白クマ
日医白クマ通信 No.565
2007年1月11日(木)


定例記者会見
「医療をめぐるメディア報道に対する日医の見解」

中川俊男常任理事


 中川俊男常任理事は、1月10日の定例記者会見で、一部の全国紙において報道された、1.診療報酬請求全面オンライン化の1年前倒し実施、2.厚生労働省による入院1回当たりの定額払い方式導入、また、日本テレビ系列の「報道特捜プロジェクト」で取り上げられた、3.診療報酬の不正請求問題―について日医の見解を述べた。

 1.については、オンライン化により医療費削減を達成したとする、韓国の例をまとめた総務省の報告書などを根拠に、政府がオンライン化の前倒し実施の検討に入るとの報道があったが、総務省の報告書には試算方法など種々の問題点があり、数字の根拠が明確でないと指摘。今後、さらに韓国の状況を調査したいと述べた。

 また、オンライン化については、昨年8月8日の定例記者会見( http://www.med.or.jp/teireikaiken/ )で示した見解のとおり、まずは、万全の基盤整備が必要であると指摘。日本の地域医療を支える小さな診療所にまで拙速にオンライン請求の義務化を求めることは、その負担等を考察すると、地域医療の崩壊をもたらしかねないとして、一律の導入にあらためて反対の意を表明した。

 2.については、まず、中医協で議論すらされていない問題が、あたかも決定事項のごとく報道されたことに遺憾の意を表明。DPCをDRG/PPSに切り替えていくかの報道がなされているが、DRG/PPSの安易な導入には断固反対するとの立場を示した。中川常任理事は、DPCは「1日」当たりの診療報酬を、DRG/PPSは「1入院」当たりの診療報酬を設定していると説明したうえで、DRG/PPSに関しては、平成10年に導入を前提とした試行が行われたが、平均在院日数の短縮効果などは認められず、本格導入には至らなかったことを指摘。効果が明確でないものを再度持ち出すのは問題が多いとした。また、今回の報道が事実ならば、それが意図するのは、医療費の必要以上の抑制であり、DRG/PPSの名を借りた入院医療の総枠管理であると述べるとともに、現在のDPCでも明らかなように、再入院の増加や外来での過剰診療など、医療にゆがみを生じさせることも危惧した。

 3.の番組では、(1)某クリニックが、自由診療部分の報酬を患者さんから受けたうえで、同じ患者さんに別病名を付して保険診療として架空請求していた問題と、(2)レセプトの審査委員から指摘を受けていたのにもかかわらず、それを放置していた社会保険事務局の問題を、審査委員会に問題があるかのようにすり替え、レセプト審査が身内の医師だけで行われており、全国各地の医療機関においても、恒常的に水増し請求が行われているかのような報道がなされた。

 これらの報道に対して中川常任理事は、(1)について、番組の内容が事実だとすれば、貴重な医療保険財源を浪費する許されない行為であり、当該医師には、厳正なる処分が行われるべきとの見解を示した。

 (2)については、レセプトの審査は、法律に基づいて構成された審査委員会(診療側・保険者・学識経験者の代表が同数で構成)において、厳正に審査されており、身内がかばいあうなどということはあり得ないと説明。また、他の医療機関の元職員に発言させ、全国各地の医療機関で水増し請求が恒常的に行われているかのような報道を行ったことに対しても、厳に慎んで欲しいと強調した。

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