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2010年の活動

1.第185回世界医師会(WMA)中間理事会

(1)概要

 第185回世界医師会中間理事会が2010年5月20日から22日にかけてフランスのエヴィアンで開催され、26医師会より約90名、赤十字国際委員会(ICRC)、国際医学生連盟等のオブザーバーが参加した。本会からは、原中勝征会長、横倉義武副会長、石井正三常任理事ならびに畔柳達雄参与が出席した。

 今回の理事会は、2009年から2011年を任期とする理事の4度目の会合であった。WMA理事は23名で、5月20日の理事会で、原中会長と横倉副会長を含むWMAの新理事就任が承認された。

 また、原中会長が社会医学委員会と医の倫理委員会の委員に、横倉副会長が社会医学委員会と財務企画委員会の委員にそれぞれ就任した。石井常任理事は第182回会合で副議長に選任されており、本会議においても引き続き副議長を務めた。

 会期中に以下の医師会と個別に懇談の場をもち、医療制度などについて意見交換を行った。

1) アメリカ医師会Hill 元会長/WMA 議長、Nielsen 前会長、Patchin 議長、Wilson 次期会長、Menes 国際部長
2) 韓国医師会Shin 国際担当役員、Kang 国際担当
3) イスラエル医師会Eidelman 会長、Blachar 前会長、Wapner 事務局長、Glekin 国際担当
4) ドイツ医師会Hoppe 会長、Parsa-Parsi 国際部長、Podnar およびJkel 国際担当、Hllmayr WMA 財務担当弁護士、Seebhom WMA 法律顧問


(2)審議内容と決議内容

 1)理事会次第

5月20日(木)理事会全体会議、医の倫理委員会、社会医学委員会
5月21日(金)社会医学委員会、財務企画委員会
5月22日(土)理事会全体会議

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 2)事前打合会等

5月18日にへき地医療に関するWMA セミナー、19日にWMA 幹部事前打合せ会と処方権に関する作業部会が開催され、石井常任理事(WMA 副議長)が出席した。

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 3)新役員

5月20日の理事会で、原中会長と横倉副会長を含むWMA の新理事就任が承認された。また、原中会長が社会医学委員会と医の倫理委員会の委員に、横倉副会長が社会医学委員会と財務企画委員会の委員にそれぞれ就任した。

空席となっていた医の倫理委員会委員長に、ノルウェー医師会のTorunn Janbu 氏が選出された。

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 4)医の倫理関係

作業部会で検討する文書
 「医学研究におけるプラセボ使用」
  *2010 年サンパウロにおける専門家会議の報告が行われ、ブラジル、ドイツ、米国、日本、ウルグアイによる作業部会で討議を継続することとなった。討議内容には、ヘルシンキ宣言全体の将来的な修正を見据えた同32条の文言修正や、2011年にも専門家会議を開催することなどが含まれる。
 「東京宣言―拘留および監禁に関連した拷問およびその他の残酷、非人道的または品位を落とす扱いまたは処罰に関する医師のための指針」
  *デンマークとイギリスで改定作業を行う。
 「終末期医療に関するWMA 宣言案」
  *新規文書
 
その他
 WMA 事務局より、世界各地で人権侵害されている医師への支援と中国における臓器移植問題などについて報告された。

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 5)社会医学関係

各国医師会にコメントを求めるため回付する文書
 「医薬品の処方権について」
  *改訂案は日本と韓国医師会が作成し、処方権が医師のみにあることを明記したもの。
 「難民および国内避難民に対する医療に関するWMA 決議改訂案」
 
総会へ付託する文書
 「環境悪化と化学物質の健全な管理に関するWMA 声明案」
 「薬物療法における医師と薬剤師の関係に関するWMA 声明案」
  *処方権が医師にあることを明記したうえで総会に付託された。
 「家庭内暴力に関するWMA 声明案」
 「女性と女児への暴力に関するWMA 決議案」
 
その他
 「健康と環境」
  *作業部会より口頭報告が行われた。草案は来年の中間理事会に提出予定。
 「被災地における医療支援」
  *ハイチなど災害を受けた国への支援について、日本を含む7 か国の医師会から具体的事例が紹介された。
 「WHPA(世界医療専門職連合)不正医薬品防止キャンペーン」
  *WMA 事務局より報告が行われ、今後WMA としての文書を作成して検討を進めることとなった。
 「アルコール乱用防止のためのWHO 世界戦略」
  *WHO のMr.Rekve が世界のアルコール乱用の実態について報告した。WMA の今後の検討課題にされることとなった。

