白クマ
日医白クマ通信 No.765
2007年10月30日(火)


中央社会保険医療協議会
「後期高齢者医療の在宅医療等」の評価見直しを協議、「第16回医療経済実態調査結果速報」が公表される

中央社会保険医療協議会


 中医協診療報酬基本問題小委員会および調査実施小委員会が、10月26日、厚生労働省で開催された。

 基本小委の冒頭、竹嶋康弘委員(日医副会長)が、一部日刊紙朝刊において、当日の調査実施小委員会で報告される予定の「医療経済実態調査」の内容が24日に明らかになったという記事が、25日付「開業医の年収 勤務医の1.8倍―診療報酬下げ 政府が検討へ」、26日付「国公立病院の赤字倍増 平均5,800万円に 政府、支援策を検討へ」という見出しで、それぞれ掲載されたことについて、発言を求めた。

 竹嶋委員は、中医協審議の前に内容が報道関係者に漏えいしていることを問題視。「極めて遺憾な事態で、こうした事実は特に最近強く、厚労大臣の諮問機関である中医協の存在自体にも関わる重大な問題であると認識している」と述べ、(1)情報の管理を徹底すること、(2)「政府は開業医の初診・再診料などの引き下げを検討する予定」との記事内容の事実関係―について事務局に確認を求めた。

 中医協事務局は、(1)に対し、事前に関係者に説明はしているが、結果的に漏洩してしまった。十分に気をつけたいとした。(2)については、基本小委で審議するものであり、その事実は一切ないと明言した。

 土田武史委員長(早大教授)は、「重要な指摘であり、情報管理の徹底については、事務局はじめ関係者も十分に留意し、配慮して欲しい」と述べ、中医協の総意として、今後、情報管理について徹底していくことを確認した。

 当日は、平成20年度改定に向けて、「後期高齢者医療」の「在宅医療等」に関して、 (1)在宅における連携の強化と病院等による後方支援、(2)在宅療養における服薬支援、(3)居住系施設等における医療、(4)終末期医療―など6点を論議した。

 具体的な評価項目としては、(1)では、「カンファレンス等を通じて情報を集約し、必要な指導及び助言を行うこと」「病状の急変等で入院が必要となった場合に、あらかじめ決められた連携医療機関に円滑に入院できたこと」、(2)では、「服薬管理等の支援を一層推進するための、服薬カレンダーの活用や薬の一包化等の取組」「臨時の処方が行われ調剤する場合や、急な求めに応じて薬剤師が患家を訪問した場合」、(3)では、「往診等の機会費用の評価とは別に、居住系施設内で疾病の管理等の医療サービスが提供できる体制」、(4)では、「患者の希望を踏まえ、終末期の診療内容等について十分な話し合いを行い、患者との合意内容を書面等にまとめた場合」「在宅で看取りに向けた十分な支援ができるよう、終末期における訪問看護についての評価を一層充実すること」―などをそれぞれ導入してはどうかとの考えが示された。検討項目の審議に入る前に、全体の話として、竹嶋委員は75歳という年齢で提供される医療あるいは医療の評価が異なることのないよう留意すべきと述べ、さらに在宅医療の推進は患者の生活環境等を十分考慮して行うべきであり、入院、入所の受け皿整備を併行してやっていくべきと指摘した。

 また、鈴木満委員(日医常任理事)は在宅療養支援診療所とそれ以外の診療所で点数格差をつけるべきでないと述べ、竹嶋委員は、「在宅医療を推進する際には、実施された内容が同一ならば同じように評価すべきではないか」と述べた。

 また、他の委員からは、医療保険と介護保険との報酬体系がまたがる場合等の関係を分かりやすく整理して欲しい、医療と看護の棲み分けをきちんとして欲しいといった要望や、軽症者を軽く扱うことのないよう、コスト調査等も必要ではないかなどの意見が出された。

 各項目について議論され、在宅における連携強化、病院等における後方支援を診療報酬においても推し進める方策を検討することや、医師、歯科医師、薬剤師、看護師など専門職種間の連携の重要性、また各々が専門性に応じて在宅サービスを提供することの重要性が改めて確認された。

 また、施設入所者については実情に応じてきめの細やかな対応が必要ということも再認識された。

 さらに終末期医療については、患者の希望を踏まえて病態変化の見込みを共有し尊厳の保持をしてはどうかという提案があった。

 当日出された意見を踏まえて、論点整理が行われることになった。

 調査実施小委員会では、平成19年6月に実施された「第16回医療経済実態調査結果速報」について、医療機関等調査と保険者調査の報告が、中医協事務局からあった。

 医療機関等調査は、医業経営等の実態を明らかにし、社会保険診療報酬に関する基礎資料を整備する目的で実施されたもので、有効回答率(カッコ内は前回調査)は、病院が57.0%(61.2%)、一般診療所が45.5%(45.3%)、特定機能病院が86.4%(84.0%)などとなっている。

 竹嶋委員は、調査自体が定点調査でないこと(試行的に定点調査を実施しているが一般病院は70施設しかない)、特殊なケース(外れ値)が入っていること、個人と法人を合計することなど、調査の問題点を指摘し、「工夫して改善できないか」と述べた。鈴木委員は診療所には一定の利益幅がないと成立しないことを強調した。

 支払側委員からは、前回調査と病床数が大きく変わっており、100床当たりの数字に補正が必要ではないかという意見が、公益委員からは、開設者の給与部分の内容の吟味や、医業収入が減った分を医業費用でコストダウンしようという傾向も見られるので、逆にコストアップしている部分の精査が必要ではないかという意見などが出された。

 また、日本病院団体協議会から、「『病院経営の現況調査』報告について」の資料が提出され、赤字病院の増加や診療科の休止など、病院経営の深刻な状況が説明された。

 同調査結果は、小委員会の了承を得て、総会に報告されることになった。

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