性があると考える。

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■個人質問5
「日医は産婦人科医逮捕に対し迅速な行動を」
(三浦 修代議員・山口県)

木下勝之常任理事

 木下勝之常任理事が回答。

 福島県立大野病院医療事故に関する、日医の基本的なスタンス・見解は、代表質問で唐澤会長が答弁したとおりである。

 担当医師の身柄拘束に対する被疑事実は、業務上過失致死容疑と医師法21条による異状死の届出義務違反である。逃亡や証拠隠滅などの恐れがないと思われる当該医師が勾留されたことについては、弁護士、日本産婦人科学会・医会等が全面的な援助を行い、勾留は解除されている。また、本件が、業務上過失致死罪に当たるかどうかが問題となるが、今後、法廷の場で関係資料が明らかとなるので、それに基づき、科学的・医学的に適切な対応を行うという視点で、学会・医会も含めて全力を挙げて対応するように活動している。

 さらに、すべての医師に関わる問題として、医師法21条の取り扱いがある。これまで、学会ごとに見解が異なり、定義も不明確である。日医としては、ナチュラルな死であったのか、アンナチュラルな死であったのかという視点で、届出すべき事案と届出しないでよい事案等について、他学会とともに検討し、一つの指針を出したいと考えている。

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■個人質問6
「新型インフルエンザ対策について」
(松永剛典代議員・兵庫県)

飯沼雅朗常任理事

 飯沼雅朗常任理事が回答。

(1)サーベイランス
 中国のSARSの例では、初期にその発生を隠匿したために、SARSを世界に蔓延させたという事実がある。迅速で、正しい報告がきわめて重要である。わが国では、SARSのような急性の呼吸器疾患に対する対応は、まだ経験がないために難しいと考える。

(2)予防・封じ込め
 ベトナムのSARS対策が一つの参考となる。これは、一つの病院で患者さんを集中的に治療したものであるが、そのくらいの思い切った対策が必要であると考える。

(3)医療
 H5N1型のワクチンに関しては、その候補となるストレインもまだ決まっていない。アメリカでは、組織培養で増殖したウイルスでワクチンを製造する研究が行われていると聞いている。
 タミフル等の抗インフルエンザ薬の備蓄を怠ってはならない。それらの薬剤が、新型インフルエンザに効くのか、また耐性ウイルスがでるのか等、その迅速な治験・研究を期待している。

(4)関係機関の協力(国民との合意の形成等)
 行政・国民・地域医師会・日医との間で、適切な情報交換を行い対応していきたいと考えているので、協力をお願いする。

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■個人質問7
「日本医師会役員の選出方法について」
(陣内重三代議員・福岡県)

 岩砂和雄副会長が回答。

 直接選挙で行った場合の費用・時間等を勘案すると、非常に難しいのではないかと考えている。ディスカッションを行うことは重要であり、都道府県・郡市区・ブロック医師会と日医との連携をさらに密にすることが重要であると考える。

 唐澤会長・3副会長との雑談ではあるが、今後、会員から直接、苦情・意見・情報・緊急性を要するもの等を収集し、それをダイレクトに分析する場所を創設してはどうかとの話も出ている。会員間の意見を収集・分析することは重要だと思う。

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■個人質問8
「福島の産婦人科医師逮捕・起訴に関連する日医の取り組み等について」
(伊藤宣夫代議員・愛知県)

 木下勝之常任理事が回答。

 今回の事件に関しては、事故調査委員会の報告書(病院・医師間)が影響を及ぼしたと考えられる。本報告書は、弁護士を交えず、病院側とそれ以外の医師との間での報告書と聞いている。重要事案に関しては、少なくとも、弁護士・病院・医師とで基本的な対応策を決定したうえで行動することが必要であると考える。

 司法関係者によると、以前と異なり、今日では「医師と患者さんは診療契約の関係にあり、それに十分に対応できなければ、訴訟を起こされることもあると理解してほしい」との見解を示している。

 さまざまリスクに対して、拠点病院で集中的に対応する施設を創設してはどうか、という指摘に関しては、医師個人が医療行為をするときに、患者さんとの契約関係を理解して、インフォームド・コンセントなどを通じた患者さんの納得を得るというステップを踏まざるを得ないと考える。

 各省庁間のディスカッションの必要性については、具体的にどのような問題を現実的に討議することが適当なのか、厚労省等とディスカッションする前の段階で慎重に検討したいと考えている。

 無過失補償制度については、被害者救済と医療訴訟を減少させる目的のために、検討に値する課題である。しかし、この制度導入に際して最大の課題として、ファンドの問題がある。また、過失・無過失の認定を行う第三者機関での検討が必要である。方向性としては、大事な施策であるので、今後具体的に検討したうえで報告したい。

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■個人質問9
「領収証の交付と医療費通知について」
(大西雄太郎代議員・長野県)

 鈴木 満常任理事が回答。

 領収証の交付については、昭和56年、平成12年に努力義務通知が出されている。その後、平成17年12月の政府・与党医療協議会「医療制度改革大綱」に「保険医療機関等に医療費の内容のわかる領収書の発行を義務づける」と記載され、中医協で議論を行うこととなった。支払側は、明細書を求めていたが、内容の分かる領収証として各部単位と合計が分かるものとなった経緯がある。これについては、6カ月間の経過措置が設けられているので、その推移を注意深く見守る必要がある。

 一方、医療費通知に関しては、日医が昭和46年に保険医の総辞退を実施したことに対して、健保連が、医療費適正化策の一環として、医療費の個人通知を一方的に始めたのが発端である。このような経過を見ると、領収証と医療費通知が患者さんに二重で発行されているとして廃止を主張しても、解決できる問題とは多少ニュアンスが違うと考える。

 領収証の交付は、受診抑制にほかならず、医療費通知は、医療費適正化政策そのもので、国民医療の負の部分である。

 領収証、医療費通知に代わるような手立てを、エビデンスをもって提示できれば、このような問題は避けられると思うので、その方策を模索していこうと考えている。

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