白クマ
日医白クマ通信 No.780
2007年11月9日(金)


緊急記者会見
「いわゆる混合診療に関する東京地裁判決に対する日医の見解について」

左:鈴木満常任理事・右:中川俊男常任理事


 日医は、11月9日、中医協終了後、鈴木満・中川俊男両常任理事の出席の下、厚生労働省内で記者会見を行い、11月7日に東京地裁から出された、いわゆる混合診療に係る判決に対する日医の見解を発表した。

 中川常任理事は、「今回の裁判は、保険給付であるインターフェロン療法と、保険外である活性化自己リンパ球移入療法を併用した原告が、インターフェロン療法について、療養の給付を受ける権利を有することの確認を求めたものであった。民事訴訟では、特定の給付を命ずる判決を求める訴えである給付訴訟が一般的だが、本件は“確認訴訟”である点でまれなケース」とことわったうえで、今回の裁判については、混合診療の解禁を容認したものではなく、あくまでも法解釈をめぐるもので、判決が示すように、法解釈の問題と差額徴収制度による弊害への対応や、混合診療全体のあり方等を問うものとは、次元の異なる問題であることは言うまでもないと指摘した。

 また、同常任理事は、今回の判決は、歯科における平成元年2月の東京地裁の不当利得返還請求事件における判決で、治療行為のすべてが給付の対象外になることに反するものだが、国の混合診療の法的な根拠があいまいな点については、日医としても問題があると認識を明示。国(厚生労働省)に対しては、混合診療の禁止する根拠として、現在“保険医療機関及び保険医療療養担当規則”を挙げているが、まずは、国民に対して分かりやすく“混合診療の定義”を示したうえで、立法的手当てを行うよう求めた。

 さらに、同常任理事は、混合診療の解禁について、医療給付上の格差を拡大するものであり、日医は一貫して反対していると強調。そのうえで、日医の基本的見解として、「(一)保険外診療は、事前に有効性・安全性が認められていないため、これを保険と併用することは、問題が発生した場合、患者に不利益をもたらすだけでなく、公的保険の信頼性も損なう。(二)混合診療が解禁され、新たな医療技術は自己負担、という流れができると、新たな技術が保険適用されるインセンティブが働きにくくなり、公的保険給付の範囲が縮小される危険性がある。(三)混合診療が解禁された場合の負担は、保険診療の一部負担+保険外診療の自己負担となる。しかし、すべての国民に保険外診療の自己負担が可能ではなく、保険給付範囲が狭まるようなことになり、保険外のものが出てくれば、所得の低い国民にとっては大きな負担となる」との考えを改めて説明した。なお、今回の裁判で問題となった活性化自己リンパ球移入療法は、現在、臨床現場で積極的に採用されておらず、このような有効性・安全性が必ずしも確認されていない治療法に門戸が開かれると、かえって、国民・患者の健康が阻害される恐れがあると、その問題点への注意を促した。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)

◇定例記者会見資料はこちらから
 ⇒ http://www.med.or.jp/teireikaiken/


  日本医師会ホームページ
http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association.
All rights reserved.