白クマ
日医白クマ通信 No.685
2007年7月4日(水)


第7回医療政策会議
「小川直宏教授が少子高齢化の医療・年金へのインパクトについて講演」

第7回医療政策会議


 第7回医療政策会議(議長・田中滋慶大大学院教授)が6月27日、日本医師会館で開かれた。

 唐澤会長のあいさつに続いて、小川直宏教授(日大総合研究大学院・日大人口研究所所長)が「少子高齢化の医療・年金へのインパクトについて」と題して講演を行った。

 小川教授は人口高齢化のメカニズムについて、まず出生率の低下が起き、一定の時間が経過して寿命の伸びが起きるとし、2005〜2010年がその転換期に当たり、「これからは寿命がどこまで延びるかが最終的に高齢化を決定するメカニズムになる。」と強調。今後、「少子高齢化」は「長寿高齢化」に変わるとした。

 そのうえで、寿命の延びがもたらす社会保障制度への影響にも触れ、「日本政府の人口推計はリー・カーターモデルを使っているとされるが、この方法で長期的に将来を推計するためには、過去50年ぐらいの死亡率の変動から確率的範囲を導きだす必要がある。しかし、最近10年の死亡率トレンドで推計された国立社会保障・人口問題研究所の場合には、その精度には問題があるのではないか。そして、それが年金システムのベースになっていることに大きな問題がある。」と指摘。1963年に全国で153人しかいなかった100歳以上の高齢者は、2050年には200万人近くなるとの推計を示した。

 また、日本全体では高齢者に対する家族の支援が減少しているとし、「この20年間で日本の65歳以上の高齢者は、家族による経済的サポートが極端に低くなっており、その値はアメリカなどより低くなっている。つまり、日本の高齢者の生活は、年金などによる公的なシステムに頼る部分が欧米諸国と比較しても大きくなっている。」との見方を示した。

 一方、高齢者の資産に着目した見解も説明。年齢構造が変化する過程において、低出生率で生産年齢人口が豊富な状態になることで家計の貯蓄率が向上し、経済の復興がもたらされる経済的ゲインを"第1次人口ボーナス"といい、日本ではちょうど高度成長期に当たっていた。しかし、バブルの崩壊とともに、現在はボーナスが尽きた状態だが、第1次人口ボーナス期に医療制度など社会保障が充実し寿命が延びた結果、長期化した老後の生活のために資産を貯めようとする。このような状況では、社会的に資産が膨らむ"第2次人口ボーナス"が見込まれる。「日本の将来の人口とこのような状況を加味し、将来を推計してみると第2次ベビーブーム世代が老後を考え資産形成をすることによって、2030年ごろに日本経済にもう一度"福"をもたらす可能性がある。」として、高齢社会を乗り切るためには、第2次ベビーブーム世代の資産形成のための施策とその資産の活用がポイントであることを示した。

 この後、講演について質疑応答が行われたほか、中川俊男常任理事が先に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2007」に対する日医の見解「あるべき医療の確保に向けた緊急提言」について説明を行った。

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