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 6)財務企画関係

WMA 戦略的プラン
 WMA の今後の倫理問題への取り組みや、加盟国へのサービス提供などについてWMA 事務総長より報告が行われた。
 
事業開発
 WMA のウェブサイトの活用について、生涯教育教材提供の可能性に関する検討の報告を受けた。内容は後日各国医師会へ回覧される。
 
今後予定されている会議
 2010年 9月10-11日/リガ(ラトビア)/経済危機と医療に関する会議
 2010年10月13-16日/バンクーバー(カナダ)/総会
 2011年 4月 7- 9日/シドニー(オーストラリア)/第188回中間理事会
 
モザンビーク医師会の加盟申請
 モザンビーク医師会の加盟申請が総会へ付託されることとなった。
 
「準会員会議に関する作業部会改革案」承認
 作業部会長として石井常任理事がまとめた「準会員会議に関する作業部会改革案」が承認された。
 
WMA 運営規則の見直し案
 時代に即したWMA 運営規則の見直し案が各国に回覧されることとなった。

2.2010年世界医師会(WMA)バンクーバー総会

(1)概要

 平成22年10月13日から16日まで世界医師会(WMA)総会がカナダのバンクーバーで開催され、本会から、原中会長、横倉副会長、石井常任理事、畔柳参与が参加した。今回の総会の参加医師会数は52で、その他に赤十字国際委員会、国際女医会等の9団体が参加した。総会全体の出席者数は309名、このうち日本からの参加者数は28名であった。

 総会の前日の12日にはWMA執行部の事前会議が開催され、石井WMA副議長が出席した。13日は理事会、医の倫理、財務、社会医学各委員会、14日は準会員会議と学術集会、15日は理事会本会議、総会式典が行われた。昨年次期会長に選出されていたケタン・デサイ氏(インド医師会)が海外活動不能との事情により会長に就任することができなくなったため、総会式典において臨時の会長選挙が行われ、ウォンチャット・サブハチャトラス氏(タイ医師会)が選出されて2010-11年の新会長に就任した。

 16日は総会全体会議が開催され、総括的な議論と採択が行われたほか、次期会長選挙(2011〜12年の会長)にはホセ・ルイス・ゴメス・ド・アマラール氏(ブラジル医師会)が立候補し、無投票で選出された。

 また会期中には、CMAAO(アジア大洋州医師会連合)加盟医師会と意見交換の場を持ち、同地域の声をWMAに反映させるためにCMAAOにおける情報交換をさらに活発に行うことが確認された。


(2)総会での主な決議事項

 (1)医の倫理関係

  1)採択・修正文書はなし

  2)医学研究におけるプラセボの使用について

  • 作業部会(議長国ドイツ)は2011年の夏に東京で専門家を招いて本件に関する会議を行う予定。本会も作業部会のメンバーとなっている。

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 (2)社会医学関係

  1)新たに採択されたWMA文書

  • 環境悪化と化学物質の健全管理に関する声明
  • 婦女子に対する暴力に関する決議
  • 処方権に関する決議

  2)修正案が採択された既存文書

  • 薬物療法における医師と薬剤師の関係に関する声明
  • 家庭内暴力に関する声明
  • 難民(亡命希望者、亡命希望却下者、不法滞在移民、国内避難民を含む)に対する医療に関する決議

  3)その他

  • ラドヴァン・カラジッチ医師に関する決議が廃棄、アーカイブ化された。

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 (3)財務企画関係

  1)WMA 施行細則の整理・統合について、カテゴリー1と2に関する変更が承認・採択、カテゴリー3の変更が承認された。

  2)今後の総会開催予定地

  • 2011年10月12-15日:モンテビデオ(ウルグアイ) 学術集会テーマ「禁煙」
  • 2012年10月10-13日:タイ

  3)今後の中間理事会開催地について

  • 2011年:シドニー(オーストラリア)
  • 2012年:ディボンヌ・レ・バン(フランス)
  • 2013年:プラハ(チェコ)

  4)新規加盟の承認

  • モザンビーク医師会とセルビア医師会の加盟を承認した(加盟医師会数は97となった)。


(3)学術集会

学術集会は14日、「健康と環境」をテーマに開催され、計11名の演者による講演と活発な議論が行われた。


(4)準会員会議

  1)各国へ回付のうえ理事会で審議される文書

  • ソーシャルメディアの専門的倫理的利用に関する声明案
  • 子どもを対象とした医学研究の倫理原則に関する声明案

  2)理事会と委員会へ付託される文書

  • バイオバンクにおける医師の倫理的責任に関する決議案

  3) その他

  • 準会員会議の活性化に関する報告が事務総長からなされた。
  • 若手医師および医学生の参加について議論された。


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